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スポーツで長期療養児と向き合う早大生「支えるつもりが、支えられている」

「他者や社会に対して⾻惜しみなく尽くせる⼈でありたい」

スポーツ科学部 3年 菊地 理沙子(きくち・りさこ)

東伏見キャンパスのホッケー場にて

早稲田大学ホッケー部女子部に所属しながら、 長期療養児にスポーツの機会を届ける活動に取り組む菊地理沙子さん。「スポーツを通して自分にできることはないか」。そんな思いを持つ菊地さんは、2026年7月に、病気の子どもたちとスポーツをつなぐNPO法⼈Being ALIVE Japanの TEAMMATES事業の一環として、長期療養中の小学生の女子ホッケー部入部という早大初の試みを実現しました。そんな菊地さんに、これまでの活動やアスリートが長期療養児の支援をする意義について聞きました。

―― Being ALIVE Japan(以下、BAJ)のリーダーシッププログラムに参加したきっかけと、活動内容について教えてください。

祖⺟が20年以上にわたり、長期療養を必要とする子どもと家族向けの宿泊施設を運営しており、⺟も国立成育医療研究センターでボランティアをしていました。そのため幼い頃から、長期療養を必要とする子どもたちの存在はすごく⾝近でした。大学1年生の頃、スポーツ科学部での学びを通して「スポーツをする権利は誰しもが持つもの」と意識し始めた直後に、BAJのリーダーシッププログラムの案内が目に留まりました。⾝近な存在だった長期療養児と、自分が好きなスポーツを結び付けられる活動だと思い、参加を決めたんです。

このプログラムで特に印象に残っているのが、アメリカ・ボストンで行われたサミットへの参加です。アメリカでは多くの先行事例があり、参加者同士で意見交換する中で、自分たちの活動をさらに発展させていくヒントを得ることができました。全米中の学生とそれぞれの活動について学び合ったり、所属しているホッケー部を巻き込んで長期療養児向けのイベントを企画したりして、⻑期療養児にスポーツの機会を提供するために奔走しました。帰国後に⾃分がアクションを起こす際にも、サミットでの経験が大きな支えとなっています。

2025年、米国非営利団体「Team IMPACT」主催のリーダーシップサミットでの様子。日本からは4名の学生が参加し、米国の学生と交流した

――長期療養児と接する際に心掛けていることは何ですか? また、子どもたちから学んだことはありますか?

まずは安全を最優先にすることを心掛けています。⽇常を通して医療的なケアや配慮が必要な場合も多いため、イベント実施の際は何事もなく終えられることを念頭に置いています。

またもう一つ大切にしているのが、子どもたちとは対等な関係を築くこと。「何かをしてあげる」「何かさせてあげる」ではなく、仲間として同じ時間を共有し楽しむことが大切なんです。スポーツをしている間だけでも、病気のことを忘れて楽しんでもらいたい。そのためにも、「何ができないか」よりも「⼀⼈一人ができること」に⽬を向けて、⼀緒に楽しむようにしています 。例えば、それぞれの症状に合わせた動きをサポートする工夫として、ホッケーのシュート練習では、座ったまま打てるよう身体を支えたり、片手でも打てるようにボールをコントロールしたりしています。

2025早稲田スポーツフェスタin東伏見では、子どもの関心と体調に合わせた個別ツアープログラムを実施。一緒に応援部のダンスを楽しんだり、フェンシングに挑戦している姿を応援したりしたそう

長期療養中の子どもたちから学んだのは、健康で何不⾃由なく好きなスポーツに多くの時間を費やせることは、決して当たり前ではないということです。⾃分が今置かれている環境に対して、感謝の気持ちを持つようになりました。

また私自身、試合中の苦しい局面や疲労が溜まっている時は特に、病気と闘う⼦どもたちの存在がいつも心にいて、私たちアスリートを後押ししてくれます。スポーツを通した⻑期療養児の⽀援活動をアスリートがやる意義はここにあるのだと思います。

2025年の関東学生春季リーグでプレーしている様子(写真左)。ポジションはMFだが、DFからFWまでこなすオールラウンダー

――TEAMMATES事業について教えてください。

TEAMMATES事業はBAJが展開する事業の⼀つで、長期療養中の子どもが一定期間スポーツチームに選⼿として⼊部し、練習や試合などチームの活動に参加する事業です。定期的にチーム活動に参加し、選⼿やチーム関係者と交流することで、⻑期療養が必要な⼦どもの⾃⽴を促し、つらい治療⽣活に寄り添う仲間を作ることを⽬的としています。

今回早稲田大学ホッケー部女子部では、急性リンパ性白血病(小児がん)で長期療養中の小学生、星るるさんをチームメンバーに迎えました。

写真左:星さん(前列中央)を迎える入部式での一枚
写真右:練習後の食事も共にするなどチームの一員として活動している。写真左端が菊地さん

早稲田大学では前例のない取り組みだったため、ホッケー部のメンバーなど周囲の人たちに事業の具体的なイメージを持ってもらうことに苦労しました。皆がイメージしやすいよう、先行例の写真などを活用して事業内容を伝えることを大切にしました。その結果、みんな前向きに取り組んでくれました。

――大学ではどんなことを学んでいますか?

スポーツには人を動かす力があると思っており、スポーツを通して社会問題を解決する方法を学びたかったので、スポーツ科学部に進学しました。現在は松岡宏高先生のゼミに所属し、スポーツビジネスやマーケティングを学んでいます。印象的だったのは、ゼミに⼊ってすぐの頃に松岡先生が「現代は、スポーツに関わる⼈がそのスポーツのことだけを考えていてよい時代ではない」とおっしゃっていたこと。この言葉に深く共感しました。

早稲田では、多様な学生と出会えたことが一番良かったです。さまざまな価値観や考え⽅を持つ仲間と⼀緒に試⾏錯誤しながら、競技に打ち込むことができている上、TEAMMATES事業にも参加することができ、本当に充実した⼤学⽣活を送れています。

課題図書についてゼミで輪読をし、話し合っている様子

――今後の目標を教えてください。 

まだ悩んでいる段階ですが、スポーツを通して、気候変動やエシカル消費(※)といった環境問題の解決に貢献できる⼈になりたいと考えています。スポーツを愛する⼀⼈として、学んできたスポーツの⼒を信じて、関心のある環境問題に対してアプローチしていきたいです。

BAJの活動を通して感じたことですが、本当に何不⾃由なく恵まれた環境で私は育ってきました。だからこそ、これからは他者や社会に対して⾻惜しみなく尽くせる⼈でありたいですし、そういう仕事がしたいと今は考えています 。

※ 人や環境などに配慮した持続可能な消費行動

インタビューに答える菊地さん

第935回

取材・文:早稲田ウィークリーレポーター
創造理工学部 2年 淺羽 真帆

【プロフィール】

秩父宮ラグビー場へラグビー日本代表戦を観戦した際の一枚

東京都出身。成城学園高等学校卒業。趣味は愛犬2匹との散歩とラグビー観戦。オフの日はよく自宅で飼っている保護犬2匹と近所のカフェに行くそう 。保育園と学童クラブでアルバイトをするほど子どもが大好き。

早稲田が分かる大学公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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