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総登録者数180万人! 「作業用動画」で人気を集める中国出身クリエーター

「自分の趣味を生かし、机に向かう人の力になりたい」

大学院文学研究科 修士課程 3年 鮑 康平(ほう・こうへい)

戸山キャンパス33号館1階・辻普堂の陶彫の前にて。YouTubeよりチャンネル登録者数10万人達成で贈られる銀の盾と、100万人達成で贈られる金の盾を持って

中国出身で文学研究科に所属する鮑さんは、登録者数127万人・総再生回数2億回・世界100ヵ国以上で視聴されているYouTubeチャンネル「Abao in Tokyo」で、#Study With Meという集中力を高める作業用動画を発信しています。サブチャンネルも含めた総フォロワー数は180万人! 今では動画の一つのジャンルとして確立している#Study With Meを、2020年から世の中に先駆けて発信してきた鮑さんに、日本に留学したきっかけや動画制作へのこだわり、今後の展望などを聞きました。

――早稲田大学に進学した経緯を教えてください。

シカゴ美術館附属美術大学在学時の作品。ファインアート(実用的な機能を持たない純粋芸術)を学ぶ学科に所属していた

私は北京の高校を卒業後、芸術家を目指してアメリカのシカゴ美術館附属美術大学(School of the Art Institute of Chicago)に進学しました。そこで美術史の授業を受けたことで、東アジアの美術史に興味が湧いたのですが、アメリカの教科書では中国・韓国・日本の3カ国の美術史が最後の一章にまとめられていました。そこで、東洋の美をより深く学び、その価値をもっと世界に伝えたいと思い、より東洋美術の研究に適した環境を探す中で、仏教美術や絵画史の分野に強い早稲田大学に魅力を感じ、日本へ留学することを決めました。その後日本語学校に通いながら受験勉強に取り組み、文学部に入学し、現在は文学研究科で『南詔図伝』という私の故郷・中国雲南省発祥の絵巻物について研究しています。

写真左:学部時代、肥田路美教授のゼミでの写真。左端が鮑さん
写真右:早稲田大学古美術研究会(公認サークル)の仲間たちと学部卒業式での一枚。右端が鮑さん

――#Study With Meとはどのような動画ですか? また、YouTubeチャンネルを開設したきっかけは何だったのでしょうか?

#Study With Meは、画面の向こう側で誰かと一緒に机に向かっているような感覚になれる動画ジャンルです。長時間作業の集中力を高めるために、勉強や作業中にBGMとして動画を流す人が多く、落ち着く音楽や環境音とともにデスクの風景や美しい景観を映しています。もともと動画編集が趣味だったのですが、コロナ・パンデミックで家にいる時間が増えたこともあり、「自分の趣味を生かして誰かの役に立つものが作れないかな」と考え、YouTubeやBiliBili(中国の大手動画プラットフォーム)で動画投稿を始めました。最初は現在のような内容ではなく、中国在住で日本に興味がある人や日本への留学を考えている人向けに、日本語の勉強法や自身の体験談を伝えるコンテンツを作っていました。

私が動画投稿を始めた頃、作業用動画というジャンルは既に存在していたものの、淡々とした勉強風景をただ流すようなものばかりで、今のように凝った背景を使っている動画は少なかったんです。そこで「自分ならもっと良いものが作れるのではないか」と思い立ったのが、#Study With Meの動画を作るようになったきっかけです。

特に反響があった、横浜・みなとみらいの風景で作った動画。2025年9月時点で2,300万回以上再生されている

――動画を作る際はどのような点にこだわっていますか?

ポモドーロ勉強法という、25分の勉強と5分の休憩を1セットとし、これを繰り返すことで長時間集中する手法を取り入れています。私自身、長時間勉強するのが苦手だったのですが、この方法に助けられました。だからこそ、同じように集中が続かない人にも試してもらいたいと思ったんです。

具体的には、25分作業して画面を見ると、タイマーの数字やほのかに変化している空の色などで、学習者が時間の経過を視覚的に認識しやすいようにします。撮影は昼過ぎから夕方や夜にかけて行うことが多く、「日が沈むまで勉強できた」というような達成感を視聴者に感じてもらうことを心掛けているんです。

写真左:動画撮影に使うカメラ機材。ソニーの一眼レフを愛用している
写真右:撮影風景。自室の作業デスクを動画に使うこともある

――動画の風景はどれも美しいものばかりですが、ロケーションはどのように選んでいますか?

私はスタジオジブリや新海誠監督の作品など、日本のアニメ文化と、アニメが描く日本の風景が好きなので、自分の動画を作るときも“映画っぽい美しさ”を意識しています。外国人だからこそ感じるのは、日本の風景には大きな文化的ポテンシャルを秘めているということです。東京の都市景観も、田園を走るローカル鉄道も、日本に住んでいる人は見慣れているかもしれませんが、切り取り方次第では映画のワンシーンのような非日常感を放つのです。

写真左:今まで動画に使った中で気に入っている風景。みなとみらいの高層ビルから、アニメで描かれるような立派な入道雲が見える
写真右:早朝の静岡県熱海市。近日公開予定の動画に使うそう

最近、メインチャンネルに加え、二つのサブチャンネルを開設しました。一つはAbao Ambienceというチャンネルでは、動画にBGMを付けていません。Abao in Tokyoの動画にはミュージシャンに発注したピアノなどの音楽を付けていますが、こちらのコンテンツでは現場のリアルな音が欲しいというニーズに応え、音質と臨場感を重視しています。もう一つは、8K画質に対応するなど映像面にこだわっているAbao Visionです。これらのチャンネルは、細かい需要に応えたいという目的に加え、美しい日本の風景をありのまま切り取りたいという自分のモチベーションで運営しています。おかげさまで開設から半年ほどで登録者数が10万人を超え、さらに多くの人に日本の魅力を届けられるようになりました。

現在世界で広まっている#Study With Meというジャンルは、各々の発信者が美しいと思う風景を共有する場にもなっているんです。世界各地のドラマチックな風景が、作業用動画を媒体としてより多くの人に知られるのは喜ばしいことです。私も「将来に残したい」と感じた日本の風景を切り取り、今後も積極的に発信していきます。

Abao Visionチャンネルの動画。東京の夜景ドライブを8Kという高画質で緻密に切り取り、再生回数は230万回を超えている(2025年9月時点)

――今後の展望を教えてください。

学業面では、中国・雲南地域の仏教美術の研究は今後も突き詰めたいので、博士後期課程への進学を考えています。クリエーターとしては、2024年12月に映像制作会社の株式会社Vaibu (ヴァイブ) を立ち上げ、既存のチャンネルの運営やライセンスの管理を事業として体系化しました。さらに、8K映像やオリジナル音楽を駆使した高品質なコンテンツ制作、撮影・編集の受託など、学びと映像を結ぶ新しいビジネスモデルにも挑戦しています。研究者としてもクリエーターとしても、自分の趣味や特技を最大限に押し出して活躍したいですね。

第907回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 2年 金井 秀鴻

【プロフィール】

学部卒業式には、中国の伝統的な衣装である漢服を着て参加した

中国・雲南省出身。Beijing Huijia Private School卒業。『天気の子』などの新海誠監督の作品が好きで、新宿や渋谷などアニメで描かれる場所にしばしば足を運ぶ。今年飼い始めたコーギーと遊ぶのが最近の癒やし。ちなみに、「Abao」というチャンネル名は、本名「鮑(Bao)」をもじったもの。

YouTube:
@abaointokyo
@abaovision
@AbaoAmbience
Instagram: @abaointokyo
X: @abaointokyo

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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