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海洋プラスチック問題解決を目指す、佐賀県と早稲田大学の連携

世界海洋プラスチックプランニングセンター(PLA PLA)開館記念式典レポート

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Fri 10 Jul 26

世界海洋プラスチックプランニングセンター(PLA PLA)開館記念式典レポート

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Fri 10 Jul 26

早稲田大学と連携協定を締結する佐賀県は、2026年6月7日、『世界海洋プラスチックプランニングセンター(PLA PLA/プラプラ)』を開館しました。PLA PLAは、地域発で海洋プラスチック問題の解決を目指す、世界初の拠点です。理工学術院の大河内博教授が観測拠点とするなど、本学の研究・社会貢献活動とも密接につながっています。

本記事では、6月7日に行われた開館記念式典、関係者へのインタビューを通じ、地球規模の課題解決に向けた地域のアプローチをお伝えします。

撮影=世界海洋プラスチックプランニングセンター(PLA PLA)

撮影=世界海洋プラスチックプランニングセンター(PLA PLA)

環境や健康に影響をもたらす、海洋プラスチック問題の最前線

早稲田大学は、創立者・大隈重信の出身地である佐賀県と、2006年に「連携協働に関する基本協定」を締結。以来、人事交流をはじめ、教育・研究・貢献においてさまざまな協働事業を展開し、地域連携を強化してきました。2018年度からは早稲田関係者が佐賀を訪問することで関係人口の創出を図る「早稲田の聖地さが創生事業」などを推進しているほか、2025年度には、在学生が参画する課題解決型の「地域連携ワークショップ」を佐賀県で実施しています。連携20周年にあたる今年は、早稲田大学歴史館にて、これまでの連携事業を振り返る企画展も実施される予定です。

こうした佐賀県で近年課題となっているのが、海洋プラスチックの漂着です。九州の北西部に位置する唐津市波戸岬の海岸には、ペットボトルやビニール袋、発泡スチロール、漁具、ポリタンクなど、大量なごみが流れ着き、地域関係者が地道な清掃活動を行っても収集が困難な状況がつづいています。

国内の他、中国や韓国、東南アジアなど、海外からの漂着物も多い波戸岬のプラスチックごみ

国内の他、中国や韓国、東南アジアなど、海外からの漂着物も多い波戸岬のプラスチックごみ

「波戸岬のごみ問題は、地球規模の問題と密接に関連している」と説明するのは、環境化学を専門とし、マイクロプラスチックが環境や人体に与える影響を研究している理工学術院の大河内博教授です。

「太平洋には『太平洋ゴミベルト』と呼ばれる、漂流プラスチックごみが集まりやすい海域があります。そこには、日本周辺を含む北太平洋地域や漁業活動などに由来するごみも含まれていると考えられています。そして九州北部は、東南アジアから北上する海流や北西季節風などの地理的要因により、国内外から流れ出たごみが集まってしまいます」(大河内博教授)

理工学術院の大河内博教授は、放出された汚染物質の存在量や移動経路、環境やヒトへの影響を研究してきた

理工学術院の大河内博教授は、放出された汚染物質の存在量や移動経路、環境やヒトへの影響を研究してきた

問題は、ペットボトルのように大きなごみのみならず、目に見えない海洋マイクロプラスチックにも及びます。日本の近海は、世界平均の27倍にのぼるマイクロプラスチック濃度に達しており、生態系への影響が深刻化しているのです。

「例えばペットボトルが不法投棄されると、車に踏みつけられたり、地面と摩擦を起こしたり、紫外線を受けたりして、プラスチックの粒子が徐々に破砕・微細化されていきます。東南アジアなどの途上国では、廃棄物処理場でプラスチックごみが野積みされ、太陽光を浴びて微細化したプラスチックが河川を通じて海洋に流出してしまうケースも多いです。さまざまな要因により、海洋生物に被害が及んでいるのは間違いありません」(大河内博教授)

また、海洋の表層を漂うマイクロプラスチックは、泡沫の破裂などによって大気中に飛散します。粒子の小さいプラスチックは大気中を浮遊し、風に乗って上空に運ばれることもあり、近年はその量を問題視する報告が増えていると、大河内教授はつづけます。

「着色したマイクロプラスチックや、粒径1μm※1以下のナノプラスチックは、大気中で太陽光を吸収して赤外線を放出することから、地球温暖化への影響が指摘され始めました。また、一部は雲を形成するため、都市部でゲリラ豪雨の一因となっている可能性もあります。さらに、微細な粒子は呼吸器に入り込むことから、人体への影響も懸念されているのです」(大河内博教授)
※1 μm…マイクロメートル。千分の一ミリメートルにあたる。マイクロプラスチックは粒径1μm~5ミリメートルであるのに対し、ナノプラスチックはさらに極小の粒子を指す

波戸岬の眺望。九州北西部に位置し、対馬海流の影響を受ける

波戸岬の眺望。九州北西部に位置し、対馬海流の影響を受ける

佐賀から地球課題へアプローチする、実践型拠点「PLA PLA」

自然や社会のさまざまな領域に及ぶ、海洋プラスチックごみの影響。この地球規模の問題に対し、地域発でアプローチするのが『世界海洋プラスチックプランニングセンター(PLA PLA/プラプラ)』です。

波戸岬に開所したPLA PLAでは、海洋プラスチック問題の現状や海流の仕組みを学ぶための展示、海岸でのフィールドワーク、回収したプラスチックを再生するラボ、体験型ワークショップなどを通じて、一人一人が問題を理解し、行動へとつなげる機会を提供していきます。学校や企業、研究機関、地域団体とも連携することで、情報発信や環境教育の場としても機能します。早稲田大学も連携先の一つであり、大河内教授の研究成果も、PLA PLAの「体験ラボ」で展示されます。

「私の研究室では、大気や海洋における100μm以下のマイクロプラスチックについて、濃度を観測しています。荒れやすい玄界灘の海は観測上重要であり、今回新たに波戸岬を拠点としました。サンプラーのフィルター交換など、現地で必要な作業は、PLA PLAの職員や早稲田佐賀高校の生徒の協力を受ける予定です」(大河内博教授)

波戸岬の海岸に位置するPLA PLA

波戸岬の海岸に位置するPLA PLA

大河内教授の展示ブース。マイクロプラスチップの観測方法が紹介される

大河内教授の展示ブース。マイクロプラスチップの観測方法が紹介される

PLA PLAの建物には、波戸岬で回収された浮標、漂流物を用いた再生プラチックなどが材料として用いられる

PLA PLAの建物には、波戸岬で回収された浮標、漂流物を用いた再生プラチックなどが材料として用いられる

開所日にあたる6月7日には、開館記念式典が実施され、多くの関係者が説明・内覧会に参加。オープニングセレモニーでは佐賀県の山口祥義知事が挨拶を述べました。

「世界の美しい海を取り戻すため、そして世界の魚をプラスチックから守るために、『世界海洋プラスチックプランニングセンター』は今日、船出の時を迎えました。(中略) この地球をどうするのかは、今を生きる、そしてこれからを生きる人類の叡智、想いにかかっています。当センターをきっかけに、地球がプラスチックから守られた海を取り戻すことを期待したいと思います」(山口祥義氏)

山口祥義佐賀県知事

山口祥義佐賀県知事

またセレモニーには、環境大臣の石原宏高氏、トンガ王国大使館 特命全権大使のテヴィタ・スカ・マンギシ氏が来賓として登壇しました。

「プラスチックは大変便利で、私たちの暮らしに欠かせないものですが、川や海に流れ込み、ごみとなります。そして自然環境だけではなく、産業や生活にも大きな影響をもたらしています。(中略) 環境省は、佐賀県をはじめ本日ご列席の皆さまと連携しながら、海洋プラスチック問題の解決に向け積極的に取り組んでまいります」(石原宏高氏)

石原宏高環境大臣

石原宏高環境大臣

「陸地よりも広い海を有するトンガにとって、海は持続可能な発展と繁栄を支える生命線です。(中略)佐賀県がSDGsの実現に向けた取り組みを力強く進めておられることは、本当に素晴らしいことです。その取り組みは、ここに集う各国にとっても大きな学びとなるでしょう」(テヴィタ・スカ・マンギシ氏)

トンガ王国大使館 特命全権大使 テヴィタ・スカ・マンギシ氏

トンガ王国大使館 特命全権大使 テヴィタ・スカ・マンギシ氏

オープニングセレモニーの後は施設の詳細が紹介され、各国の関係者が開所を記念する“フラッグつなぎ”を実施。展示や体験ラボ、カフェの内覧会も行われ、会場は大いに賑わいました。

フラッグつなぎの様子。各国の関係者の他、早稲田佐賀高校サスティナ部の生徒の生徒も参加した

フラッグつなぎの様子。各国の関係者の他、早稲田佐賀高校サスティナ部の生徒の生徒も参加した

系属校や大学院の学生など、幅広い関係者が参画

前日の6月6日には、唐津市内で各国大使・領事館や企業などの関係者が一堂に会するレセプションが実施され、早稲田佐賀高等学校の「サスティナ部」が活動を報告しました。早稲田大学の系属校である同校は、さまざまな地域から生徒が集まる唐津市の中高一貫校です。サスティナ部には約50名の生徒が所属し、ペットボトルキャップのアップサイクル活動、ビーチクリーン活動などを行っています。プレゼンでは、部員たちが作り出すアップサイクルのアイテムに、「海洋プラスチックごみ問題における関心喚起への思い」が込められていることが伝えられました。

レセプションで発表するサスティナ部(撮影=唐津シーサイドホテル)

レセプションで発表するサスティナ部(撮影=唐津シーサイドホテル)

開館記念式典にも参加したサスティナ部のメンバーは、PLA PLAへの期待を語ります。

「私たちは、学校で捨てられるペットボトルの蓋をアップサイクルし、アクセサリーなどを制作することで、プラスチックごみ問題への理解を促しています。佐賀の自然を身近に感じる私たち高校生にも、海を守っていく責任があるはずです。問題を学び、交流を深められるPLA PLAの開所には、大きな意義を感じました」(早稲田佐賀高等学校「サスティナ部」部員)

写真左より、平野佐矢子教諭(サスティナ部顧問)、渡邊創太さん、下川鈴乃さん、中西紀乃さん(サスティナ部員)

写真左より、平野佐矢子教諭(サスティナ部顧問)、渡邊創太さん、下川鈴乃さん、中西紀乃さん(サスティナ部員)

また大河内教授の研究室メンバーは、波戸岬にサンプラーを設置。海水の採取も行い、観測活動をスタートさせました。

「私たちは、海洋からのマイクロプラスチックの飛散が懸念される能登半島、太平洋ゴミベルトの影響を受けやすい小笠原諸島の父島、自由対流圏に位置する富士山頂など、複数の拠点で観測を行っています。環境・健康リスクへの影響やそのメカニズムを解明する上で、条件の異なる多様な環境での研究は重要です。佐賀県との協力がスタートしたことで、活動が大きく前進するでしょう」(大河内博教授)

波戸岬に設置されたサンプラー

波戸岬に設置されたサンプラー

「身近に使用されるプラスチックですが、リスク面では未解明の部分が数多く残されています。海洋プラスチック問題に対する社会的な認知度は高まっているものの、実態への理解は進んでいない印象も受けます。世界的に注目が集まる海洋マイクロプラスチックの問題について、日本から知見やメッセージを発信できることは、重要な機会です。地域の皆さんとの協働とともに、私たちも研究活動にいっそう注力していきたいです」(大河内博研究室メンバー)

大河内研究室のメンバー。左より、笹井駿希さん、小澤あかりさん、一条雪乃さん、大坪令奈さん(創造理工学研究科 地球環境資源理工学専攻)

大河内研究室のメンバー。左より、笹井駿希さん、小澤あかりさん、一条雪乃さん、大坪令奈さん(創造理工学研究科 地球環境資源理工学専攻)

多くの関係者が海洋プラスチックの問題へと挑む上で、新たな拠点となるPLA PLA。総合知による世界人類への貢献を目指す早稲田大学は、今後も佐賀県との地域連携を強化していく方針です。

PLA PLA開会記念式典に出席した渡邉義浩 早稲田大学常任理事・早稲田佐賀学園理事長(右から5人目)、濵田秀樹ANAあきんど株式会社取締役会長(右から6人目、本学校友)をはじめとする早稲田大学、早稲田佐賀高校関係者

PLA PLA開会記念式典に出席した渡邉義浩 早稲田大学常任理事・早稲田佐賀学園理事長(右から5人目)、濵田秀樹ANAあきんど株式会社取締役会長(右から6人目、本学校友)をはじめとする早稲田大学、早稲田佐賀高校関係者

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