SGU数物系科学コース2020年度生の鈴木貴大です。7/2-7/17にわたって、SGU Special Online Seminars/Lectures on Quantum Physicsがオンライン上で開催されました。
オーストラリア・マッコーリー大学のBurgarth教授,イタリア・バリ大学のFacchi教授,Pascazio教授にご講演いただき最近の研究内容を紹介していただきました。
Speaker: Prof. Daniel BURGARTH (Macquarie University, Sydney)
Date: July 2 Thursday 16:30-18:30 Tokyo time
Title: Quantum Controllability 2.0
Burgarth教授の講演では、量子系の制御可能性について話して頂きました。時間に関して区分的に一定な実関数 を用いて、ハミルトニアン を考えます。このハミルトニアンによって任意のユニタリ操作が実現可能なとき、制御可能であると言います。このような理論は、正確なユニタリ操作を必要とする量子コンピュータの文脈で注目されています。制御可能なハミルトニアンを考えたときに、このハミルトニアンが少しずれた際に制御不可能になってしまうと困ります。この「どのくらいずれたら制御不可能なハミルトニアンになってしまうか」という量がどのように評価できるか、という話をしていただきました。
Speaker: Prof. Saverio PASCAZIO (University of Bari, Italy)
Date: July 3 Friday 16:30-18:40 Tokyo time
Title: Graphs and Random Networks
Pascazio教授の講演では、量子力学を用いた複雑ネットワークの解析についてご講演いただきました。グラフ理論では、グラフラプラシアンと呼ばれるラプラシアンを離散化したものに対応する量の固有値が、グラフの特徴を表したものとして議論されています。この固有値をエネルギースペクトルに持つような一次元シュレディンガー方程式のポテンシャルを考えると、このポテンシャルの形状とランダムグラフにおけるパーコレーションの相転移が対応しているという話をしていただきました。
Speaker: Prof. Paolo FACCHI (University of Bari, Italy)
Date: July 9 Thursday 16:00-19:00 Tokyo time
Title: Algebra of Observables in Classical and Quantum Mechanics
Facchi教授の講演では、量子力学や場の量子論の数学的基礎をなすC*-代数を解説していただきました。コンパクトな相空間上の古典力学における物理量や、量子力学における有界な作用素がC*-代数の枠組みで理解できることを説明していただき、この講演の最後には、GNS構成法について解説していただきました。
- Prof. Daniel BURGARTH(Macquarie University, Sydney)
- Prof. Saverio PASCAZIO (University of Bari, Italy)
- Prof. Paolo FACCHI (University of Bari, Italy)
Speaker: Takayuki SUZUKI (Waseda University, Tokyo)
Date: July 17 Friday 16:30-18:00 Tokyo time
Title: A Proposal of Noise Suppression for Quantum Annealing
さらに、最終日には、自身の研究について講演する機会を設けていただきました。スピン・ボソン模型の下での量子アニーリングにおけるノイズ抑制手法について講演し、様々な議論をさせていただきました。

数物系科学コース 物理学及応用物理学専攻 鈴木貴大(博士後期課程1年)
この四日間のセミナーにおいて、第一線で研究されている海外の先生方の研究の話や議論を通じ、非常に実りあるものになったと感じています。私自身も、今回のセミナーで話していただいた内容や、議論していただいた内容を今後の研究に活かしていけたらと思っています。コロナの影響によって、対面による議論が難しい日々が続きますが、今後もこのようなオンライン上での議論やセミナーを通じて、より良い研究をしていけるように精進していきたいと思います。