Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早大生リポート

13歳染五郎の『ハムレット』 留学生が感じた歌舞伎役者の演技力

早稲田大学演劇博物館の開館90周年を記念した企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」(8月5日まで)に合わせて5月25日、早稲田キャンパスの大隈記念講堂小講堂にて歌舞伎俳優の十代目松本幸四郎さんと八代目市川染五郎さんによるシェイクスピア作品の朗読劇「染五郎13歳、ハムレットを読む」が行われました。演劇博物館創設者である坪内逍遙の誕生日(5月22日)前後に毎年開催している「逍遙祭」の一環として行われた公演で、逍遙訳を中心とした『ハムレット』の一部が上演されました。朗読のみにも関わらず、歌舞伎役者の演技力が遺憾なく発揮された公演について、早稲田ウィークリーリポーターの国際教養学部4年、レイチェル・シャーマンさんが伝えます。

役柄を演じ分ける、魔法のような力に感銘

早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
国際教養学部 4年 レイチェル・シャーマン

2018年5月よりSJC学生スタッフ。ギターやオカリナ、歌や作曲が趣味。公認音楽サークルに所属。

皆さんは「歌舞伎」について、どれだけご存じですか? 17世紀に生まれた日本古来の芸能で、その演技や舞台美術は日本だけでなく、海外の芸術にも影響を与えてきました。歌舞伎は、男性の俳優が女性を含む全ての役柄を演じる日本の伝統芸能です。とてもゆったりとしたダンスのような動きがあったり、「見得」と呼ばれる静止したポーズをとったり、人間や動物の特徴を捉えて表現します。現代の歌舞伎が持つ大きな特徴が血縁です。主要なキャラクターを演じる俳優は歌舞伎の一家に生まれ、幼少時より父による訓練を受けています。役者が生まれたときからずっと、その成長や活躍を見続けられるので、観客は役者に親近感を抱きます。これが日本で歌舞伎が人気となっている理由の一つだと思います。

私は幸運なことに、人気歌舞伎俳優の十代目松本幸四郎さんと、彼の長男である13歳の八代目市川染五郎さんが『ハムレット』の一部を読む朗読劇を見ることができました。歌舞伎について詳しくはありませんが、パントマイムに興味を持っている私は、歌舞伎役者が朗読だけで臨場感を生み出す演技に、とても魅力を感じました。難しい日本語のため、理解できなかった部分が多くありましたが、印象に残ったことを少しでも伝えたいと思います。

親子で共演した松本幸四郎さん(右)と市川染五郎さん

ハムレットが死に際で、自分の父が決闘で殺した男の王子であるフォーティンブラスにデンマーク王の座を譲ることを告げるシーン。大人の男性の声が、講堂全体に響きました。私は無邪気な13歳の少年である染五郎さんが凜とした姿勢で、役柄が持つ人格、カリスマ、権力、そして威圧的な権威を込めてフォーティンブラスの声を発したことにショックを受けました。声を聞いた瞬間、ステージ上で別の人が演じているのではないかと思った私にとって、信じがたい光景でした。

しかし、自分の目、耳で確認した通り、紛れもなくそれは目の前の少年の声でした。ハムレットを演じていた染五郎さんがフォーティンブラスも演じていたのです。一体、その別人の声はどこから来たのか。染五郎さんの才能に驚きました。そして、すぐにハムレットに変身すると、今度は13歳の少年らしい声で語り始めました。純粋で無邪気で正直で頼りなさげな、自分自身であるかのような青年の声色を発したのです。染五郎さんが自分自身の魂を表現しているかのように感じました。

朗読劇が終わった後はトークショーが行われたのですが、私はなぜ観客の多くが女性だったのか、すぐに分かりました。“美形歌舞伎役者”として知られる染五郎さんは、そのぎこちなさ、シャイな立ち振る舞い、かわいらしさなどが、より一層彼の魅力を引き立てているのだと感じました。“二枚目”で知られる父・幸四郎さんが、染五郎さんを見守るようにトークショーに同席している姿を見るのは楽しかったです。

トークショーの様子

染五郎さんの好きな教科は歴史と数学で、趣味はゲーム。ゲームはプログラミングもするそうです。歌舞伎一家に生まれたとしても、一流の役者になるまではまだまだ遠い道のりだそうです。しかし、私は複数の役柄を演じ分ける、歌舞伎俳優が持つ魔法のような力に感銘を受けました。幸四郎さんと染五郎さんという親子のおかげで、歌舞伎に興味を持ちました。初めての朗読劇で見せた若い染五郎さんの才能は、歌舞伎役者としての明るい未来を約束しているように思います。今後の染五郎さんの活躍を願っています。

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