日本における産業部門のカーボンニュートラル技術Carbon Capture Utilization and Storageの将来的役割
(3月7日)
主催
早稲田大学高等研究所
共催
早稲田大学環境経済・経営研究所
早稲田大学現代政治経済研究所 エネルギーの経済学部会
登壇者
川井 英司(千代田化工建設株式会社)
2006年千代田化工建設(株)入社し、石油・石化・新エネルギープロセス設計部配属され、プロセスエンジニア及びプロジェクトリーダーとして、国内・海外案件のEPCや開発案件に従事。2019年から2年間社費留学の為休職。テキサス大学オースティン校でmultidisciplinary program, Energy and Earth Resourcesの修士課程を取得。2021年帰国後は事業創造部に籍を移し、P2X (Power To X), EaaS(Energy as a Service), VPP(Virtual Power Plant)の開拓・開発業務に携わる。
司会者
日時
2022年3月7日(月)15:00 – 16:00
会場
ハイブリッド形式の予定(対面 + Zoom Webinar)
開催言語
日本語
概要
捕集・回収したCO2を水素と化学反応で別の燃料・化学製品等に変換するCCU(Carbon Capture and Utilization)は、究極のカーボンニュートラル技術として注目されている。2020年、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指す事を宣言した。我が国のエネルギー起源のCO2排出量は85%で、その殆どが輸入による化石燃料の燃焼に寄るものであり、2019年度は10.7億トンのCO2を排出している。日本では鉄鋼や化学製品の製造に必要な化石燃料の90%以上を海外から輸入している。このように、化石燃料資源から製造される既存の化学製品を直ぐに電化して置き換えることは、日本の産業におけるCCU技術の適用性と経済性から、困難である。本研究では、どの程度困難であるのか、という部分に焦点を当てた。具体的には、MARKET ALlocation(MARKAL)を用いて、化学コンビナートでのナフサ分解や製油所での芳香族化によるエチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基本的な石油化学製品に焦点を当てた、化学製品を製造するCCU技術を含むモデルとした。このモデルでは、CO2排出規制、CCUのCAPEX/OPEX、一次エネルギー輸入価格、水素価格、乗用車の年間成長率など、様々なパラメータのシナリオを設定して、政策、技術、システムコストを検討している。ベースケースの結果では、2050年に2013年比で80%のCO2削減を達成するためには、約18%のCCU普及率が必要であることがわかった。本研究でのCCU普及率の定義としては、CCUに必要なエネルギー活動の総量を石油化学産業に必要なエネルギー活動の総量で割ったペタジュールの割合としている。また、シナリオ分析では、どのような要因が、どの程度、CCU普及率に影響するかを明らかにしている。炭素税については、2050年のCO2削減量の80%を満たすために、400ドル/トン-CO2から700ドル/トン-CO2まで必要であると算出される。以上、本研究にて検討した各ナリオ結果から、既設設備と比べCCUが経済的に選択されるには、どのシナリオが良いか、また炭素税がどの程度必要である事が定量的に確認する事が出来た。一方で、炭素税は年間GDPの数パーセントの損失を引き起こす可能性があるため、日本は炭素価格の負担目標値や目標年数を柔軟に設定していく事も考えていかなければならない。
対象者
大学院生、教員、一般
申込方法
セミナーに参加ご希望の方は、件名を「Mar. 7th WIAS Sustainability Seminar」としてお名前、ご所属、参加形態希望(対面・ZOOM)を記載の上、3月3日(水)までに rieem.waseda〔at〕gmail.com までメールをお送りください。セミナー前日までに詳細を連絡いたします。なお、教室定員などによりZOOMでの参加をお願いすることもございます。予めご了承ください。