2024年2月13日~16日の日程でWISH寮生10名が新潟県実地研修に参加しました。
3泊4日の研修にて稲作と雪に象徴される南⿂沼の⾃然と暮らしを体験し大きな学びや気付きを得たようです。
今回私たちは南魚沼市において、3泊4日のSIプログラム研修を行いました。研修内容としては、豪雪地帯である清水集落での暮らし、伝統的な織物である「越後上布」、日本酒造、座禅とのふれあい等を通して、地域における自然と人間とのの関係性、暮らし、伝統について問い直し、持続可能な社会の実現について考えるものです。
そのなかで、私が特に印象に残っていることが3つあります。一つ目が、南魚沼の自然の美しさ、壮大さです。今まで私は雪とは無縁の地域で過ごしてきました。南魚沼は標高2000メートル前後の山々に囲まれた、日本有数の豪雪地帯です。道中から見えていた一面に広がる美しい雪景色に、私はまっさきに目を奪われました。スノーハイクで森に入ると、とても静かで生物たちはみな眠っているように感じられます。しかし、よく耳をすませば鳥の鳴き声が聞こえ、よく目を凝らせば動物たちの通った足跡が雪の上にあり、よく地面を見ると小さな若葉がしずかに佇んでいます。厚い雪が覆う森の中でも、力強く生きている生物たちに感銘を受けました。
二つ目に、自然と人間との関わりの深さです。豪雪地帯、そして有数のコメの産地であるこの地域では、人々は自然と密接に共存して生きています。大雪で稲作ができない冬の時期には、その湿度の高さを生かした「越後上布」を発展させることとなり、大雪は十分な栄養素を供給しておいしいお米を育ててくれます。生活サイクルの一部として雪かき・雪下ろし(この地域ではその雪の多さから、雪堀りと呼ぶそうです)が組み込まれ、家や道路などは雪との生活に適切な構造となっています。遊びの面でも、かまくら・ゆきだるま遊び、雪合戦、雪滑りなどが行われます。私達もこの大雪との暮らし・雪遊びを体験しました。そのなかで気付かされるのが、先人たちの知恵が受け継がれているということです。かんじきという雪の上を歩きやすくする古典的な道具が今でも使用され、雪ざらしという越後上布の漂白工程(昔は科学的な効用など分からなかった)が受け継がれています。これはほんの一部分であり、長年の雪・稲作との生活の中で培ってきたたくさんの知識・技能があります。地元の人々がそれらを大事にしながら、今日まで自然と共存してきたことに偉大さを感じました。
三つ目に、温かく密接なコミュニティが存在することです。稲作の影響もあり民宿の主人は集落の全ての人と顔見知りであり、互いに助け合いながら生活しています。私達にも優しく接してくださり、人の温かさを感じることができました。見学した日本酒酒蔵でも、使われるお米の状態、蒸米、製麹、発酵の各部門の出来を加味しながら、職人同士で協力して日本酒造りが行われていました。現在の年ではみられることのない密接なコミニティーを目の当たりにして、改めてその魅力を感じました。
このように、南魚沼の人々は大雪と密接に関わってきた歴史、伝統的な暮らしがあり、今でもそれらを大事にしながら人々が協力して自然と共存しています.。それらは彼らにとって大きなアイデンティティーであり、これを損なうことはあってはなりません。昨今では科学技術の発展により、地方でも都会でもあまり変わることのない生活を送ることができるようになりました。そんななかで我々が地方の特性を考慮せず、都会と同じような生活を想定して地方創成、地方活性化などを進めてしまう現状が起こりつつあります。地方の自然と密接に関わってきた暮らし、文化、風俗を無視するような一方的な政策立案などはあってはなりません。これからの人生において、多様な他者と協働する上で必要不可欠になるこの「自然との関わり」という視点を持つことの重要性について気付かされ、活かしていきたいと思いました。
また今回の研修では、地球温暖化に影響を受けて年々積雪量が減っているという地元の声を多く伺いました。大雪を見ることのできない気候になってしまえば、南魚沼の伝統や文化が衰退していくことは明らかです。私達にとってはただ暑くなっただけで済んでしまう地球温暖化が、地域によっては生活を大きく変えてしまうことに繋がることになることに対して、改めて高い危機感を持ち行動していくことが必要であると感じました。
この四日間の研修においては、様々な発見があり、自然と共存する生活のすばらしさ、伝統に誇りを持つ心などに感銘を受けました。この経験は今後の人生に大きく寄与すると考えます。改めて本研修を支えてくださった関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。