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WISH国内合宿研修 新潟県南魚沼市(2020年2月実施)

研修の舞台は新潟県南魚沼。豪雪地帯で有名なこの地域での研修に寮生7名が参加しました。
便利な都会での生活から離れ、南魚沼の人々の温かさと自然の恵みを大いに感じた5日間となったようです。

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「今まで生きてきた中で、こんなに雪がなかった日はない。地球がおかしくなっている。」この新潟県の栃窪で生まれ育った90歳のおばあちゃんはそう言った。私たち東京都民にとってみれば1mの積雪など十分だった。だが、栃窪の人々曰く、例年の今頃(2月)にはすでに4~5m積もっていたそうだ。今年は、例年の4月ごろの積雪量と同じだった。

雪が降らなくてもそれでいいのではないだろうか。むしろ無い方が都合がいいではないかと私は思った。しかし、栃窪での生活は雪との共存無しには語れないものだった。新潟で有名なものと聞いて1番に出てくるのは恐らく「お米(コシヒカリ)」だろう。新潟の米は、夏になるまでずっと山から田んぼに流れてくる豊富な雪解け水を使用して作られている。今年はその雪はもう既に無くなりそうな勢いだった。新潟は、かつてのような豪雪地帯ではなくなっていた。

新潟には誇るべき伝統産業がある。越後上布だ。生産者が急速に減少しているものの、今も約20人の女性たちが伝統を繋いでいる。今回の研修では、実習生が3年かけて越後上布を織り上げた感動の瞬間に立ち会えた。彼女の達成感と、織り上がった織物の美しさには圧倒させるものがあった。今回、初めて越後上布というものを知り、生産工程を間近で見たが、日本を思わせる繊細でシンプルな柄や、雪ざらしの工程などをみて、どこか愛着を感じた。私はこの伝統を守りたいと思った。

東京には伝統が無いに等しいと考えている。そして一方的に増え続ける外国人観光客に日本が飲み込まれて行く。町には英語や洋風な店が増え、日本人ですらも古い日本の文化にときめきを感じるまでに、日本人(特に東京都民)と日本の伝統文化は切り離され始めている。一方で、新潟は違った。彼らは少なくとも伝統を大切にしようとする人たちがいる。どれだけ製造に月日がかかろうとも、儲けにくくとも、伝統に、地域に愛を持っている。そしてそれが、外国人観光客にも良い影響を与えている。新潟を訪れる外国人観光客はその土地の文化を感じ、体験しようとする。この伝統を一緒に守り、継承しようとする。「郷に入っては郷に従え」という言葉が示すように、海外からの来訪者たちとともに自国の文化を継承していく。これが現代のあるべき姿なのではないだろうかと感じた。

といった話はともかく、5日間の暮らしはとても良いものだった。朝、澄んだ空気ときれいな青空、雪についたウサギやテンの足跡、彼らが残していった食べかけも見られた。そして、外には一面に雪景色が広がっている。私たちはスマホを見るのすらも疲れると思うまで毎日雪合戦をし、太陽と共に起き、寝た。自分たちの身長より遥かに高いアメリカンサイズの三段雪だるまも作った。そして、朝昼晩と、5~10種類に及ぶ色とりどりで健康的な食事を堪能した。雪かきの後に頂いた差し入れの温かい大根の味は今でも忘れない。夜には雪の壁に穴をあけて雪灯篭をしたり、皆で道路に寝そべって満点の星空を眺めた。肉眼でこれほどまでに星が見えるとは想像もつかないほどの光景を目の当たりにした。

新潟県の無くなりつつある豪雪地帯。そこに住む人たちの手だけで伝統や生活を守れるものではない。新潟での暮らしは東京にいるだけでは決して体験できない素晴らしい5日間だった。彼らだけでなく、私たちも一緒に、日本中で繋ぐべき大事な一伝統だと思う。

(社会科学部 E.Y.)

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