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特集

ビブリオバトル全国優勝者がオススメする詩集「この一冊」

近年、注目が高まりつつある書評合戦「ビブリオバトル」をご存じですか。1冊の本について、いかに聴衆が読みたくなるプレゼンテーションができるかを競う競技です。中村朱里さんは高校生のときに全国大会で優勝してから、さまざまなビブリオバトルに参加しています。早稲田大学図書館のボランティアスタッフとしても活動中の中村さんに、お勧めの詩集をプレゼンしてもらいました。

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教育学部 1年 中村 朱里(なかむら・あかり)

『202人の子どもたち―こどもの詩2004‐2009』長田弘 選(中央公論新社)

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『202人の子どもたち―こどもの詩2004‐2009』長田弘・選(中央公論新社)

私がまず紹介したいのは、読売新聞の「子どもの詩」コーナーで掲載されたものから精選された208編の詩が収録されたこの一冊です。子どもたちが書いた詩それぞれに、詩人の長田弘さんによるコメントが入っているのですが、私はそのコメントが特に好きです。長田さんと詩を書いた子どもが紙面で会話しているようで、どんなとっぴな表現であっても同じ目線になって答えてくれる長田さんの優しさに心を打たれます。

また、子どもたちの感じ方、表現の仕方が、とても新鮮で魅力的です。「おひさま」という詩では、「げんかんをあけたら/おひさまがおくちに/はいってきたよ/すっぱくて/おいしいよ」。「耳鼻科の帰り」では「おはな すっきりしたぁ/おかあさん/かぜのおいがする」。言葉をまだあまり知らない子どもたちが、知らないものに出会ったり、感じたことを知っている言葉の中で表現しようとすると、それが詩になるのだという発見、そして活字になることで子どもたちが感じた喜びが読者にも広がっていく。それがこの詩集を好きな理由です。

『やなせたかし全詩集』やなせたかし著(北溟社)

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『やなせたかし全詩集』やなせたかし著(北溟社)

次に紹介するのは、『アンパンマン』の作者として知られるやなせたかしさんの詩集です。表紙に「てのひらを太陽に」、裏表紙に「まっかに流れる ぼくの血潮」と、あの有名な歌詞の一部が大きく書いてあり、オレンジと黒の表紙が目に付いたので手に取りました。これはやなせさんご自身が手掛けられたそうで、歌そのもののように元気が出るような装丁です。内容は数章に分かれているのですが、私が特に好きなのは、やなせさんが弟について記した「おとうとものがたり」の章です。

やなせさんと弟さんは幼いころに両親と別れた後、伯父さんに引き取られて生活するのですが、家族として同じように育てられているように見えても、伯父さんの養子になった弟と自分の間には待遇が違っている。そういう私的な事実も淡々とつづられています。一方で、複雑な事情とは無関係に仲の良かった弟に対する愛情も描かれています。「アンパンマンをかきはじめたとき/なにか不思議ななつかしさをおぼえた/どこかぼくの弟に似ている」と書かれている詩もあります。多くの人にとって、アンパンマンは一番の正義の味方。みんなのヒーローを生み出したやなせさんが、どんな人を愛してどんなことを考えていたのか、アンパンマンはどのように生まれたかという背景を、詩を通して知ることができます。

『あたしとあなた』谷川俊太郎著(ナナロク社)

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『あたしとあなた』谷川俊太郎著(ナナロク社)

最後に、装丁がすてきな一冊を紹介します。この詩集は、美しい箔(はく)押しの表紙と、特注で作られた鮮やかな青い紙が特徴的です。著者の谷川俊太郎さんいわく「中身の詩を飾るのではなく、詩を素手で差し出す器としての本」、この詩集は、この装丁でなければいけなかったのだという必然性を感じさせます。

あらゆる関係性の基本である「あたし」と「あなた」は、誰にでも何にでも当てはまる普遍的なものですが、この本を初めて手に取った高校生のときと今では、読み方が全然違うのです。「あなた」は誰で、どんな情景を思い浮かべたのか――。今読むと、高校生のときの過去の「あたし」を「あなた」として見つめることができる。何度も読むことで、自分の知らない「あなた」をその都度発見できるのです。宝物みたいに、自分だけの秘密にしておいて繰り返し味わいたい本です。

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【プロフィール】

静岡県出身。日本大学三島高等学校卒業。高校2年次、「全国高等学校ビブリオバトル2014決勝大会」(活字文化推進会議主催、読売新聞社主管)にて優勝。大学に入学してからも、さまざまなビブリオバトルに参加している。小さいころから読書が好きで、「本が好きな人にスポットライトを当てる機会を」というコンセプトに共感して、ビブリオバトルに参加するように。早稲田大学図書館ボランティアスタッフ LIVSの一員として、学生の図書館利用をサポートする活動を行っている。

◆関連リンク

>>詩人・文月悠光さんに聞く 詩の読み方、楽しみ方

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