研究代表者
岩志 和一郎
IWASHI Waichiro
法学部教授
本プロジェクトの概要と目的
本研究プロジェクトにおいては、現代生命医科学の飛躍的な進歩と発展がもたらした「生命操作をめぐる倫理的、法的、社会的問題点の考察」を行うことを目的とする。
新しい生命操作技術の開発は、例えば、DNAの構造の解明により、遺伝子操作を可能にし、がんをはじめ、殆どの病気の治療や予防、医薬品の開発などに遺伝子工学技術が使われはじめた。遺伝子組み替え作物・種子の生産、クローン羊や豚の誕生も実現し、ヒト胚の万能 (ES) 細胞を使用しての臓器や皮膚の再生医療も可能になると考えられる。更に、死の再定義、安楽死、脳死体からの臓器の移植も生命操作時代におけるバイオエシックスの緊急な課題となっている。
このような生命操作時代の中で、医療の現場でも漸く最近になって「いのちを操作されない」ために「バイオエシックス」の考えに沿った「インフォームドコンセント」が患者の権利として認識されはじめ、いのちの終わりに関連して「アドバンスデイレクテイブ」が立法化される国々も出て来ている。
いのちの尊厳と人権を守り、生命医科学技術の意図的な悪用や誤用を避けるための「バイオエシックス」を新しく構想するために、本研究プロジェクトは、人間総合研究センターにおける「バイオエシックス・プロジェクト」の16年間にわたる研究活動による国際会議(国際交流基金日米センター研究助成)や報告書、ニュースレター、シンポジウム、セミナーなどの多元的蓄積をふまえつつスタートする
本年度は、それぞれ各研究員・客員研究員の専門分野である医事法(岩志 和一郎)、民法(浦川 道太郎)、外国法(森川 功)、バイオエシックスの思想(土田 友章)、バイオエシックス理論(木村 利人)、小児医療(仁志田 博司)、バイオエシックス公共政策(河原 直人)、バイオエシックス倫理委員会(掛江 直子)の視座から、現代日本における緊急な課題としての「生命操作と生命の尊厳」の諸問題にアプローチすることを計画している
具体的には、研究員および客員研究員の参加による共同研究会やセミナーなどを随時開催し、生命操作にかかわる諸問題についての学術活動を展開する。同時に、海外の関連研究機関とも提携しながら、国際的なネットワークを形成しつつ、多元的なアプローチを行うことで、それらの成果を社会に発信していきたい。
本研究プロジェクトを通し、日本におけるバイオエシックス公共政策としての包括的な「生命操作ガイドライン」への提言、ならびに、具体的な「生命操作に関する規制」立法案についての考察と検討を行い、この分野において、国際的に先進的な学問形成に積極的に貢献しようとするものである。
プロジェクト期間
2004年4月~2007年3月