研究代表者
臼井 恒夫
USUI Tsuneo
人間科学部教授
本プロジェクトの概要と目的
人口高齢化は日本において特に急速に進展している現象であるが、それは我々のプロジェクトが対象とするアジア地域も例外ではない。国・地域によってその進展度は異なるものの、今後50年以内にほぼ例外なくすべてのアジア諸国(地域)は高齢化社会となる。この高齢化という人口構造の変化と、経済発展および文化・慣習の変化に伴い、高齢者を中心とした人々の生活が、大きく様変わりをしている。この現象は、高齢者のみならず、高齢化社会に暮らすすべての人にかかわる問題であり、その理解のため、本プロジェクトでは「世代間関係」という視点を用い研究を進める。
- 本プロジェクトでは、平成15年度から平成16年度にかけて文部科学省科学研究費補助金の交付を受け、「東・東南アジア地域における高齢化とリビング・アレンジメントに関する比較研究」(研究代表者・嵯峨座 晴夫、基盤研究(海外調査B)を行う。この研究では、「リビング・アレンジメント」という視点を用いて、世代間の居住形態の実態と意識調査を行う。具体的には対象地域の「高齢者(60歳~80歳)」に対して、子どもとの同居・別居などについて質問紙調査を行う。その中の重要な項目として、世代間のコミュニケーションの頻度、思考的影響、意識等の事柄も含まれる。すでに2004年1月から2月にかけて、所沢市の住民を対象に、面接調査を実施した。これに加えて、「祖父母と孫関係(グランドペアレンティング)を中心とした、世代間関係の質的調査」も計画している。この調査は、我々の早稲田大学他シンガポール大学等計5カ国による国際共同研究である。この世代間関係によりフォーカスした研究を実施することによって、世代間関係の分析枠組みの構築、それを元にしたアジアの世代間関係の国際比較を行うことができる。
- 本プロジェクトの特徴としては、高齢者を中心とした世代間関係の研究をアジア地域を対象として行うことである。経済成長段階および人口高齢化の進展度に関して、ほぼ連続的な考察が可能となる。
- 高齢化と世代間居住に関する先行研究については、すでに十分な文献調査検討が加えられ、その成果も明らかになりつつあるところである(平成13年・14年度科研費:13610242、「東・東南アジア地域における世代間の居住形態と高齢者の生活の質に関する比較研究」)。ここから得られた関連分野における傾向として、多くの高齢化社会の国際比較研究は実際に調査を行わず既存のデータの寄せ集めで行う場合が多いことなどが明らかにされている。これらの課題をすべて克服すべく取り組むのが本研究である。
プロジェクト期間
2004年4月~2007年3月