「突き詰めてきた自分たちの強みで勝ち切ることができて、とてもうれしかった」
商学部 4年 柿本 蒼一郎(かきもと・そういちろう)
基幹理工学部 3年 三浦 武佐士(みうら・むさし)

戸山キャンパス 早稲田アリーナ入口にて、日本代表ジャージを身に着けて。(左から)柿本さん、三浦さん
2023年4月に米国・フロリダ州ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内で開催された「ICU世界チアリーディング選手権大会」にCoed Elite(16歳以上、男女混合)部門の日本代表の一員として参加した柿本さんと三浦さん。チームは見事部門として日本初の優勝に輝きました。その過程には、思わぬ形で巡ってきた代表入りへのチャンスや、新技の習得の難しさなど、さまざまな出来事があったそう。そんな2人に、チアリーディングを始めたきっかけや大会での思い出、今後の展望などについて聞きました。
――チアリーディングを始めたきっかけを教えてください。
柿本:率直に言うとキャーキャー言われたかったんです(笑)。僕たちは福岡の同じ高校に通っていたのですが、そこに全国唯一の高校男子チアリーディング部があって、すごいパフォーマンスをしていて。自分もこの一員になりたいと思ってチアリーディングを始めました。
三浦:中学では野球部に所属していて、高校でも続けるつもりでしたが、入学直後に見たチアリーディング部の演技がとても楽しそうだったんです。体験入部したときからすっかりハマって今まで続けています。

2019年に高校時代のチアリーディング部で、2人が大会に出場したときの写真
――早稲田といえば、男子チアリーディングチーム「ショッカーズ」(公認サークル)が有名ですが、それが進学の理由なのでしょうか?
柿本:まさにそうなんです。男子のみで構成される大学チアリーディングチームは全国に4つしかないのですが、その中でショッカーズは一番歴史が長く実績もあり、大きな舞台でパフォーマンスをする機会があるチームでした。高校ではさまざまなチアに取り組んでいたのですが、自分はショッカーズのような「観客に見せるチア」の方が好きで、極めるならここしかないという思いでしたね。晴れて入学後、早稲田祭や単独公演でたくさんの観客の前で演技ができたことはとてもいい思い出です。

大隈記念講堂で開催されたショッカーズ単独公演「SHOCKERS STAGE 2022」でのパフォーマンス(前列右側が柿本さん)
三浦:先輩である柿本さんも進学していましたし、進路選択にあたってやはり早稲田は魅力的でした。入学後はショッカーズに入ることももちろん考えたのですが、高校時代にパンデミックの影響で思うように大会に出られなかった未練もあり、もっと大会に出たいという思いから、結果的には競技チアがメインの一般社団法人「フェニックス」で活動することを選択。現在は主にそこでチアを続けています。
――日本代表を決める選考に参加した経緯を教えてください。
三浦:実は僕たちが選抜された2022年から、代表の選抜方式が変わったんです。それまでは競技チアのクラブチームや学校単位で選抜されていたのですが、国際大会での成績がなかなか振るわなかったため、普段競技チアに専念しているかによらず個人単位で選抜し、新しいオールスターチームを作る方針になりました。
柿本:つまり、ショッカーズで活動していた僕にも日本代表になれるチャンスが巡ってきたんです。選抜されたらチアリーディングの本場・米国で演技を披露できる点にも引かれたので、選考に挑みました。
三浦:大きな大会に出たくて競技メインのチームに所属することを選んだ自分にとっては、世界大会出場を懸けた個人選考というのは、チャレンジするしかない絶好のチャンスでした。
――代表入りを果たしてから苦労したことはありますか?

男子1人が女子1人を持ち上げる、男子のみのチームにはない男女混合の技(写真下が三浦さん)
柿本:ショッカーズは男子のみのチームですが、選抜された日本代表チームは男女混合チームのため、男女混合の技を習得する必要が生じました。ここにきて初めての技を多く習得しなければならず、苦労した思い出があります。
三浦:僕の場合は、日本代表と自分のチームで並行して練習しなければならず、苦戦しましたね。初めての世界大会でプレッシャーを感じながらも、日本代表として新しい技を覚えなきゃ、自分のチームの練習もやらなきゃ、とかなり手一杯で焦っていました。どちらも競技チアとはいえ、チームの編成やメンバーも異なっていたので必死でした。
――練習期間を経て、代表としてICU世界チアリーディング選手権大会に出場。大会期間中のことについて教えてください。
柿本:予選と決勝の2回演技をしたのですが、予選を終えた時点で日本は4位で、世界の壁の高さを感じました。海外の選手は体が大きく、パワフルさや個人の能力で戦ったら負けてしまうんです。決める技の難易度も高く、それを見て不安もありました。
三浦:一方で、自分たちのやってきたことを出し切れば対抗できる部分も予選で見えてきました。チアリーディングは技の難易度だけでなく、完成度も加味して点数が付きます。監督の指導の下、技をそろえることやチームとしての完成度を常に意識して練習していたので、それが日本代表らしさとして表現できれば勝機はあると感じていたんです。そう信じて決勝で演技し、優勝したときには、突き詰めてきた自分たちの強みで勝ち切ることができたと実感が湧いて、最高にうれしかったです。
「ICU世界チアリーディング選手権大会」での演技の様子

授賞式にて
――世界大会ということで、海外の選手との交流はありましたか?
柿本:チアをやっている人なら誰もが憧れる芝生の広場が現地にあるんです。そこで憧れの選手と一緒に技を組んでもらったり、仲良くなった海外の選手とTシャツを交換したりしていました。大会はディズニーワールド内の施設で行われるのですが、閉幕後には、大会関係者だけが参加できるパーク内でのパーティーが開催され、国を超えた思わぬつながりができて面白かったです。
三浦:そこで知り合った人がフェニックスと練習するために来日することもあって、交流が続いています。2023年10月にはトルコやシンガポールの選手と一緒に練習をしました。言語を使ったコミュニケーションが流暢にできなくとも、一緒に技をやることがコミュニケーションになるので、大会のときと同じように今でも楽しんでいます。
写真左:現地でできた台湾の友人にTシャツをプレゼントした柿本さん
写真右:有名な米国代表選手との交流を果たした三浦さん
――二人にとって、チアリーディングの魅力とは?
柿本:個人でだけではなく、みんなで喜びを分かち合えるところですね。他のスポーツだと身体の大きさが有利な場合もありますが、チアリーディングは支える人、上に乗る人、指示出しする人と、それぞれ必要な能力が違うので、どんな人でも活躍できます。
また、信頼できる仲間に出会えることもすごく大きいです。競技の中で5、6メートルの高さから後ろを見ずに落ちるなんて、仲間が必ずキャッチしてくれるという信頼がなければできないことじゃないですか。高校、大学とチアをやってきて、信じ切れる仲間と演技できたのは自分にとってすごくうれしいことだなと思います。
三浦:採点や順位を意識して技の完成度にこだわる選手としても、サッカーのハーフタイムショーなどで観客を沸かせるパフォーマーとしても、両方で活躍できる二面性がチアの魅力で、自分が続けている理由の一つです。
――今後の活動の展望について教えてください。

チアリーマンズの練習風景。スーツでのパフォーマンスが目を引く(写真下が柿本さん)
柿本:2023年4月にショッカーズ出身者で結成された男子チアリーディングチーム「チアリーマンズ」での活動に力を入れたいと思っています。「誰もが何者にでもなれることを証明する」というコンセプトで、今は『アメリカズ・ゴット・タレント』(※2)出場を目指して練習しています。卒業後も社会人生活と両立しながら、チアリーディングの魅力がもっとたくさんの人に伝わるように張り切って活動していきたいと思います。
(※2)米国で放送されている公開オーディションリアリティー番組。さまざまなジャンルのパフォーマーが出場し、世界的に人気がある。
三浦:自分は今年も日本代表選手として世界大会に出場する予定なので、それに向けて練習に励もうと思っています。昨年出場したCoed Elite部門で優勝したことによって、今年は技の最高難度がより高いPremier部門に出場できることになったので、また新しい技に挑戦することになります。海外のチームもハイレベルなパフォーマンスを見せてくると思うので、精いっぱい頑張りたいです。
第864回
取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
文化構想学部 3年 田邊 紗彩
【プロフィール】

取材後、キャンパスでチアの技の一つ「ショルダースタンド」を披露する二人。抜群の安定感!
柿本 蒼一郎:福岡県出身。福岡大学附属大濠高等学校卒業。3年生まで「ショッカーズ」(公認サークル)に所属し、引退後は「チアリーマンズ」の一員として活動中。最近ハマっていることは、チアリーマンズをさらに広めるためのTikTok研究。
チアリーマンズ公式Instagram:@cheer_re_mans
チアリーマンズ公式Tiktok:@cheerremans
三浦 武佐士:福岡県出身。福岡大学附属大濠高等学校卒業。一般社団法人「フェニックス」所属。チアの練習の隙間時間にレポートを執筆するなど、学部の勉強とチアの練習の両立にも励む。趣味は絵を描くこと。