Accom­plish­ments

WASEDAのSGU事業、10年の成果

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地球規模の課題の解決と未来を創造する 研究・教育システムの構築

モデル拠点による先行改革の全学への普及・定着

Waseda Ocean 構想では、国際的競争力を持つ7つの分野をモデル拠点として選定し、先行的かつ戦略的な集中投資を行い、各研究分野における国際的なプレゼンス向上を推進してきました。
各モデル拠点において、ジョイントアポイントメント(JA)制度訪問教員制度を先駆的に利用して、世界から各分野の優れた教員を招き、学生への国際共同指導や本学教員との国際共同研究を積極的に推進しました。その結果、2023年度までの10年間でJA教員および訪問教員を延べ300人以上招聘することができました。このようなモデル拠点の取り組みにより、モデル拠点を介さない学術院独自のJA教員雇用や訪問教員招聘も行われるようになり、JA制度や訪問教員制度の活用が全学に普及し、大学の制度として定着させることができました。
また、JA教員の雇用、訪問教員の招聘による国際共同教育や国際シンポジウムの開催等を通じて海外機関と信頼関係を構築することで、学部・研究科間の協定プログラム締結(2024年3月現在、ダブルディグリープログラム17件、コチュテルプログラム6件、ジョイントスーパービジョンプログラム6件、複合学位プログラム1件)へも発展し、モデル拠点による先行改革が世界の大学とのネットワークによる教育・研究者育成システムの構築に大きく貢献しました。
各モデル拠点は、2024年度以降もそれぞれ独自の自走化財源を確保し、関連分野の国際的なプレゼンス向上を目指して活動していきます。

地球規模の課題解決に挑む全学プログラムへの発展

2021年11月1日、本学は「カーボンニュートラルを実現する最先端研究」、「カーボンニュートラルに貢献する人材育成」、「キャンパスのカーボンニュートラル達成」という「三位一体」のバランスの取れた形でのカーボンニュートラル実現へのビジョンを持って、「Waseda Carbon Net Zero Challenge 2030s」を宣言しました。
本宣言に基づき、カーボンニュートラルに貢献する卓越した人材の育成を目的として、文理融合の横断的プログラムの展開を推進していきます。2022年度より学部学生を対象としたプログラムを、2024年度からは大学院学生を対象としたプログラムを展開しています。このプログラムの一つとなる大学院カーボンニュートラル副専攻の各コースに7つのモデル拠点の分野が設置されており、各モデル拠点の取り組みが地球規模の課題解決に挑む全学プログラムへと発展しています。

国際頭脳循環の加速

2023年度までの10年間でJA教員や訪問教員を始め、世界トップレベルの教員を海外から数多く招聘し、本学において学生指導の機会を創出し、学生への国際水準の教育の提供に努めてきました。招聘した教員との国際共同研究も活発に行われ、本学教員の国際共著論文数は大幅に増加しました。国際共同研究に参加した学生の国際共著論文も多数発行され、本学の教育・研究の質の向上に大きく貢献しました。 モデル拠点においても、UCLA-Wasedaリサーチ・フェローシップ・プログラム(国際日本学拠点)やエセックス大学とのサマーセッション(実証政治経済学拠点)の実施、スポーツに関する世界的な大学ネットワークであるGSUN(Global Sport University Network)への立ち上げ時からの参画(健康スポーツ科学拠点)、アランチューリング研究所との人的交流に関する協定締結(ICT・ロボット工学拠点)、国際連携教育を可能とする教育システム構築の体系化(ナノ・エネルギー拠点)、JA教員と本学教員の講義録・論文集の共同出版(数物系科学拠点)、国際和解学会の立ち上げ(グローバルアジア研究拠点)など、積極的な活動が行われ、国際的な人的交流が活性化されました。
また、ワシントン大学を中心に海外大学との連携によるFDプログラムも積極的に実施してきました。プログラムに参加した教員が国際的に質の高い通用性のある教授法を修得して大学へ持ち帰り、学内で共有の機会を設けることで、本学教員の教授能力の向上に繋がり、教育の質の向上に寄与しています。 このように、教育・研究双方で多方面に人的交流を持つことで、教員の国際流動性の向上を促進し、国際頭脳循環をより一層加速させています。

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教育・研究における徹底的な国際化の推進

学生の国際流動性の拡大

従前から導入していたクォーター制について、2017年度から全学標準適用し、授業カレンダーもクォーターに統一しました。併せて、留学帰国直後のクォーターにおける新規科目登録やクォーター単位での履修保留・継続履修を可能とする履修制度の導入や、夏クォーターを活用した短期海外留学促進等、学生の国際流動性を高める制度改革を推進しました。2023年度からは100分授業を導入し、各クォーター8週であった授業期間を7週に短縮しました。このことにより、学生が授業以外の活動に取り組める非授業実施期間を長く設けることで、この期間を利用した海外留学に行きやすくなるなど、クォーター制を活用した学生の国際流動性を高めることができました。
また、英語学位プログラムの拡大や学科試験を課さないAO入試の実施や新思考入試の導入等の多面的な入試制度の実施・導入、国際バカロレアによる志願者増により、様々なバックグラウンドを持つ学生が集まり、多様な学生の受け入れも実現しました。
新型コロナウイルス感染症流行により、学生の国際流動性が一時的に制限されたこともありましたが、そのような中でも国際交流の取り組みを行ってきました。オンラインでの様々な国際交流の取り組みを「Global Online Academic Learning (GOAL)」プロジェクトとしてまとめました。また、環太平洋大学協会(APRU)によるVirtual Students Exchange Programsへの参画、北京大学・復旦大学のオンライン授業の提供・交流、米国協定大学とのMini-COIL型授業の展開などを通じて、実渡航が困難な中でも多くの学生がオンラインにて国際教育交流に参加しました。この取り組みは、事情があり留学が難しいが国際交流をしたい、漠然とした関心があるものの迷っている、海外・留学経験をベースに更に国際交流を深めたい等、様々な学生が活用することで有意義な国際交流を経験できる場として提供することができています。

優秀な外国人留学生の獲得

SGU事業開始時、6学部11研究科に英語学位プログラムを設置していましたが、2023年度には7学部16研究科にまで拡大し、在籍者数も2,661人(2013年度)から4,209人(2023年度)へと大幅に増加しました。本学に在籍する正規生の外国人留学生も、4,594人(2013年度)から5,708人(2023年度)へ、1,000人以上増加しています。英語学位プログラム自体の拡大や募集定員増、海外リクルート活動の拡大等により、留学先として選ばれる大学となり、多くの優秀な外国人留学生の受け入れに成功しています。 また、大学間協定による留学生の受け入れも積極的に行ってきました。大学間協定締結校は2014年度時点で79か国・地域422校・機関でしたが、2023年度は91か国・地域867校・機関まで増加しました。交換留学等で受け入れる外国人留学生も増加し、2014年度には426人のところ、一時的に新型コロナウイルス感染症により減少を経たものの、2023年度には1,479人を受け入れています。
以上のように、本学では多くの優秀な外国人留学生を受け入れ、日本人学生と共に切磋琢磨することで多様なグローバルリーダーを育成し、世界へ輩出しています。

卒業生・修了生の国際的な活躍

2023年6月に発表されたQS World University Rankings 2024を構成する指標のうち、卒業生の活躍度を測る「Employer Reputation(雇用者による評価)」において、世界24位の評価を受けました。本指標の順位は年々上昇しており、2032年に向けた中長期計画であるWaseda Vision 150で「活躍の場はどこであっても、世界人類のために仕事をすることのできるグローバル・リーダーを育成すること」を掲げている本学にとって、本指標で毎年継続的に高い評価を得ることができているのは、優秀な学生を獲得し、教育を通じて学生を育て、世界トップレベルの卒業生を輩出している成果と言えます。

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教員採用システムと大学運営ガバナンスの抜本的改革

世界トップレベルの教員の獲得

SGU事業開始以降、ジョイントアポイントメント(JA)制度訪問教員制度活用のほか、テニュアトラック制度の再設計や卓越教授制度、インセンティブ手当制度導入の決定等、優秀な教員を獲得するための制度整備と海外教員の招聘を積極的に進めてきました。 テニュアトラック制度については、専任教員と同等の給与待遇への変更や、テニュア審査で不合格となった場合のセーフティネット(退職猶予期間)を設けるなど、従来の制度からより競争力のある制度へ再設計しました。SGU事業開始以降、従前の制度と併せて、海外からの応募者を含む52名をテニュアトラック教員として採用し、21名がテニュア審査を経て専任教員となっています。
また、高額な給与形態による雇用を可能とする卓越教授制度や教員の教育研究活動に係る業績評価に応じた手当を支給する柔軟な給与体系を設定できるインセンティブ手当を2024年度から導入しています。
以上のような取り組みを行いながら採用活動を行い、SGU事業開始以降、マサチューセッツ工科大学、オックスフォード大学、スタンフォード大学、プリンストン大学、香港中文大学、オークランド大学、国立台湾大学等の海外大学在籍者を専任教員として採用し、世界トップレベルの教員の獲得に成功しています。モデル拠点において訪問教員として招聘し、本学との交流を持った海外有名大学の専任教員が後に本学の専任教員として着任する事例もあり、モデル拠点の先行的な取り組みも、優秀な教員の獲得に寄与しています。

適切かつ大胆な意思決定の実現

2018年度以降、海外大学の現役教授やグローバル企業トップ経験者を常任理事、理事として招き、教学・法人事項に関わるグローバルな視座に富む意見を意思決定に反映させています。海外大学博士学位取得者等、本学以外の大学で教育を受けた理事や職員理事を含む女性理事も理事会の構成員とし、多様な構成員からの多様な意見に基づいた意思決定ができる体制を整えています。また、2014年度に若干名置けることとした副総長について、2022年度には副総長3人のうち1人を、教学を総括するプロボストと位置づけ、総長を補佐するとともに、教学部門全体を俯瞰して業務執行する体制を整えました。2023年7月には副プロボストを設け、プロボストを補佐しながら、より確実な業務執行が可能となりました。
2020年2月には、「学校法人早稲田大学権限規則」を新たに制定し、理事会等の議決事項や本学の各職位の権限と責任を規定し、迅速な意思決定が可能になる環境を整えました。
この他にも、Waseda Vision 150の核心戦略「進化し続ける大学の仕組み創設」のもとに設置された大学ガバナンス検討委員会において検討を重ね、外部委員によるアドバイザリー組織の設置、監事の増員等を実施してきました。
以上のようなガバナンス改革により適切かつ大胆な意思決定が可能となり、卓越教授やインセンティブ手当制度、寄付チェア制度の導入やWaseda Endowmentの運用開始、カーボンニュートラル社会研究教育センターの設置など、本学の国際競争力を高めるための制度・組織改革を多数実現することができました。

改革推進のための財源の確保

SGU事業開始以降、収益拡大や事業見直しにより毎年度一定の収支差額を確保する収支構造改革に加え、改革推進のための財源の多角的な確保に努めてきました。
ミドルハイリスク・ミドルハイリターンの長期的な新たな資金運用として「Waseda Endowment」を導入し、2018年より本格的な運用を開始しました。寄付金などを原資とした基金をもとに、従来以上の運用収益の実現を目指し、運用で得られた収入は戦略的投資予算として配分します。
また、2022年4月には、従前の教育研究の質向上を目指す改革を更に加速させ、教育研究活動のさらなる充実と世界に貢献する学生の育成を目的として、「早稲田大学応援基金」を設立し、寄付の募集を開始しました。
研究面では、学費によらない研究推進体制整備のために研究基盤となる科学研究費をはじめ、様々な競争的研究資金の獲得を行い、2023年度には、1年度あたりの外部資金受入額を、2013年度の102億円から、2023年度には目標額を大きく上回る170億円まで増加させることができました。
この他、カタールチェア協定に基づく受託事業(約7億円)の受け入れをはじめとする「戦略的国際ファンドレイジング」の活動や、海外拠点や学内との連携に基づく各種募金活動の戦略的な実行等、大学運営財源の多角化を図ることで、研究・教育システムを支える財政基盤強化を図ってきました。