「実物に触れることが大切」と會津名誉教授が私財を費やして古美術品を収集
會津八一記念博物館助手 徳泉 さち(とくいずみ・さち)
早大正門から緩やかなスロープを少し登ると左手に、鮮やかな青いバナーが掛けられた會津八一記念博物館が見えてきます。
当館に名を冠する會津八一(1881~1956)は、早稲田大学名誉教授であり美術史家、書家、歌人としても知られています。會津は美術史を研究するには実物に触れることが何よりも大切だ、と強く提唱しました。そのために私財をはたき古美術品の収集に奔走し、これらは教育・研究のための資料として受け継がれてきました。この會津八一コレクションが当館収蔵品の柱となっています。それ以外にも考古学の発掘資料や民族資料、近現代の美術作品などの寄贈を受け、現在では2万点を超える収蔵品を擁しています。
皆さんは、會津八一記念博物館に来たことがありますか? 館内に入ると、外の喧騒(けんそう)とは別世界のような静かな空間が広がっています。当館は築90年を超える伝統ある建物で、内装の随所に凝った意匠が施されています。美しい6本の柱が並ぶ1階のロビーから続く大階段には、横山大観と下村観山の手による日本画の大作「明暗」が飾られています(限定公開)。2階には常設展示室、1階には企画展示室と富岡重憲コレクション展示室があり、随時テーマに沿った作品が展示されています(詳しくは当館Webサイトの「ニュース」を御覧ください)。
會津八一記念博物館は、早稲田大学に蓄積された文化遺産の宝庫です。日々の勉強や研究に、または精神的に行き詰まったときなどに、ぜひ当館に足をお運びください。長い時を経てきた美術作品や考古遺物とじっと向かい合うことで、何かしら問題解決のヒントを得られるかもしれません。当館が豊かな時間と空間を提供する場となればとてもうれしいです。