- 研究代表者
- 木村 利人
本プロジェクトの概要と目的
現在世界的に注目されている [バイオエシックス] という超学際的な新しい学問分野の日本におけるパイオニア的な研究を目標として本プロジェクトは展開してきた。活動としては医学、法律、哲学、宗教等の各専門研究員の研究報告、施設訪問、国際シンポジウム、学会の共催等により [バイオエシックス公共政策] 形成に成果をあげつつある。
科学技術の急激な発展は、自然・社会環境、特に個人の生命・生活の価値判断や倫理的な決断に極めて大きな影響を与えつつある。遺伝子組み替え、ヒト・ゲノム解析、遺伝子治療、脳死、臓器移植、患者と医師の関係のありかた、末期のケアと看護、尊厳死などはもちろん環境倫理、動物の権利、バイオテクノロジー、宇宙開発、臨床治験など生物・医科学や医療、環境科学に関連する多くの分野においての個々の生命操作技術の是非を考えるにあたって、専門家と一般市民とのコンセンサス作りのための開かれた民主主義的な手法が求められている。従って「バイオエシックス」は旧来の「応用倫理学」の枠組みを超えて新しい時代に相応しい人間の価値観をふまえた「公共政策」として展開しつつあり、多方面に広がりを持つバイオエシックスの統合的なガイドラインが提案されてきている。
これらの国際的な動向をふまえつつ、本プロジェクトにおいては、「バイオエシックス公共政策」の日本における展開を促進するための基礎的研究を目標とし、研究の蓄積の成果として、国際シンポジウム、プロシーディングの公刊 (『患者にとって医療とは何か ─臨床医療と看護の現場から─』1992年12月)、季刊誌「国際Bioethics Network」の定期的刊行 (1995年3月現在第18号) などにより具体的な政策への提言、国際的な学問的交流や一般市民への情報提供、研究会、講演会、シンポジウム (シリーズ・生命倫理とコミュニケーション) などの活動を行ってきた。
また、本プロジェクト研究員が全員実行委員となって、1994年10月1・2日に第6回日本生命倫理学会年次大会を「バイオエシックス公共政策の形成を目指して ─学問・運動・教育─」のテーマで開催した。1994年度には「インフォームド・コンセント」をテーマとして分担研究を行っている。
なお、現在アメリカのジョージタウン大学ケネディ倫理研究所とドイツの ボッフム大学医学医療倫理研究所との共同研究プロジェクト「死をめぐる事前指示」に本プロジェクトも協力し、研究会を開催している。更に、早大ヨーロッパセンター (ボン) での「遺伝子と生理学をめぐるバイオエシックスの諸問題」についての日欧シンポジウム (1995年6月開催) にも協力している。これらの国内的・国際的な共同研究活動により本プロジェクトを今後、日本と世界におけるバイオエシックスの研究・教育の重要拠点としてますます大きく発展させたいと願っている。
プロジェクト期間
1995年4月~2004年3月