「人間的力量」は早稲田大学が育成する人材像を表す上で大切な用語である。実は早稲田大学オリジナルであるらしい。その意味は端的には「地球上のどこへ行ってもその地の人々をまとめ、幸せにすることのできる能力」とされている。実に、早稲田大学で育った者の特徴を顕著に表現している。
さて、早稲田大学には「学問の独立」、「学問の活用」、「模範国民の造就」という三大教旨がある。その中で、大隈重信は「模範国民の造就」について「一身一家、一国の為のみならず。進んで世界に貢献する抱負が無ければならぬ」という言葉を残している。まさに、「人間的力量」の神髄を語っている。早稲田大学は今日までこの考えを大切に引き継いできており、早稲田大学やその関係者がさまざまな形で取り組んできた社会貢献活動には、こうした利他の精神がとても強く表れている。
杉原千畝という、早稲田大学の偉人の功績はあまりにも有名である。「ナチ・ドイツの迫害により欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情し、外務省からの命に反して、大量のビザを発給し多くの避難民を救った」という勇気、「外交官としてではなく人間として当然の正しい決断をした」という言葉は今でも多くの人々の共感を呼び心を打つ。まさに、「人間的力量」を持った人間の成せる業である。
「人間的力量」は誰にでも発揮することができる。早稲田大学には全ての学生の皆さんに「人間的力量」を涵養(かんよう)してもらうためのお手伝いをする仕組みが多くある。早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)、異文化交流センター(ICC)、キャリアセンターを訪ねれば「人間的力量」を育てるための多種多様な活動に参加することができる。さらに、グローバルエデュケーションセンター(GEC)や留学センターなどには「人間的力量」に関する多くの科目が用意されている。ぜひ、理論と実践を往還させながら真の「人間的力量」を涵養してもらいたい。
時代はSociety5.0、価値創造社会である。データドリブンな社会であるからこそ、多くの人々が幸せになるためには「人間的力量」が必要である。テクノロジーを用いて少し工夫すれば誰にでも「人間的力量」を発揮できる時代でもある。「人間的力量」の意味が「地球上の」ではなく「宇宙のどこへ行っても」になる時代も近いかもしれない。
写真左:早稲田キャンパス11号館と14号館の間にある「杉原千畝レリーフ」
写真右:早稲田キャンパス正門にある「早稲田大学教旨」
早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)所長・教務部 副部長 松居辰則