Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

早稲“田”に“田”んぼを復活させた農楽塾 大隈庭園での農的生活

2018年度 創立記念特集 大隈庭園探訪【後編】

早稲田大学創立者、大隈重信の邸宅跡地である大隈庭園内に田んぼ「わせでん」があるのをご存じですか? 早稲田大学の前身である東京専門学校が設立された当時、キャンパスが田んぼで囲まれていたことは、写真からも見て取れます。また、「早稲田」という地名の由来の一つに「神田川が入り組んだ地形の影響で水稲の田んぼが多くあり、凶作に備えて普通の田植えより、早い時期に植える田があったため」という説があります。さらに、園芸を好んだ大隈重信は大隈庭園内に菜園や温室を設けて、いろいろな植物を栽培していました。また、第2次世界大戦末期には、食糧難のためにサツマイモが植え付けられたこともあったそうです。

時代の移り変わりとともに、周辺の田んぼはなくなってしまいましたが、早稲田大学は田んぼや植物と縁の深い関係にありました。そこで、現在 「わせでん」を管理している公認サークル「学生NPO農楽塾(のうがくじゅく)」の幹事長に、大隈庭園やわせでんについて話を聞きました。

1890(明治23)年頃、早稲田大学の前身である東京専門学校と周辺に広がる田んぼ(早稲田大学大学史資料センター所蔵)

都心で「農」を身近に。大隈庭園には入り浸っています

公認サークル「学生NPO農楽塾」
幹事長 教育学部 3年 周 校石(しゅう・こうせき)
――まずはサークルの設立経緯や活動内容を教えてください。

15年前の2003年、全学オープン科目の「農山村体験実習」という授業で、山形県高畠町の「屋代村塾」などを訪れ、農家体験を通して環境や文化、生き方などにインスピレーションを受けた学生有志が集まって「学生NPO農楽塾」が結成されました。その後、2003年12月に大隈庭園に開田したいという申請書を大学へ提出し、それが認められて翌年「わせでん」が誕生しました。この活動が成功するか分からないという理由から懸念する声もあったようですが、当時、団体設立に深く関わった中島峰広先生(早稲田大学名誉教授)と堀口健治先生(早稲田大学名誉教授)の熱意やWAVOC(平山郁夫記念ボランティアセンター)などのサポートもあって実現できたようです。

活動理念として「都心の人に『農的生活』を提供する」を掲げています。都心で「農」を実践し、普段、農業を経験できない人に、土に触れ、汗を流す楽しさを知ってもらい、「農」について少しでも考えてもらえたらと活動しています。

活動の中心はわせでんを管理することですが、その他に、早稲田キャンパス南門前の「バケツ稲プロジェクト」(※)や、江戸時代に新宿周辺で作られていたという「内藤とうがらし」の栽培、所沢市の農家での農作業体験など、さまざまな活動をしています。合宿で山形などの地方の農家を訪れることもあります。

(※)わせでんを知ってもらうために、南門前にバケツで稲を栽培している。バケツごとに肥料の量を変えるなど、生育比較実験を行うことも。

――田んぼの設置場所として大隈庭園を選んだ理由は何ですか?

この活動は「なぜ早稲“田”なのに“田”んぼがないのか?」という素朴な疑問から始まっています。昔は早稲田大学周辺に田んぼが広がっていたことを知り、「早稲田に田んぼを復活させよう」という思いがあったと聞いています。また、大隈庭園は早大生や都心に住む人にとっても身近にある場所というのも大きいです。特に早大生にとって「農」やその文化について自分たちの身近に存在することを発信できる場所だと考えたようです。

わせでんは大隈庭園の地蔵山の手前、少し奥まったところにあります。当初はハート型だったのがこの15年程で少し広くなり、今は直径が5メートルほどのドーナツ型をしています。

春、田植え前のわせでん

――「わせでん」での活動の詳細を教えてください。

サークル員でシフトを組み、日曜日以外は毎日世話をしています。その日の状態を観察してデータ化し、みんなで情報共有しています。

稲の防虫対策として、農薬の代わりにとうがらしと酢を混ぜたものを散布しています。他にはザリガニ用のトラップをかけたり、スズメ対策のネットを張ったり工夫しています。それでも、今年は酷暑だった影響もあり、収穫量は少なくなりそうですね。また、田んぼの脇に菜園とプランターもあるので、この夏は鑑賞用のヒマワリやトウモロコシ、キュウリ、ハーブなどを育てました。現在はカボチャを育てています。土壌や気候の影響などでどうしてもうまく育たずに失敗してしまうこともあるので、もっと勉強しないといけないなと思います。

(左から)ザリガニ用のトラップ、スズメ対策のネット、菜園の水やりの様子

――「わせでん」を通じてさまざまな交流があると伺いました。

「農を楽しみ農を考える」という思いがあるので、ワークショップや地元の方を呼んだ交流活動に重点を置いています。田植えや稲刈りなど、米作りをする過程でイベントを開催し、地域の幼稚園やステップ学級(※)の人たちを呼んで、一緒に作業をしたりします。ワークショップでは、サークル員以外の学生や地元の方と稲刈りをすることもあります。また、生き物がたくさんがいるので、生き物観察会なども行っています。秋には収穫した米や野菜を使って料理をします。自分たちで作ったものをみんなで一緒に食べると格別です。

(※)長期間学校を欠席している児童・生徒に対する生活指導・相談を行う適応指導教室

(左から)生き物観察会、早稲田幼稚園を招いてのザリガニ釣り

また、農薬基準の問題や地方における高齢化など、普段都心に住んでいるとなかなか気付かないような問題を、当事者である農家の方たちから聞く機会もあるので、食の安全や高齢化について考えるようになりました。

――大隈庭園の印象を教えてください。また、大隈重信もかつてこの庭園で花やメロンなどいろいろな植物を栽培していたそうです。そのことは知っていましたか?

自分たちは大隈庭園にかなり入り浸っていると思いますが(笑)、日々の植物の変わりように感動しています。本当にたくさんの種類の植物が生えていて、四季折々…それ以上に変化に富んでいて、毎日いても飽きない庭園だと思います。例えば、5月頃にはツツジや藤の花、シャクナゲなどが咲き、すごくきれいなので個人的にとても好きなんです。一つ一つの建造物についても気になっていましたが、全体的に和洋折衷なイメージがありますね。庭園の様式については詳しくないですが、開けた庭園という印象があって、ここに来ると開放的な気分になります。

昔、温室や菜園があったことは全然知りませんでした。実は、この歴史ある庭園の一角に田んぼを作っていいのかという気持ちがなかったわけではないので、その話を聞いて少し安心しました。

わせでんは大隈庭園の奥に位置する(写真では白いネットが見える場所)

――これから「わせでん」をどのようにしていきたいですか?

田植えの様子

一番の問題は知名度の低さだと思っています。存在を知ってもらわないとどうしようもないので、認知度を上げてもっと周辺の人を巻き込みたいですね。早稲田文化芸術週間では10月15日(月)に「No Rice 農(No)Life!」と題して農業や農楽塾に縁のある先生や、サークルの初代代表の方を招いての座談会を予定しています。また、今年の早稲田祭では脱穀・籾摺(もみす)り体験のワークショップを開く予定です。

活動を続ける中で「15年間ずっと見てきたよ」と声を掛けてくださる方がいて、地域の方と歩んできたと感じることがある一方で、時間がたつと忘れ去られてしまうのか、開田当初よりも認知度が低下してきているのではないかという懸念もあるので、これからも頑張って活動していきたいです。わせでんは大隈庭園の少し奥まったところにあるので、あまり目立たないですし、通り過ぎてしまう方が多いかもしれませんが、ぜひ足を運んでもらいたいですね。

今年は神奈川県平塚市生まれの品種「はるみ」を栽培。過去5年間の平均収穫量は約4.7キロ

大隈庭園

開園日:授業実施日(天候不順日は閉園します)
開園時間:4月~9月 9:00~17:00、10月~3月 9:00~16:30
(※入学式・入試実施日・卒業式の他、大学で特に認めた場合は開園します)

2018年度 創立記念特集 大隈庭園探訪【前編】「なぜここにある!? 大隈庭園の銅像・建造物」

【次回特集予告】10月22日(月)公開「性暴力特集」

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