人間の発達と、科学と技術における進展は、両者があいまってよりよい方向にあるべきですが、先端科学技術が先走りして、人間が置き去りにされている懸念がないわけではありません。この問題は科学・技術を基盤にしてすすめられている社会変動を考えるとき、きわめて重要なものです。また、社会構造の多様化と複雑化は現代社会を不透明化し、人間のいる位置が見えにくくなっています。われわれが当面している課題は簡単には解決がつく問題ではないとは思いますが、人間と社会と自然の関係や相互依存について学び、人間・社会・自然、それぞれに、またそれらの間に全体としての統合と調和の状態を実現すべく、社会に絶えず問いかけ、働きかけることが必要かと考えます。
人間総合研究センターは、こうした考えを実現する目的で設立されました。本研究センターは、あらゆる現象(物理的、生物的、心理的、社会的、文化的そして歴史的)の背後に横たわる相互関連性と相互依存性を自覚し、そのメカニズムを説明し、そして、人間・社会・自然の共存に資する共同研究を行う研究者のコミュニティーづくりを目指しています。このような考えをもとに研究を展開するため、本研究センターは大学院人間科学研究科および人間科学部とスポーツ科学部における教育・研究と密接な連帯を保ちながら、生命科学、健康科学、社会科学、人文科学、行動科学、スポーツ科学などからなる学際的研究をプロジェクト方式により展開します。また、本研究センターは研究成果の水準を高め、そしてその成果を活用するため、大学の内外に門戸を広く開放しています。