Waseda Weekly早稲田ウィークリー

「ノート貸して」が言えなかった私たち 寺嶋由芙 × 箕輪はるか(ハリセンボン)対談 <前編>

新歓コンパにも疑心暗鬼 まったく友達ができなかった大学時代

4月は出会いの季節です。新しい学校、新しい会社、新しいクラス…。未知の環境に飛び込み、友達づくりに不安を覚えている人も多いかもしれません。お笑いコンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかさん(2003年第二文学部卒)とソロアイドルの寺嶋由芙さん(2014年文学部卒)も、かつて友達づくりで悩んだ経験があるのだとか。 今回はそんなお二人に、この度新入学生の指南書『大学1年生の歩き方』(左右社)を上梓したばかりのライター・清田隆之さん(2005年第一文学部卒、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)がお話を伺いました。メディアで大活躍中の箕輪さんと寺嶋さんが、早稲田で過ごした“ぼっち”な日々とは…?

左から、寺嶋由芙さん、箕輪はるかさん(ハリセンボン)

──お二人が新入生だったときはどんな感じで過ごしていましたか?

箕輪
とにかく孤独でしたね。大学時代、友達は一人もできませんでした。サークルの新歓コンパとかも、「だまされるんじゃないか」って疑心暗鬼になってしまって結局一度も参加できなかったし……。
寺嶋
私はダンスサークルに入りたくて体験練習に参加したんですが、文キャン(※文学部・文化構想学部などがある戸山キャンパス)の女子たちが華やか過ぎて「ここではやっていけないな」と感じてしまい……結局、ダンスは地元のスクールで習うことにして、大学では同じ高校の友達に誘われた中国語の勉強会に入りました。
箕輪
なかなか地味なサークルですね。アイドルとは全然かけ離れてる(笑)。

──大学って高校までと違って放任主義で、クラスとか決まった座席とかないから、友達をつくるのが割と難しいですよね。

寺嶋
そうなんですよね。一応、週に3コマくらいある語学や演習の授業がクラスの代わりみたいになっていて、そこで積極的な人が交流会とかを開催してはくれたんですが、そこでの交流もあまり続かなかったですね。
箕輪
私は第二文学部(※文学部再編のため2007年度より学生募集停止)という夜間の学部だったので、語学のクラスといっても年齢層がバラバラで、おじちゃんやおばちゃんもたくさんいました。クラスコンパもなかったし、学校には授業を受けに来るだけだったなあ。当時はバイトばかりしてましたね。
寺嶋
何のバイトをしてたんですか?
箕輪
スーパーのレジ打ちです。話し相手はもっぱらパートのおばちゃんばかりでした。

──4月で友達づくりに失敗すると、いろいろ情報が入手できなくて苦労しませんか?

寺嶋
そうなんですよ! 友達が多い人たちって、サークルの先輩とかから授業の評判や参加すべき学内イベントのことを聞いてて、すでに情報をたくさん持ってるんですよね。私にはそういう口コミ情報がまったくなかったので、『マイルストーン』〔※大学登録(未公認)サークル「マイルストーン編集会」発行の早稲田大学情報誌〕を買い、自力で授業の情報を集めて履修登録をやりました。
箕輪
私、そのマイル何とかってやつも知らなかったです。
寺嶋
えええ〜!? 早大生で『マイルストーン』を知らないとは……本物感がすごい!
箕輪
そもそもこの対談、本当に私でいいんですかね……。早慶戦も行ったことないし、文キャンに通っていたけど文カフェ(※戸山キャンパスのカフェテリア)には1〜2回しか行ったことないんですよ。友達ができず早大生っぽいことをほとんどやったことがないのに、『早稲田ウィークリー』で「友達づくり」について語るという……段々不安になってきました(笑)。
授業を休んだら先生に直接聞きに行くしかなかった

──お二人が友達づくりにつまづいてしまった理由は何だったんでしょうか。

寺嶋
元からそんなに得意なタイプではないんですが、大学1年生のときからアイドルを目指していたので、それも大きかったように思います。サークルが楽しくなるとそっちに時間を使っちゃいそうだから全力でコミットできなかったし、学校が終わればレッスンやライブがあったので、イベントや飲み会に参加する時間が取れなかった。友達との距離をどう取ればいいか、すごく難しかったですね。
箕輪
私は暗くてコンプレックスだらけだったので、自分から話し掛けることがほとんどできなかったんですよ。サッカーの授業にちょこっと話す子がいたけど、それくらいですね。
寺嶋
サッカー! それって必修だったんですか?
箕輪
いや、体育の選択授業で何となく取ったんですよ。当時住んでた家が東伏見キャンパスの近くで行きやすかったというのもあるんですが。

──箕輪さんがサッカーとは、意外過ぎますね。

寺嶋
でも分かります。私も授業で隣になった子とちょっと話す程度でした。だから授業はすごくマジメに受けてました。「ノート貸して」が言えなかったので、仕事で休んだときは先生に直接聞きに行くしかなかった。授業を受けるときも前の方に座ってたし、授業が始まる前は本を読むくらいしかやることがなかった。先生からしたら勤勉な学生に見えてただろうなあ。
箕輪
「意欲がすごい」みたいな。
寺嶋
そうそう。実際、授業を取っていたトミヤマユキコ先生(※文学学術院助教)も「いつも前の方に座ってるあの暗い子は誰だ」って気になってたみたいです(笑)。
箕輪
私もノートを貸してくれる友達がいなかったので、全部自力でやってました。代返なんて到底できなかったので、自分で出席するしかなかったし。

──よく考えると、代返ってリアルが充実した人々しか使えない手段ですよね。

寺嶋
そうですよね! ズルいですね。いっそ指紋認証とかにしてほしい(笑)。
箕輪
文キャンには男女でわいわい楽しそうにしてる学生もたくさんいましたよね。寺嶋さんは男子の友達っていましたか?
寺嶋
中高は共学だったので普通に男子の友達もいたんですが、アイドルの仕事を始めてからは、何となく男子のいる飲み会などには参加しなくなりましたね。

──それはやはり、アイドルとしてのプロ意識から?

寺嶋
別に私のことなんて誰も知らないし、そんな必死に壁を作る必要もなかったんですけどね…。誰にも知られてないのに気にしてる自分がイヤという気持ちもあり、何かもう自意識がこんがらがってしまって、男子とどう接していいか分からなかったです。
図書館、コンピュータルーム、神社のベンチ…“ぼっち”が集まる意外な場所とは?

──お二人とも結構本気でぼっちをこじらせていた感じなんですね……。

箕輪
そうですね。大学時代は本当に孤独で苦しくて、キャンパスライフの記憶がほとんどないんですよ。「あいつらと遊んだな〜」みたいな思い出も一つもないし。今日ものすごく久しぶりに早稲田の街に来ましたが、特に感慨もなかった(笑)。
寺嶋
私は「100キロハイク」(※公認サークル「早稲田精神昂揚会」主催のウオーキングイベント)が本当にやりたかったです。卒業してから読んだ朝井リョウさんの『時をかけるゆとり』(文春文庫)というエッセイを読んで、仲間たちと何かをやり遂げる感というか、一晩中一緒に歩くことで生まれる連帯感というか、そういうのにますます憧れました。
箕輪
やばい、そのイベントも初耳です。知らないことが多過ぎる(笑)。
寺嶋
本庄から早稲田までの道のりをひたすら歩くってイベントなんですが、ムダに仮装とかして、すごく楽しそうなんですよ。でも一人だと参加しづらいですよね。

──ぼっちだと居場所に困りませんか? 自分も孤独に過ごしていたタイプなので、空き時間とかどこにいればいいか、いつも困ってました。

箕輪
分かります。私は主に図書館が居場所でしたね。文学部の図書館にもよくいたし、中央図書館にも通ってました。早稲田の図書館って地下の研究書庫が閉架式になってるじゃないですか。棚が動かせるやつ。あれを動かすのが好きだったんですよ。
寺嶋
私もめっちゃ動かしてました! あれを見たとき「大学生になったんだな〜」って妙な実感があって。あとは文カフェのカウンター席にもよく座ってました。あそこは通称“ぼっち席”と呼ばれていて、鏡に映し出された自分と向き合いながらご飯を食べるという苦行みたいな場所だったんですが(笑)。
箕輪
あとは、22号館の24時間開いてるコンピュータルームにもよく通ってました。私が在学していた90年代末〜2000年代初頭というのはちょうどインターネットが盛り上がり始めていた時期で、家にパソコンがなかったので、しょっちゅうあそこでネットを見てたなあ。
寺嶋
あそこ、ぼっちには最高の場所ですよね(笑)。あと、私はどこの時間にどこの教室が空いてるかを独自に調べ、空き時間の居場所にしてました。課題をやったり、居眠りしたり。穴八幡神社のベンチにもよく行ったな〜。でも……

──そういう場所に先客がいると死にたくなりますよね(笑)。

寺嶋
そうそう! 仲良しグループみたいな人たちに占拠されてると「もう無理……」って気持ちになります。
箕輪
目当ての場所がダメだと、もうどこ行っていいか分からなくなる。

──ぼっちの人たちが居場所にしているところって似てるのかもしれませんね

寺嶋
ぼっちが集まりがちな場所のマップとか、ぼっちのマッチングアプリとか、誰か作ってくれませんかね。
箕輪
図書館の地下で棚を動かしてる人に声を掛ければ、案外友達になれたかもしれないなあ(笑)。
プロフィール
箕輪はるか(みのわ・はるか)
1980年東京都生まれ。お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年、早稲田大学第二文学部卒業。吉本総合芸能学院(NSC)東京校出身。2003年に近藤春菜とお笑いコンビ「ハリセンボン」を結成。趣味はサッカーとけんだま。特技はバドミントン(東京都の中学校の大会で団体16位)。バラエティ、舞台、声優、CMなど幅広く活躍中。
寺嶋由芙(てらしま・ゆふ)
1991年千葉県生まれ。ソロアイドル。2014年3月、早稲田大学文学部 日本語日本文学コース専攻を卒業(中学校教諭ならびに高等学校教諭一種免許状[国語]取得)。 大好きな「アイドル」そして「ゆるキャラ」を繋ぐ「ゆるドル」として「ゆるキャラ®グランプリ」をはじめ、各種キャラクターイベントにMCやゆるキャラ通訳としても出演中。
清田隆之(きよた・たかゆき)
1980年東京都生まれ。文筆業。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。2005年、早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中に桃山商事を立ち上げ、これまで1000人以上の悩み相談に耳を傾ける。新刊に早稲田大学文学学術院で助教を務めるトミヤマユキコさん(2003年法学部卒、2012年文学研究科博士後期課程満期退学)との共著『大学1年生の歩き方』(左右社)がある。
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