私の専門は法律学である。法律学の本質は、正義性の重視である。内容的にはもちろん、手続的にも正義であることを追求する。それが法律学の本質であると私は理解している。
法律家は、自由や平等、公平、公正を重んじる。不正を許すことができない法律家も多い。そのためか、法律家は頭が固く、法律学は杓子(しゃくし)定規と思われがちである。しかし実際には、法律家は個別具体的なケースに応じて、ルールを柔軟に(時に創造的に)解釈し問題を解決している。要はバランスが大切なのである。
皆さんが日々の暮らしの中で、法律の重要性を意識することは、あまりないであろう。しかし一度、法的トラブルに巻き込まれたら、そのトラブルを解決するための法的知識が求められる。法律学は、自分や家族、友達を守るために、学んでおくべき学問である。特に、2022年4月より18歳成人になって、大学生を狙う悪質業者が増えている現状からすればなおさらである。
「法は共生のための相互尊重のルールである」といわれる。よって、正義性を重視する法律学からは特に、「共生の作法としての正義」という理念が重要となる。「共生」という視点の存否やその広狭の度合いが、正義の真贋(しんがん)を見極める基準になるのではないか。
ウクライナ戦争やSDGs、カーボンニュートラルなど、多くの今日的な問題でも、この「共生の作法としての正義」が問われている。未来を担う皆さんには、国際的視野を身に付けるとともに、人格を陶冶(とうや)して、他者を思いやれる心豊かな人間に成長していってもらいたい。
(T)
第1150回