Waseda Weekly早稲田ウィークリー

「リア充VSぼっち」を乗り越えて 寺嶋由芙×箕輪はるか(ハリセンボン)対談 <後編>

“ぼっち”出身の二人がお笑い&アイドルを志した理由とは

学生時代はともに“ぼっち”で過ごすことが多かったという寺嶋由芙さん(2014年文学部卒)と箕輪はるかさん(2003年第二文学部卒)。前編では、そんなお二人のキャンパスライフに関する話題で盛り上がりました。後編では学生時代の思い出を飛び越え、コンビやグループと友達はどう違うのか、現在の友達付き合いはどうなのかなど、さまざまなお話を伺いました。聞き手は前回に引き続き、3月末に新入生の指南書『大学1年生の歩き方』(左右社)を上梓したばかりのライター・清田隆之さん(2005年第一文学部卒、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)です。

左から、寺嶋由芙さん、箕輪はるか(ハリセンボン)さん

──大学では“ぼっち”を経験したお二人ですが、その一方で芸人&アイドルの道を歩まれるわけで…ギャップも大きかったのでは?

箕輪
確かに、私に至っては完全に真逆の世界ですもんね(笑)。でも、お笑いの道に進もうと思ったのは、大学時代に一人も友達ができなかったからなんですよ。
寺嶋
そうなんですか!?
箕輪
孤独に過ごした大学の4年間があまりに苦しくて、そこから脱したいという気持ちで吉本の養成所(NSC東京)に入りました。

──以前、縁あってNSCの授業を見学させていただいたことがあるんですが、ものすごい空気だった記憶が…。

箕輪
軍隊みたいな(笑)。いきなり全寮制の学校に入っちゃったような感覚は確かにありました。でも私にはもう後がなかったし、「ここで駄目だったら入学金の40万円が無駄になる!」という気持ちで通いました。
寺嶋
放任主義の大学とは真逆の世界ですね…。
箕輪
そうですね。でも、私にとっては意外と過ごしやすかったんですよ。大学時代は何をしたらいいか分からなかったけど、養成所ではルールに従っていれば集団に属している感じが味わえたし、お笑いをやりたいという気持ちがあったから、全然苦痛じゃなかったんです。まあ、もう一回行けと言われたらイヤですけど(笑)。
寺嶋
私は学生生活とアイドル活動を並行してやっていたので、いろいろ難しいことも多かったです。大学2年以降はアイドル活動が忙しくなり、学校には単位を取るために通う感じになってしまい、友達との交流はなかなか持てませんでした。
箕輪
仕事と学業を両立していたなんてすごいですね。
寺嶋
自分としては真剣にやっていたんですが…世間的には趣味や遊びの活動に思われてやしないかって、勝手に気にしちゃって。特に就職活動が始まってからの時期などは、友達の就活トークに入っていけず、疎外感もありました。
箕輪
周りと話が合わないのはつらいですね…。
寺嶋
一応ゼミにも所属はしていたんですが、席が隣の子とちょっと話すくらいで、交流は少なかったですね。だから、みんな私のことを覚えていないと思う。知らない間に同窓会とか開催されてたらどうしよう(笑)。
相方やアイドル仲間は友達とどう違うのか?

──お二人には相方や同じ世界の仲間がいらっしゃると思いますが、友達とはまた違った存在なのでしょうか?

箕輪
相方と友達はやっぱり違いますね。家族以上にずっと一緒にいますが、一緒に遊んだりはしないし、プライベートはばらばらです。春菜(「ハリセンボン」の相方・近藤春菜さん)が誰と遊んでるか、何をしてるか、全然知らない。相方が誰かと話しているのに聞き耳を立て、「へ〜、そんな飲み会やってるんだ」って知る感じです(笑)。
寺嶋
私も同感です。やはり友達って感じとはちょっと違う。他の人は違うかもしれませんが、私はアイドルが好きでこのお仕事を志したので、アイドルのプライベートな顔を見たくないし、私も見られたくないって思いがありまして…。たまに「仲良くなりたい!」って思っていたアイドルの子とLINEを交換させてもらう機会もあるんですが、うれしいんだけど困るというか。一応交換して、「由芙です」ってあいさつしてスタンプを送るものの…それでいつも終わってしまう(笑)。そこからどうすればいいのか分かりません。
箕輪
なんか分かるような気がする。
寺嶋
芸人さん同士だといかがですか?
箕輪
同業者との付き合いはほとんどいないですね。たまに「たんぽぽ」の川村(エミコ)さんとご飯に行くくらいです。川村さんは自分と近いものがあるなって、勝手に親しみを感じてます(笑)。春菜は私と真逆で、仲良しの先輩や後輩がたくさんいます。コンビって不思議と正反対の方向になるんですよ。例えば服装とかも私がチェックのシャツを着てたら相方はチェックを全然着なくなったし、私は暗い性格だけど春菜は社交的ですよね。
寺嶋
バランスを取ろうとするんですかね?
箕輪
そうかもしれません。実は春菜も出会った頃は暗い性格だったんですよ。だけど、私が暗いジャンルを取っちゃったから、相方は明るくせざるを得ない感じになったのかも。不思議な関係ですよね。春菜はチェックのシャツを全部捨てたみたいですし(笑)。

──ハリセンボンは友達っぽい雰囲気もありますが…それは意外でした。

箕輪
仲が悪いとかでは全然ないんですけどね。実際、気にはなるんですよ。相方が他の人と仲良くしてるとちょっとジェラシーを感じることもありますし。でもあらためて面と向かい合うのも気恥ずかしいというか…。前に雑誌のインタビューを一緒に受けたとき、「将来の目標はありますか?」って聞かれて、相方が「現状維持です」って答えていたときはうれしかったですね。私もまったく同じだったので(笑)。
寺嶋
分かります! 一緒にインタビューを受けたときって、仲間の気持ちや意外な一面を知れて面白いですよね。私もグループ活動を経験していましたが、コンビと違ってグループというのは自分で仲間を選ぶわけではないので、集められたメンバーで目標に向かって切磋琢磨(せっさたくま)していくという感じでした。
「みんなと仲良くしなくてもいい」リア充VSぼっちを乗り越えるために

──となると、お二人とも芸能界ではあまり友達付き合いはされてないという感じでしょうか。

箕輪
学生時代と変わってないですね(笑)。でも、芸人になって、みんなに知ってもらえるようになって、人に対して心を開けるようにはなりました。昔は暗い性格や前歯のことがコンプレックスだったけど、自分から笑いにできるようになって、相手も面白がっていいんだって思ってくれて、人との距離が縮まりやすくなったような気がします。
寺嶋
私は高校までの友達と仲が良くて、落ち込んだり、腹を立てたりしたときは、みんなに話を聞いてもらっています。だから私の友達関係は少数精鋭って感じですね。彼女たちはライブとかにはほとんど来ませんが、プライベートな面では頼り切っているので、みんなホント長生きしてねって思います(笑)。

──でも、自分なりの距離感の取り方を身に付けたり、少数精鋭の仲間を大事にしたりするほうが、このコミュニケーション過多の時代にはむしろ大事なことかもしれませんね。大学生の中にはLINEなどのSNSに縛られてしんどい思いをしている人も多いので…。

箕輪
返事したりするの、大変ですもんね…。いろんなグループに属してると、均等に仲良くしなきゃとか、気を配ることも多そう。
寺嶋
SNSの話題とか追い掛けてないと、「えっ、あのニュース知らないの?」みたいなことも起こりそうですよね。
箕輪
でも、別にみんなと仲良くしようとしなくたっていいと思うんですよ。SNSを気にするよりも、その場で目の前にいる人と楽しく話せたら、それで十分というか。
寺嶋
そうですよね。私も少数精鋭の友達がセーフティーネットになっていて、そこがあるから、他のコミュニティーではいい距離を保って接することができているような気がします。

──そう考えると、いわゆる「リア充」に見られる人も、華やかそうに見えて実はしんどい…ということがあるのかもしれませんね。

箕輪
確かに。「頑張ってコミュニケーション取るぞ!」みたいに、その人なりの努力してる可能性もありますもんね。どうやったら頑張れるのか、教えてほしい気もしますけど(笑)。

──前に取材した大学生は、バラエティー番組で活躍する芸人さんたちを見てコミュニケーションの勉強をしていると言っていました。

箕輪
なるほど…。たまに見掛けますもんね、「…からの〜?」みたいな無茶振りをして相手をスベらせる人とか(笑)。振ったりイジったりすること自体が楽しいのかもしれませんが、そういうノリを見ると、ちょっと怖いなって感じます。芸人同士は振られたときの怖さを知ってるので、ウケて相手が得するという確信がない限り、とてもじゃないけど無茶振りなんてできない。だから、無茶振りされて面白く切り返せなかった人がいても、それは振った側が悪いんだよ、ってことをぜひお伝えしたいです!

──プロの芸人さんがそう言ってくれると心強いです! 日常の会話なんだから、肩の力を抜いて楽しみたいものですよね。

寺嶋
そうですよね。私もお仕事の場だといろんな人と楽しく接することができるんですが、それはおそらく、自然とスイッチが入ってるからだと思う。それを普段の生活から続けているとなると、結構しんどいかも…。「リア充」という言葉が示すように、ぼっち側がひがみを込めて敵対心を持ってしまいがちだけど、もしかしたら共有できる悩みも多いのかもしれませんね。
箕輪
大学って、いろんな人がいるから面白い場になってるわけですもんね。一人でいる人もいれば、友達がいっぱいいる人もいる。うまく接点が持てるといいですよね。
寺嶋
「リア充VSぼっち」って対立したいわけじゃないですもんね。わいわいしたテンションが合わないと思うから一人でいるだけだし、逆にみんなといるほうが楽しいという人はそうしているだけ。それぞれの選択を尊重しながらやっていけたらいいですよね。
箕輪
もしも「リア充にならなきゃ」って無理してる人には、図書館の棚を動かす喜びを教えてあげたいです(笑)。
プロフィール
箕輪はるか(みのわ・はるか)
1980年東京都生まれ。お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年、早稲田大学第二文学部卒業。吉本総合芸能学院(NSC)東京校出身。2003年に近藤春菜とお笑いコンビ「ハリセンボン」を結成。趣味はサッカーとけんだま。特技はバドミントン(東京都の中学校の大会で団体16位)。バラエティー、舞台、声優、CMなど幅広く活躍中。
寺嶋由芙(てらしま・ゆふ)
1991年千葉県生まれ。ソロアイドル。2014年3月、早稲田大学文学部 日本語日本文学コース専攻を卒業(中学校教諭ならびに高等学校教諭一種免許状[国語]取得)。大好きな「アイドル」そして「ゆるキャラ」を繋ぐ「ゆるドル」として「ゆるキャラ®グランプリ」をはじめ、各種キャラクターイベントにMCやゆるキャラ通訳としても出演中。
清田隆之(きよた・たかゆき)
1980年東京都生まれ。文筆業。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。2005年、早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中に桃山商事を立ち上げ、これまで1000人以上の悩み相談に耳を傾ける。新刊に早稲田大学文学学術院で助教を務めるトミヤマユキコさん(2003年法学部卒、2012年文学研究科博士後期課程満期退学)との共著『大学1年生の歩き方』(左右社)がある。
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