地域・地域間研究機構(ORIS: Organization for Regional and Inter-regional Studies)は、早稲田大学のアジア研究機構、日米研究機構、日欧研究機構を統合して、2015年4月に設置されました。
これらの3機構は、これまで個別的な地域を中心に専門的な研究を行い、多くの研究成果を上げてきました。しかし、経済社会のグローバル化とともに、地域を越える新しい政治経済問題が発生しました。たとえば、東アジア・太平洋地域における経済協力体制をめぐるアメリカと中国の主導権争い、一部イスラム原理主義勢力の欧米諸国への異議申し立て、「イスラム国(ISIS)」による既成イスラム諸国および欧米諸国へのテロ行為などがその代表事例です。しかも,これまでの個別的地域研究は、これらの問題をどのように考え、どのように解決すべきかについて明確な答えを出すことができませんでした。
このような地域を越える新しい政治経済問題の台頭と従来の地域研究の限界を認識して設置されたのが、地域・地域間研究機構です。
地域・地域間研究機構は、「アジア、アメリカ(北米・中南米)、欧州、アフリカ、中東諸国の地域間関係と共生可能性」というテーマのもとに、①各地域では歴史的にどのような過程を経て現行の価値やルールを含む地域秩序を形成してきたのか、そして、②グローバリゼーションが進む世界において、どのような領域でどのようにすれば地域を越える価値やルールに基づく共通の秩序を形成し、さらにそれを他の領域に拡大することができるのか、という2つの研究課題に取り組みます。そのために、これまでの3機構をアジア研究ユニット、アメリカ研究ユニット、欧州研究ユニットとして存続させ、新しくアフリカ研究ユニットを設置しました。これらの個別的なユニットにおいて地域秩序の形成過程を詳細に研究され、これらの基礎研究の上に「共同プロジェクト」として共通秩序の形成と共生可能性が研究されます。
最後に、地域・地域間研究機構は、社会科学と人文科学を含む早稲田大学の主要な学際的研究機構として、これまで3研究機構が培ってきた海外の大学・政府機関などとの提携関係を生かし、またこれまで構築した研究者のネットワークをさらに拡大し、共有知の創出と発信の場になることを目指します。
地域・地域間研究機構長 吉野 孝