研究代表者
浅田 匡
ASADA Tadashi
人間科学部教授
本プロジェクトの概要と目的
本研究は、学校教育を対象とした教育専門家の発達を支援するシステムの開発を目的とする。IT技術を活用した教育専門家の研修・研究環境を開発し、その環境下での専門家の職能発達過程を明らかにする。具体的には、総合的な学習の時間を中心とした単元・授業設計における教師の思考内容および思考様式を明らかにすること、校内研修を中心とした教師集団における単元・授業設計における知識創造過程を明らかにすること、それらに基づく、IT技術活用による支援システムの開発と大学との連携システムの構築およびその評価である。
専門家の養成あるいは職能発達支援は、従来熟練者モデルに依拠していた。しかしながら、専門家の知恵といわれる臨床の知あるいは実践知の機能が重要視され、その実践知の獲得過程が教育心理学、教育学、文化人類学、社会学等で研究が進められている。その状況の中で、本研究の特色は、具体的なシステムの開発を行ない、実践の中で専門家の学習過程および実践知を明らかにすることにある。すなわち、実践の中での人の学習を、教育専門家に限定しながらも実践を改善するシステム開発を通して明らかにする点が特徴である。また、本研究は、e-learningによる職能発達支援研究として意義あるものである。人間科学部ではすでにブロードバンド環境に対応したe-schoolの実践を始めているが、それを基盤としてさらに、実践上の現実的課題解決支援を行なうところに特徴がある。
このような特徴から、本研究の成果は、学校・地域・大学が連携しつつフィールドワークを基盤とした学校教育改革システムの提案がまずあげられる。教育改革の大きなポイントは、その担い手である教育専門家(教師)の職能の向上である。その意味から、本研究が提案し実現するシステムは、教育改革を実現可能なものとする意味で大きな成果といえる。同時に、そこでは教育専門家の職能発達のメカニズムを明らかにすることが成果としてあげられる。教育分野だけでなく、専門家養成は主として徒弟制あるいはOJTが主流である。これに対して、本研究は職能発達に関して問題解決を行なう共同体(コミュニティ)による専門家の職能発達支援の可能性を示すことができると考えられる。
プロジェクト期間
2004年4月~2007年3月