WIAS Top Runners’ Lecture Collection :
「微小系の熱機関」 （11/25）
講演者 / Speaker
渡辺 元太郎 （浙江大学 教授）
日 時 / Date & Time
2019年11月25日（月） 10:00～16:30
会 場 / Venue
早稲田大学 西早稲田キャンパス 55号館 N棟 1階 第二会議室
主 旨 / Outline
「微小系の熱機関」
熱機関とは、熱エネルギーから力学的な仕事を継続的に取り出すための装置である。長年に亘る技術の発達により、その小型化が可能となり、殊に近年は原子分子レベルでの実験技術の進展によって、一つの粒子（[1], [2] 及びその参考文献）、一つの分子 [3] ひいては一つの原子 [4] を作業物質として用いた熱機関が実現されるに至った。このような微小系においては、熱力学量の平均値のみならず揺らぎも無視できないばかりか、系の量子性も重要となり得るであろう。巨視的な系の熱機関の性質は、熱力学によって良く記述されるが、微小な系、しかも量子性が顕著な系を用いた熱機関の性質は果たしてどうであろうか？微小系の熱機関の性質は、熱力学による予言と無矛盾であろうか？このような基本的な問いに動機付けられた微小系の熱機関の研究は、近年活発な研究が成されている微小系の熱力学及び量子熱力学において重要な一角を占めるものである。
本講演では、微小系における温度や熱力学的操作とは何かといった微小系の熱力学の基本的な事柄から始めて、過去約10年間に成された微小系の熱機関の実験のうち幾つか代表的なものを概説したのち、講演者の最近の研究を紹介する。具体的には、単一量子熱機関について多数回に亘るサイクルで外部系に取り出される仕事量の増大 [5]、あるいはそれぞれの熱機関そのものが同種粒子から成る場合の、多数個の量子熱機関の集団による外部系に取り出される仕事量の増大についての研究 [6] 等を予定している。
参考文献
[1] V. Blickle and C. Bechinger, Nat. Phys. 8, 143 (2012).
[2] I. A. Martinez, E. Roldan, L. Dinis, and R. A. Rica, Soft Matter 13, 22 (2017).
[3] T. Hugel et al., Science 296, 1103 (2002).
[4] J. Rossnagel et al., Science 352, 325 (2016).
[5] GW, B. P. Venkatesh, P. Talkner, and A. del Campo, Phys. Rev. Lett. 118, 050601 (2017).
[6] GW, B. P. Venkatesh, P. Talkner, M.-J. Hwang, and A. del Campo, arXiv:1904.07811.
プログラム / Schedule
10:00-11:30 講義 1
11:30-13:00 （昼休憩）
13:00-14:30 講義 2
14:30-15:00 （コーヒーブレーク）
15:00-16:30 講義 3
コーディネーター / Coordinator
内野 瞬 （早稲田大学 高等研究所 講師）
対 象 / Prospected Audience
教職員・大学院生・学部生等
主 催 / Organizer
早稲田大学 高等研究所
申込み / Registration
事前申込み不要です。直接会場にお越しください。
