高等研究所セミナーシリーズ
【グローバル・ヒストリー研究の新たな視角】公開講演会:
「近代日本と中東・イスラーム圏:ヒト・モノ・情報の交錯から見る」(2/18)
趣旨
本セミナーでは、幕末から昭和戦中期にかけての約80年間に、日本と中東・イスラーム圏(中東を中心とする世界各地のムスリム・コミュニティやイスラーム文化圏)のあいだで紡がれた多様な関係を考察する。宇山・小野報告は、1919年1月にウラジオストク派遣軍政務部を訪れたあるカザフ知識人の要請書を出発点として、アラシュ・オルダなどロシア革命後におけるテュルク系ムスリムの自治運動の展開や同時期の北東アジア、新疆に対する日本の関心を読み解く。モハッラミプール報告は、古美術商が1920年代に日本国内で開催した展覧会を丹念に整理し、陶器・染織品・細密画などのペルシア美術工芸品に付されたイメージの変遷をたどる。これらの具体例を通じて、近代日本と中東・イスラーム圏の政治・経済・文化的交流史をグローバル・ヒストリーの文脈に位置づけるとともに、日本人の異文化理解のあり方を再考したい。
登壇者
宇山 智彦(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授)
専門は中央アジア近代史・現代政治、比較帝国史。1996年東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退、2006年より現職。編著書に『ロシア革命とソ連の世紀5 越境する革命と民族』(岩波書店、2017年)、『ユーラシア近代帝国と現代世界』(ミネルヴァ書房、2016年)、Asiatic Russia: Imperial Power in Regional and International Contexts (London: Routledge, 2011)など。カザフスタン、アメリカ、ロシアなどでも多くの論文を発表している。
小野 亮介(早稲田大学人間総合研究センター 招聘研究員)
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。20世紀前半から半ばにかけて中央ユーラシアからヨーロッパ、中東、極東へ流出したテュルク系の亡命者、移民らを研究対象としている。近年の業績として『「亡国の越境者」の100年 』(風響社、2020年、共著)、Emigrants/Muhacir from Xinjiang to Middle East during 1940-60s (ILCAA, TUFS、2019年、共編著)、Yaña Milli Yul (1928-1939) のオンライン目録(https://sites.google.com/view/yanamilliyul/)などがある。
澤田 次郎(拓殖大学政経学部 教授、同大学院地方政治行政研究科 教授、同大学国際日本文化研究所 所長)
慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。専門は近代日本政治史、近代日本政治思想史。主著に『近代日本人のアメリカ観─日露戦争以後を中心に─』(慶應義塾大学出版会、1999年)、『徳富蘇峰とアメリカ』(慶應義塾大学出版会制作・発売、拓殖大学発行、2011年)。とくに中央アジア、イスラーム圏に関する論文として「アフガニスタンをめぐる日本の諜報工作活動─1934-1945年を中心に─」『拓殖大学論集 政治・経済・法律研究』22巻1号(2019年10月)、「福島安正のユーラシア大陸旅行─1880年代から90年代を中心として─」『拓殖大学国際日本文化研究』第4号(2021年3月)、「1930年代の新疆をめぐる日本の情報活動」『拓殖大学論集 政治・経済・法律研究』25巻1号(2022年10月)がある。
ザヘラ・モハッラミプール Zahra Moharramipour(東京大学大学院総合文化研究科 博士課程)
専門は比較文学比較文化。主著に「1920年代日本の美術商とペルシア美術工芸品の展覧会」小野亮介・海野典子編『近代日本と中東・イスラーム圏』(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2022年)、「戦前日本の美術界における「東洋」概念の拡張――黒板勝美のペルシア旅行と東京帝室博物館の古美術陳列」『日本中東学会年報』第37巻1号(2021年)など。
桑原 夏子(早稲田大学高等研究所 講師)
フィレンツェ大学にて博士号(美術史)取得(2018年)。マックス・プランク美術史研究所サマースクール研究員(2014年)、ロベルト・ロンギ美術史研究財団フェロー(2016年ー2017年)、オランダ大学機関美術史研究所ポストドクトラル・フェロー(2019年)、日本学術振興会特別研究員(2019年ー2022年)を経て、現在、早稲田大学高等研究所にて専任講師を務める。専門は西洋美術史で、地中海圏における聖母マリアの晩年伝図像についての研究を行う。
日 時
2023年2月18日(土)14:00~17:30
会場&申込み
早稲田大学早稲田キャンパス19号館 7階 712号教室
開催方式:対面/オンライン(Zoom)のハイフレックス
会場参加:
※会場参加を希望される方は、1月31日(火)までに下記URLからご登録をお願いいたします。教室の収容人数に限りがあるため、先着順とさせていただきます。登録者数が上限に達した場合は、期日より前に募集を締め切らせていただく場合がございます。会場参加を希望される方は、早めにご登録いただけますと幸いです。
https://forms.gle/reZuBA9eTjvtLFxBA
オンライン参加:
要事前登録: こちらよりお申込み下さい。
プログラム
14:00~14:10 開会挨拶(海野典子)
14:10~15:30 セッション1 「近代日本と中央アジア」
講演①「カザフ自治政府アラシュ・オルダの日本政府への承認・援助要請(1919年):旧ロシア帝国空間での民族運動の三面戦略」(宇山智彦)
講演②「マルセコフ要請書の前提としての新疆軍事派遣団」(小野亮介)
コメント(澤田次郎)
フロアとの質疑応答
15:30~15:50 休憩
15:50~17:00 セッション2 「近代日本とペルシア文化」
講演③「ペルシア美術は「東洋」美術か――1920年代日本の美術商とペルシア美術工芸品の展覧会」(ザヘラ・モハッラミプール)
コメント(桑原夏子)
フロアとの質疑応答
17:00~17:10 休憩
17:10~17:30 全体討論
司 会
海野 典子(早稲田大学高等研究所 講師)
MORRIS, James Harry(早稲田大学高等研究所 講師)
対 象
大学院生、教員、一般
主 催
早稲田大学 高等研究所
共催
早稲田大学中央ユーラシア歴史文化研究所
ポスター