現代政治経済研究所所長 小林 哲郎
かつて大隈重信も高峰譲吉や渋沢栄一らと共にその設立に関わった理化学研究所は、大胆なアイデアに基づいた財政と自由な発想を奨励する研究環境によって、多くの傑出した才能を輩出し、「科学者の楽園」と呼ばれました。これに対し、現在の日本の学術研究を取り巻く状況は厳しく、予算の制約、増加する事務作業、不安定な雇用環境などが研究者を疲弊させています。にもかかわらず、研究者たちは工夫を重ね、新しい知識を創出し、厳しい査読を経て論文として成果を世に還元しようとし続けています。特に、気候変動、戦争、少子高齢化、民主主義の後退など、世界規模の課題が山積する中、社会科学に対する期待はかつてないほど高まっています。
このような状況の中、現代政治経済研究所は、規模は小さくてもきらりと光る「社会科学者の楽園」を目指したいと考えています。そのためには、まず第一に、個々の研究者が自由な発想に基づいて研究を遂行し、その成果を世界に発信できるよう支援することが重要です。第二に、「世界で輝くWASEDA」を目指すためには、世界中の優れた研究者とのネットワークを強化することが必要です。現代政治経済研究所の研究員を中心に、研究部会やセミナー、ワークショップを通じて世界のトップレベルの研究者と交流する機会を提供し、優れた研究アイデアを生み出すだけでなく、次世代を担う若手研究者の養成にもつなげたいと考えます。
かつて「科学者の楽園」と呼ばれた理化学研究所も、深刻な財政難や物資不足に直面しながら、そうした困難を乗り越える中で自由で独創的な発想を生み出したと言われています。現代政治経済研究所も、様々な制約がありながらも、所内外から優れた工夫やアイデアを集め、現代社会が直面する政治、経済、ジャーナリズム、メディアの諸課題に対して自由な発想で挑戦し、世界レベルで研究成果を発信していくことのできる「楽園」でありたいと考えています。
2024年9月21日