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中国eスポーツ界が熱視線! 早大生プロゲーマー“rilver”、狙うは世界一

「最強・中国へのリベンジに燃えています」

法学部 4年 大平 龍太郎(おおひら・りゅうたろう)

学生会館 3階にて

近年注目を浴びている、新たなスポーツ競技「eスポーツ」。ゲームによる対戦をスポーツとして捉え、プレーヤーの腕を競うこの競技は、若者を中心に大きな盛り上がりを見せています。そんなeスポーツ界で国内最大級を誇るプロチーム「SCARZ(※1)」のHoK(※2)部門に所属する rilver選手こと大平龍太郎さんは、早稲田大学に通う法学部生です。これまでに数多くの大会に出場しており、昨年は「2022 Honor of Kings International Championship(以下、KIC2022)」(※3)に日本代表として出場し、ベスト16という成績を残しました。2023年4月から1年間大学を休学し、eスポーツ選手の活動に注力する大平さんに、eスポーツを始めたきっかけやプロとしての活動、今後の目標などについて聞きました。

(※1)日本国内を拠点に活動するプロゲーミングチーム。9つのゲーム部門がある。
(※2)中国発の大人気オンラインゲーム「Honor of Kings」のこと。マルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)と呼ばれるジャンルのゲームで、プレーヤーが二つのチームに分かれてリアルタイムで操作しながら戦う。
(※3)Honor of Kingsの世界最強を決める選手権大会。

Honor of Kingsのプレイ動画。中国で人気ナンバーワンのアプリゲームで、全世界に2億人を超えるユーザーがいる。アプリ内の課金売り上げは約8,700億円!

――eスポーツに興味を持ったきっかけを教えてください。

マルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)と呼ばれる、プレーヤーが二つのチームに分かれてリアルタイムで戦うジャンルのゲームを始めたのは中学生の頃。最初は趣味として楽しんでいただけでした。しかし、遊んでいるうちに「もっとうまくなりたい」という気持ちが強くなり、ゲームの解説動画や大会映像などを見るように。それが、eスポーツとしてゲームを意識するきっかけだったと思います。やがて自分でも大会に出たくなり、中学3年生のときにネット上のゲーム仲間を誘ってチームを作り、ゲームの大会に出場したんです。

それからさまざまな大会に挑戦していくうちに、プレーヤーとしての技量も上がっていき、アマチュア選手として世界大会に出場したこともありました。プロを目指す契機になったのは、大学入学と同時に直面したコロナ禍。在宅時間が増えたことで、ゲームをする時間が大幅に増え、それに比例するようにメキメキと上達していったんです。そうして力をつけてきた頃に、プロのチームに加入予定のゲーム仲間に誘われる形で、2020年12月に晴れてプロになりました。コロナ禍がなければ、プロになるなんて考えはみじんもない、単なるゲーム好きな大学生のままだったかもしれませんね。

2021年にはゲーム「Arena of Valor」の世界大会に出場した。写真中央が大平さん

――eスポーツのプロとして、どのような活動をしているのですか。

事務所が指定するゲーム大会に出場し、結果を残すことを目標にしています。eスポーツは日本でも徐々に注目を集めていますが、中国や韓国では、それとは比較にならないほどの桁違いの注目度と人気です。人気ゲーム会社主催の公式大会では優勝賞金が10億円を超えることも。私たちのチームは、年に数回ある大規模な大会に照準を合わせて特訓します。基本的には自宅にこもり、一日14時間ほどゲームの練習漬け。かなりハードな日々で、眼精疲労や頭痛、腱鞘(けんしょう)炎など肉体的疲労とは常に格闘中です。体のケアのため、漢方薬や目薬などは手放せません。

平均的な一日の流れ。通学中は一日の練習時間が6時間ほどだったが、休学している現在は多くの時間を練習に費やし、腕を磨いている

SCARZが所有する練習施設「SCARZ HIDEOUT」。多くの練習機材が完備されている

大会が近くなると、事務所が用意した寮で数カ月間の練習合宿が始まります。MOBAはチームの連携が非常に重要なゲームなので、メンバーと一緒に練習に練習を重ねて大会に備えています。現在、チーム6人中2人が中国人で、プレー中の会話は全て中国語。最初はまるでコミュニケーションが取れず苦労しましたが、独学で中国語の勉強を続けたことで簡単な会話ならできるようになりました。チームの仲は良好ですが、試合結果が芳しくないともめることもあります。しかし、そうした衝突も強くなるためには欠かせません。完璧に言葉を理解できなくても、諦めずに互いに意見を言い合い絆を育むことで、その先にある勝利に一歩近づけると思っています。

チームメンバーとミーティング中の様子

――世界中から強豪が集まった「KIC2022」では、見事ベスト16の成績を残しました。大会を通しての感想を教えてください。

昨年のKICは予想外の連続でしたね。そもそも、KICで使用するHoKはプレー人口2億人を超えるほど大人気のゲームですが、まだ日本ではリリースされていません。事務所から大会の話を持ち掛けられるまで、私自身もその存在を知りませんでした。中国発のゲームなので、使用されている言語はもちろん中国語。一文一文を翻訳して操作の基本から覚え始めたため、他国の選手にかなり後れをとっていました。

KIC2022の様子。試合中はボイスチャットを使用し、チームで連携して戦う

所属チーム「SCARZ」のロゴマーク。名前には、人々の心に爪跡を残したいという意味が込められている

その上、練習期間はわずか半年。正直に言って、自信は全くありませんでした。しかし、国内予選をうまく勝ち進み、なんと日本代表に。そして、大会本選に進むためのプレイイン予選ではなんと全勝し、本戦でベスト16まで勝ち残ったんです! 各国のチームは自分たちよりHoK歴の長い強者(つわもの)ぞろいでしたが、合宿の成果か仲間との連携がうまく機能して自信がつき、士気も高まっていったんです。ただ、本選で強敵・中国チームと戦った際にはレベルの違いを痛感しました。今回の経験を糧に、腕を磨いて彼らに再度挑戦したいです。

――話を聞いていると、やはり中国のeスポーツ市場はとても大きいと感じます。

大会や市場規模が大きいだけでなく、eスポーツそのものに対する認識も日本とはかなり違います。中国における eスポーツ選手は、まるでアイドルと同じような存在なんです。ゲームがうまいとファンが大勢つき、大会で出待ちをされることも。トッププレーヤーともなると、中国の人気SNSであるWeiboのアカウントがフォロワー1,000万人を超えるんです。SCARZもKIC2022で日本代表として出場したことで注目を浴び、先日中国の人気テレビ番組『战至巅峰2』(※4)に出演しました。僕個人は、早稲田大学が中国で有名なこともあって、“現役早大生選手”として興味を持っていたただける機会も多く、Weiboのフォロワーも18万人を超えました。意外なところで早稲田パワーの恩恵にあずかっています(笑)。

(※4)中国の有名人たちがプロeスポーツ選手と同じようにゲームを練習し、トーナメントで優勝を目指すという番組。SCARZは優勝チームのエキシビジョンマッチの相手を務める。

――ちなみに、大平さんが法学部に入学した理由は何でしょう。

実は、小学生の頃から法曹志望だったんです。裁判官の仕事に憧れがあり、昔からの目標でした。大学に入ってからは司法試験に向けて勉強していたのですが、途中からeスポーツ選手という職業に関心を持つように。どちらの道に進むか大いに悩み、ゼミの先輩や両親にも相談しました。家族にはとても驚かれましたし、反対もされましたね。それでも、寿命が短いと言われるeスポーツ選手には今しかなれない。そんな自分の思いとこれまでの戦績を提示した上で根気強く説得し、一定の理解を示してもらえました。現在は、大学を1年間休学してeスポーツの活動に専念しています。この1年で納得のいく結果を残せた場合には、本格的にプロゲーマーの道を模索していきたいですね。

大平さんが所属する「民法平野ゼミ」のメンバーと。前列左端が大平さん。ゼミの中には大平さんがプロゲーマーであることを知らない人もいるそうで「この記事を読んだら驚くかも(笑)」と大平さん

――最後に、eスポーツの魅力と今後の目標を教えてください。

eスポーツ最大の魅力は間口の広さです。一般的なスポーツの場合、どんなに自分が好きでも、運動の得意不得意や体格などに左右されてしまう部分がありますが、ゲームにはそういった縛りはありません。ゲームジャンルも豊富なので、誰でも始められるし、誰でも活躍できるチャンスがあるんです。さらに、他のスポーツと同様に、ゲームを通していろいろな人と友情を育むこともできます。さまざまな可能性に満ちているところは、eスポーツならではだと思いますね。

将来の夢はMOBAを極め、「日本のeスポーツ選手といえばrilverだ!」と言われるような選手になること。その第一歩として、現在は今年の年末に行われるKIC2023に向けて特訓中です。最大の目標はやはり、最強の中国チームに勝利すること。チーム全員が昨年のリベンジに燃えており、彼らの先にある世界一の栄冠を手に入れるために練習に励んでいます。自身の夢のため、そしてチームのために、最高の結果を残したいです。

写真左:大会を通じて仲良くなった海外チームの友達と。左から3人目が大平さん
写真右:HoK部門の仲間と。手前正面が大平さん

第851回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 4年 佐久間 隆生

【プロフィール】

東京都出身。早稲田高等学校卒業。ゲーム以外にも、バスケットボールやテニスなどのスポーツも好きで、以前はバスケサークルにも所属していた。プレーヤーネーム「rilver」は、龍太郎のrと好きな色である銀(silver)に由来する。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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