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作品で人を救う イラストレーターirukaがブランド設立、個展開催!

「受け手の声を聞くことで、思考の幅が広がった」

政治経済学部 4年 佐々木 日菜(ささき・ひな)

自身の描いたイラストと写った一枚

イラストレーター「iruka」として活動する政治経済学部4年の佐々木日菜さん。大学2年時には、自身のブランド「Festher.」を設立し、自身のイラストを施したファッションアイテムを展開しています。また3年時には、個展「君のいない部屋は色のない世界」を開催しました。最初はイラストレーターとしての活動に意味があるのか不安になることがあったものの、作品への反響を受けて自信が持てるようになり、思考の幅が広がったといいます。デザイナーやプランナーとしても活動する佐々木さんに、イラストを描き始めたきっかけや作品への反響、学生生活が作品作りに与える影響などについて聞きました。また、いくつかの作品について、佐々木さんが込めた思いを紹介します。

――イラストレーターとしての活動を始めたきっかけを教えてください。

「どんなに一面的に見える人だとしても、人間は誰しもタイミングによって、明るい面と光の当たらない面の両方を持っているのではないか。明るく振る舞うことが良いことだとされ、仮面を着けて常に明るくしているのは疲れてしまうのではないか、どちらの/どんなときの自分も自分として認めて良いのだと伝える作品です」(佐々木さん)

私自身がもともと、ネガティブな感情を抱くことがしばしばあり、人に対して発した言葉を振り返って「言わなければよかった」と後で思ったり、自分の存在意義が分からなくなってしまったりといったことがありました。そんな中で、誰もが自分と同じような状態になることがある、とりわけ自身の問題というよりも、家庭環境や恋愛などの外的要因によってそうなってしまう人が多いのではないかと気付いたんです。そこで、このようにネガティブな気持ちになっている人を救いたいという思いから、大学1年生の3月にイラストを描き始めました。幼少期から絵を描くことが好きだったのと、矛盾やゆらぎのある自分の感情全てを、言葉だけでは伝えられる感覚が無かったので、抽象性のあるイラストに乗せて伝える方法を選びました。

描いたイラストはInstagramで発信していますが、最初は自分のやっていることに意味があるのか不安になることもありました。しかし、才能の有無に関係なく継続することは大切だという信念のもと、イラストを描き続けていくうちに、反響をもらったり、表現の揺るがない軸が明確になってきたりして、自信が持てるようになりました。

――Instagramを中心としたWebでの活動にとどまらず、大学2年時には、自身のブランド「Festher.」を設立。3年時には、個展「君のいない部屋は色のない世界」を開催しました。

ブランド「Festher.」で販売している「強くなるって決めたのQi対応LEDワイヤレス充電器」

ブランド「Festher.」は2021年1月に立ち上げ、イラストを施したファッション小物を販売しています。SNS上のデジタルのイラストは、フォロワーなど限られた人にしか見てもらえないほか、見る人の心へ「刺さる」深さが浅いと感じていました。ブランドとして商品展開をすることで、感情の動きを経て商品を購入するという能動的な行動や、モノの持つ物理的な重みが生まれ、イラストがより深く心に刺さることにつながると思ったんです。商品は、女子中高生の方を含め、幅広い層に気軽に買ってもらえるものとして、ファッション小物を選びました。

2021年4月から5月にかけては、初の個展「君のいない部屋は色のない世界」を開催しました。SNS上では、どんな方が作品を見て、どのように捉えてくれているのか、なかなか分かりません。解釈は見る人に委ねるというスタンスではありますが、見てくれる方との対話を通じて、自分が思いを込めて描いたイラストが、実際にはどう捉えられているのか知ることが狙いでした。実際には、私の考えと同じことを感じ取っていた方も、異なる受け取り方をしている方もいらっしゃいました。来場者は中学生から30代後半くらいの方までと、想像よりも幅広い層の方がイラストを見てくれていると知ることができたのは大きな発見でした。男性も思いの外多かったです。以降の作品では、ターゲットをより詳細にイメージできるようになりましたね。

個展「君のいない部屋は色のない世界」の様子。2021年4月から5月にかけ12日間にわたって都内のレンタルスペースで開催した

――作品にはいろいろな反響があると思いますが、印象的だったものはありますか?

以前、コンビニなどでイラストをポストカードとして印刷できるサービスを提供していたときのことです。過去の経験から人間不信になってしまい、パートナーに自分の気持ちを素直に伝えられないという方が、そのポストカードを購入し、「素直な気持ちをこのポストカードに書いて伝えてみようと思います。勇気をくれてありがとうございます」と連絡をくれたことがありました。そのときは、自分のしていることがちゃんと誰かのためになっているのだと実感でき、すごくうれしかったです。他にもパーソナルなことを打ち明けてくださる方は多いです。当初は自分との向き合いの中で生まれた感情にフォーカスして作品作りをしていましたが、いろいろな人の声を聞くことで、「こういう考えもあるんだ」、「こういう人にはこういうことを伝えよう」というように、思考の幅が広がっていきました。

「人が言葉を使うことはとても怖いこと。言葉は簡単に装飾できてしまうし、思っていないことも言えてしまう。便利だけどすごく残酷に傷つけることができてしまう。そんなことを考えながら、言葉をいとも簡単に、刹那的に、瞬時に責任を放棄していくように、吐き出していく人を描きました」(佐々木さん)

――早稲田大学での学生生活が、イラストレーターとしての活動に与えている影響はありますか。

実行委員として力を入れて取り組んだ早稲田祭の企画「男祭り2019」などで、クリエイティビティーの高い学生と多く出会ったことは、イラストレーターの活動を始める後押しになりました。また早稲田には、多様な考えを受け入れてくれる学生が多いと思います。高校時代までは、本来の自分の性格は表に出したら否定されるだろうと、明るい人を演じてきましたが、大学で包み隠さずに自分の性格を出してみると、周囲の人は決して否定することなく受け入れてくれたんです。受容性の高い早大生とたくさん会って話すことで、自己が確立されていったように思います。

幅広い分野が学べる環境が整っていることもプラスに影響しています。というのも、イラストレーターは技術ありきと思われるかもしれませんが、思考の深さがもっと大事だからです。興味のあることも、逆にあまり興味がないと感じることも、幅広く学ぶことが、思考をより強固にすることに生きていると思います。

早稲田祭の企画「男祭り2019」に携わったときの写真。後列の右端が佐々木さん

――デザイナーやプランナーとしても活動の幅を広げていますね。卒業後の進路はどのように考えていますか?

現在はイラストレーターだけでなく、ポスターデザイン、ロゴ作成、展示会のアートディレクター、広告のプランナーなどといった活動も行っていて、卒業後は、広告代理店でクリエイティブ職に就く予定です。考えて作ること自体は一人でもできますが、作ったものを社会に定着させていくことを大事にしたく、この道を選びました。自分一人ではできない大きな仕事を含め、アウトプットをし続け、将来的には「佐々木日菜が考えたなら、絶対うまくいくだろう」、「ほかの誰でもなく佐々木日菜にこれを作ってほしい」と思ってもらえるようになりたいです。

「人間の記憶は瞬間瞬間の切り取りなので、こういう、光を浴びている、美しく幻想的な瞬間が人の記憶に残っていくのかな、と考えながら描きました。その記憶は例えば、木漏れ日とか、月の光とかを見たときに、その幻想的な光景がフックとして思い出されていくのでしょうか。そうであれば、この世の中で生きていくことは良いことなんだと思えそう」(佐々木さん)

――最後に、早大生へのメッセージをお願いします。

自分が価値を感じられるものを見つけて、そこに向かって目いっぱい大学生活を楽しんでほしいです。私がそうだったように、悩んだり、焦ったりすることもたくさんあると思いますが、それによって自己が形成されていくはずです。悩むことにも、どんなことにも精いっぱい夢中になってもらえたらと思います。

第835回

取材・文:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
政治経済学部 4年 山本 皓大

【プロフィール】
兵庫県出身。県立東葛飾高等学校卒業。高校時代に早稲田祭の企画の一つ「男祭り」をYouTubeで見て、そのバンカラな雰囲気に憧れたことが早稲田へ入学した理由の一つ。印象に残っている授業は、「芸術論争の歴史」(文化構想学部・文学部設置科目)。先生が正解を示すのではなく、自分が実際に作品に触れてどう感じたかを尊重してくれたため、芸術について深く考えることができたという。抱いた感情や響いた言葉などを常にメモし、それを基にイラストを制作している。イラストを使った商品の紹介やミュージックビデオのイラスト作成など、企業からの案件も手掛ける。自身のブランド「Festher.」は卒業後も続ける予定。
Instagram:@iruka.illustrator
Twitter:@hina_sasaki
佐々木さんのWebサイトはこちら
ブランド「Festher.」はこちら

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