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SPECIAL INTERVIEW 加藤 崇さん
特集:Entrepreneurship from Waseda
Tue 28 Apr 26
特集:Entrepreneurship from Waseda
Tue 28 Apr 26
早稲田にしかない“余白”が、起業家を育てる
加藤 崇さん Rhetoric AI, Inc. 創業者兼CEO
新卒で入行した大手銀行を2年で退職し、ヒト型ロボットを開発するベンチャー企業SCHAFTを創業。同社を米グーグルに売却して世界的な注目を集めた、加藤 崇さん。2015年に渡米し、2社目のFractaも100億円以上で売却した連続起業家だ。2024年には、3社目となるRhetoric AI, Inc. を立ち上げた。開発しているのは、テキスト型のAI対話ボット「Happier」だ。
「『Happier』は、ChatGPTのようにユーザーからの質問を待つのではなく、ボットからの自然な問いかけを行うことによって、学校の悩みや就職、転職など、ユーザーの悩みに心理サポートを提供できるように設計しています。近年、政治や社会、学校やSNS空間から、共感を前提にした対話や、正義といった概念が消滅し、閉塞感が増しています。AIの力でユーザーの悩みに寄り添いながら、最終的には人間同士が、各々の立場を超えて対話できる場を再構築したい。それが今回の起業の原動力です」
10代の頃から人間の心理に関心を抱いていた加藤さんは、以前から人の悩みを対話で解決するソフトウエアの開発を模索してきたという。実装方法を探る中で、ChatGPTなど生成AIの急速な発展を受け、「こうした技術を組み合わせることで、イメージが形になる」と確信した。
「母子家庭で育ち、経済的には非常に苦しかった私ですが、母と姉、3人家族で毎日楽しく、幸せな日々を送ることができた。だからこそ、『誰しもが幸せになる権利があり、誰しもが幸せになることができる』と、心の底から信じることができるのです」
技術をビジネスへと昇華させるアントレプレナーとして、社会変革に挑む加藤さん。その素養は「早稲田大学の中でこそ培われた」と、懐かしそうに学生時代を振り返る。
「在学当時のキャンパスは、世間の枠組みにとらわれず、自分の哲学を貫く、個性的な学生で溢れていました。知的でありながら、画一を嫌う反骨。社会の標準に染まらない“余白”のようなものが、早稲田にはあった。この“余白”が、私に挑戦する勇気と知恵を与えてくれたのです」
テクノロジーが世界を席巻する現代。“アントレプレナーシップ(起業家精神)”に不可欠なのは、社会に対する思いと信念だと、加藤さんは語る。
「AIが知識を供給し、ロジックを担う時代に突入しました。いま起業家に必要なのは、『正しいプロセスを踏むこと』ではなくて、『何が正しいのかを問う姿勢』です。世間では、何でも良いから会社を作り、お金を儲けることが、起業だと教える向きがある。
しかし人や社会を幸せにしない起業には、意味がありません。社会で最も恵まれない人たちを利する挑戦が、早稲田発のアントレプレナーシップだと思っています」
PROFILE
1978年生まれ。2002年早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。東京三菱銀行を経て、ヒト型ロボットを開発するSCHAFTを共同創業。2013年 に同社を米グーグルに売却し、渡米。人工知能ベンチャーFractaをシリコンバレーで 共 同 創 業。2023年に全株を栗田工業に売却。2024年に3社目となるRhetoric AI, Inc. を創業。元スタンフォード大学客員研究員。2019年 より東北大学特任教授。ベンチャー創造の記録をnote『越境者ノート』に連載中。