
左から、萩原選手、佐藤選手。早稲田大学上井草グラウンドにて
大学スポーツの中でも特に大きな注目が集まる伝統の一戦、ラグビー早慶戦・早明戦。今年は11月23日(土・祝)に秩父宮ラグビー場にて慶應義塾大学戦、12月1日(日)に国立競技場にて明治大学戦が行われます。今季11月3日(日)には、宿敵・帝京大学に快勝し、勢いに乗る早稲田大学ラグビー蹴球部。早慶戦・早明戦はますます目が離せない戦いになりそうです。
また、ラグビー蹴球部は2021年、大田尾監督の就任以降「二軸の取り組み」を掲げ、競技に打ち込む傍ら、勉学だけでなく地域貢献の面でもさまざまな取り組みを実施しています。
今回は、2022年度に「早稲田アスリートプログラム(以下、WAP)年間優秀学業成績個人賞(※)」を受賞した萩原選手と、2024年度主将の佐藤選手にインタビューを実施。試合への意気込みから「二軸の取り組み」についてまで、チームの強さの秘密に迫りました。文武両道を掲げながら大学日本一を目指す選手たちを、ぜひ応援しましょう!
(※)全ての体育各部の3年生以下の各学年ごとに、上位10%のGPAを獲得した個人が表彰される
「二軸の取り組み」で生まれる、風通しのいいチームワーク
スポーツ科学部 3年 萩原 武大(はぎわら・たける)
フランカー(FL) 茗溪学園高等学校出身

上井草グラウンドにて。銭湯に行くことが好きで、時には車を出して遠出することもあるそう
――萩原選手はディフェンスとスクラムで力を発揮するフォワードの一角、フランカー(FL)として、今季活躍が続いています。早稲田大学でラグビーがしたいと思ったきっかけは何ですか?
ラグビーを始めた幼少期は筑波大学のグラウンドで練習をしていたので、対抗戦で早稲田大学と筑波大学が戦う姿に自然と憧れを抱いていました。
ただ、中学・高校とラグビーに打ち込みすぎて浪人してしまったので、大学ではラグビーも勉強もしっかり取り組みたいと思って。ラグビーで日本一を狙えて、勉強にも打ち込める環境はどこかといったら早稲田大学だと考え、志望しました。

2024年6月に行われた、関東大学春季大会・帝京大学戦での一枚。相手校選手にタックルしているのが萩原選手(写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
――1年間のブランクを取り戻すのは相当大変だったのでは?
体力やプレー感を戻すことも大変でしたが、高校時代と比べて12キロ近く落ちた体重を戻すことはさらにキツかったです。ラグビーにおいて、特に体をぶつける機会が多いフォワードの人間にとって体重は大切な要素なので、体重がなかなか戻らない時期は厳しかったですね。
ただ、体重を戻す上では、スポーツ科学部の授業で学んだ栄養学の知識が大いに役立ちました。栄養学以外でも、ウエイトトレーニングのやり方、心理学の授業を通して学んだマインドセットの方法など、日々の授業内容はさまざまな面でラグビーでの成長にもつなげることができています。ラグビーではメンタルが勝敗を分けることもあるほど重要なので、卒論でも心理学をテーマにしたいと考えています。

2022年度に「WAP年間優秀学業成績個人賞」を受賞した時の一枚。左から、萩原選手、松永拓実選手(スポーツ科学部4年)、京山秀勇選手(人間科学部・2024年3月卒業)(写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
――学業面では、1年生だった2022年度に「WAP優秀学業成績個人賞」を受賞。ブランクがある中、練習時間も確保しながら学業の時間も調整する上で大変だったことは?
高校時代まで、ラグビーを言い訳に勉強してこなかったことを浪人時代に悔やんだことがあります。その気持ちをモチベーションに、練習で疲れていても授業にしっかり出る、課題をちゃんと締め切りまでに出す、という当たり前のことから始めました。締め切りを忘れないためにもチェックリストを作る、といった小さなことを積み重ねて、なんとか食らいついていった形です。
自分だけでなく、ラグビー部からは毎年「WAP年間優秀学業成績個人賞」の受賞者が出ています。勉強面でも意識の高い選手が多いことからも、部内でいい刺激を受けていると思います。
―― ラグビー以外でも学びを深めて自己成長を目指すことは、ラグビー蹴球部の「二軸の取り組み」として強く打ち出している点です。学業とラグビーの両立以外ではどのような取り組みをしていますか?
例えば、ワセダクラブという小学生のラグビークラブに学生コーチのような立場で参加している部員もいて、いい活動だなと思っています。僕自身、幼少期に筑波大学のグラウンドで筑波大学の選手たちと触れ合えたことから、大学ラグビーへの憧れをずっと持ち続けることができました。ラグビーをやりたいと思う子どもたちの将来につながる活動だと感じています。

上井草グラウンドにて、子どもたちにラグビーを教える様子。写っているのは佐藤隼成選手(法学部1年)(写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
大田尾監督や先輩方からは、「早稲田大学のラグビー部にいる以上、ラグビーだけではダメだ」という話をミーティングなどで何度も聞き、部員一人一人の共通認識になっています。
――「二軸の取り組み」がプレー面でいい影響を生むこともありますか?
「二軸の取り組み」のおかげで他学年とも交流する機会が生まれ、いいコミュニケーションを取れていると感じます。ワセダクラブなど外部での活動に限らず、授業の課題について相談することもできるなど、組織内の仲を深める上で良い影響を生んでいます。
――チームとしては、今季は日本体育大学戦(83-0)、青山学院大学戦(67-0)で連続完封勝利を収め、帝京大学戦(48-17)にも快勝するなど、関東大学ラグビー対抗戦で好成績が続きます。今年のラグビー蹴球部の特徴は何ですか?
プレー面では、昨年よりもディフェンスとスクラムにこだわりを持って、細かいところまで練習でフォーカスできています。特にスクラムは、相手に押されない、という意識だった昨年とは違い、相手を圧倒して押し勝つ意識で取り組むことができています。
プレー以外の部分で感じるのは、組織内の風通しが良いこと。コミュニケーションの意識が高く、先輩・後輩関係なく意見しやすい雰囲気を4年生が作ってくれているうえに、コーチ陣とも対話する回数が増えていて、今まで以上にのびのびと、チーム一丸となって戦えています。

2024年11月3日(日)帝京大学戦にて。トライをした田中健想選手(社会科学部1年)と抱き合う矢崎由高選手(スポーツ科学部2年)、細矢聖樹選手(スポーツ科学部4年)(写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
――今季も、早慶戦、早明戦が近づいています。改めてこの大一番の意義、モチベーションを教えてください。
対抗戦での優勝を目指す上で早慶戦、早明戦はどちらも重要な試合ですし、僕自身、幼い頃から早稲田のラグビーを見てきて、早慶戦、早明戦がいかに特別なものかを知っています。1~2年生の時はメンバー外だったので、今年こそ! という強い思いです。
また、早明戦は国立競技場でプレーできる点でも特別です。普通の大学生では経験ができないことであり、早くそのグラウンドに立ちたい、と思えるほど楽しみです。
その特別な戦いを、ぜひ皆さんにも一緒に楽しんでほしいですし、スクラムで押し込む場面では一緒に盛り上がってもらえたらと思います。僕はスクラムの最後列のどこかにいるはずですので、ぜひ注目してください!
ハートで打ち勝つ! 早慶戦、早明戦も「Beat Up」
スポーツ科学部 4年 佐藤 健次(さとう・けんじ)
主将・フッカー(HO) 桐蔭学園高等学校出身

上井草グラウンドにて。マイブームはカフェ巡りで、チャイラテがお気に入り
――今年のチームカラーは?
自分たちで考え、主体的に取り組むことができているので、ラグビーの質の部分がどんどん良くなっています。具体的には、セットプレーとディフェンスの部分は春シーズンから個々の細かいスキルを高めることができていて、例年に増して自分たちの強みになっています。
自分は日本代表合宿で部を抜けた期間も多かったのですが、戻ってくるとチーム全体にさらに磨きがかかっていて頼もしい限りでした。その上で、ラグビーそのものを楽しめている感覚があることも非常にいいところかなと思います。
――2024年度のチームスローガン「Beat Up」に込めた思いは?
「Beat Up」は、「相手を打ちのめす」「相手をボコボコにする」といった意味の言葉です。早稲田に今まで足りなかったのは、スキルや体格よりも、自分たちのプレーへの自信。そして、本当に負けちゃいけない! というハートの部分。そこをしっかり意識し続けたいと、この言葉を選びました。

2024年9月14日(土)立教大学戦での一枚(写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
――その“負けちゃいけない”早慶戦、早明戦の見どころを教えてください。
当然、どの試合も勝つ意識で試合に臨みますが、早慶戦と早明戦は自分たち選手だけでなく、学校対抗の意識も加わり、勝利への欲求がさらに強くなります。また、大学の友人や校友の皆さんを含め、観客数も普段とは桁違いです。学校として本当に負けられない戦いである、と感じるのが早慶戦、早明戦です。
早慶戦が行われる秩父宮ラグビー場はグラウンドと観客席が非常に近くて、選手と選手のぶつかる音やチーム内の掛け声といった臨場感をたっぷり味わうことができます。
一方、早明戦の舞台は国立競技場です。学生が普段は経験できない大舞台で、いつも以上の力が出せる気になる一戦であり、応援する皆さんにもその大舞台の雰囲気を味わってほしいです。
2023年度の早慶戦(左)・早明戦(右)の様子。約7万人を収容する国立競技場で行われる試合はまさに圧巻(写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
また、早稲田も明治もボールを動かすチームなので、展開も目まぐるしく変わり、見ていて面白いはず。例年「フォワードの明治、バックスの早稲田」と言われていますが、今年の早稲田は前でスクラムを組むフォワード陣の出来にも自信を持っていますので、激しくぶつかり合う姿を見てほしいです。
何よりも、僕ら自身が試合を楽しんでいるはずです。激しくやり合いながらも楽しくプレーしている姿を見てもらえれば、僕たちもうれしい限りです。
取材・文:オグマナオト(2002年第二文学部卒業)
X:@oguman1977
試合スケジュール
【早慶戦】11月23日(土・祝) 14時キックオフ @秩父宮ラグビー場
【早明戦】12月1日(日) 14時キックオフ @国立競技場
ラグビー蹴球部Webサイト:https://www.wasedarugby.com/
X:@waseda_rugby
Instagram:@wasedarugby_1918
【次回フォーカス予告】11月25日(月)公開「ジェンダー・セクシュアリティ特集」