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水泳全国決勝からライフセービング世界3位獲得へ 挑戦続ける学生生活

「努力を続けられるのは、熱意を持って取り組んだ分だけ自信が得られるから」

社会科学部  4年 板場 貴大(いたば・たかひろ)

世界大会で獲得したメダルを胸に大隈記念講堂をバックに

「第二のオリンピック」とも呼ばれ、オリンピックに未採用の競技種目で世界中のアスリートが競い合う国際大会「ワールドゲームズ」。社会科学部4年の板場貴大さんは、今年7月にライフセービング種目の日本代表として大会に出場し、男子障害物4×50mリレーで銅メダルを獲得しました。実は板場さん、高校まで水泳部に所属しており、国体優勝など輝かしい成績を収めています。水泳に打ち込んだ中学、高校時代から一転、大学では体育各部には所属せず、サークル、ゼミの活動などさまざまなフィールドで活躍を続けています。そんな板場さんに、世界大会の思い出、体育各部に入部せず現在の道を選んだ理由、卒業後の進路などを聞きました。

――ワールドゲームズ銅メダル獲得、おめでとうございます! 板場さんが取り組んでいるライフセービングについて、その特徴と魅力を教えてください。

ライフセービングの最大の特徴は、社会貢献としての「監視業務」と「競技」の二つの軸があることです。また、数あるスポーツの中で唯一、「技術を高めた先に救う命があること」が1番の魅力です。

夏休みは全国にある海水浴場に所属し、「水辺の事故0」を目的に、泊まり込みで監視業務を行っています。もともとはこの社会貢献の活動にのみ興味があり、早稲田ライフセービングクラブ(公認サークル)への入会を決め、競技(※1)に取り組むつもりはありませんでした。しかし、海で監視業務を行ううちに、監視業務と競技、どちらにも取り組むことで相乗効果があると感じ、大学2年の終わり頃から本格的にライフセービングというスポーツで世界を目指すことにしました。

(※1)ライフセービングスポーツは、海の人命救助活動「ライフセービング」を競技化したもの。その種目は、オーシャン競技(海の大会)、プール競技(プールの大会)に分かれ、実際のレスキュー活動を想定した速さや技術を競い合う。

 写真左:早稲田ライフセービングクラブのメンバーと(1年時の全日本学生選手権にて)
写真右:板場さんが夏休みに監視業務を行った横浜・海の公園に所属するライフセーバーのメンバーでの一枚。今夏も「水辺の事故0」を達成した

――今年7月には日本代表として、世界大会ワールドゲームズに出場されました。大会で印象に残っていることは何ですか?

ワールドゲームズでは、障害物4×50mリレーで銅メダルを獲得することができました。大会を振り返り、メダル獲得という結果以上に得られたものが多い、これまでの人生で最も貴重な経験をすることができたように思います。オリンピックにまだ採用されていない、相撲やボウリングなどの多くのスポーツにも触れ、選手村でさまざまな国籍の選手たちと交流した時間は夢のようでした。

また、自分と同じライフセーバーが世界各国で「水辺の事故0」という共通の目的を持って活動している、そのことをあらためて実感し、胸が熱くなりました。日頃、私たちが守っている海のその先に同じ志を持った仲間がいると考えるだけで今後の活動の励みになります。大会を振り返り、生涯をかけてライフセービングに携わりたいと心から感じました。

銅メダルを獲得した男子障害物4×50mリレーの映像。50mプールの中に障害物となるネットが2つ張られていて、その下を潜りながら泳ぎ、タイムを競う種目

写真左:板場さんとともに早稲田大学からワールドゲームズに出場した高須快晴さん(スポーツ科学部4年)と一緒に
写真右:ワールドゲームズの表彰式にて(右端が板場さん)

――高校時代は、水泳で国体優勝など輝かしい成績を収めており、周囲から大学進学後は体育各部での活躍を期待されていたと聞きました。なぜ、そこから一転し、ライフセービングに取り組んだのですか?

大学入学までに形成された価値観を、良い意味で覆す大学4年間にしたいと思ったからです。系属校からの進学だったこともあり、高校時代から大学の先輩の話を聞く機会が多く、早稲田大学には多種多様な学びの場、活躍の場があると感じていました。

私自身、昔から学校生活が大好きで、授業や学校行事に全力で取り組んでいました。大学で体育各部に入部した場合、学生生活にどうしても制約が出てしまうこともあります。「競技者として水泳に取り組み、結果を残すこと」、「サークル活動、授業、ゼミなど活動の自由度が高い学生生活」、その二つを天秤(てんびん)にかけた結果、大学では新しい世界に飛び込みたいと思い、競泳以外で興味のある分野のサークル活動などに取り組むことを決めました。入学前からサークルについて情報を集め、最終的に早稲田ライフセービングクラブと男声合唱団の早稲田大学グリークラブ(公認サークル)に入部しました。

また、高校入学時に掲げた「国体出場・優勝」「インターハイ個人入賞」の目標を達成できたこともあって、前向きな気持ちで新しい世界に飛び込むことができました。

――その中学、高校時代ですが、実は部活動やクラブで練習をせず、自主練習のみで活動していたとか。中高時代の練習スタイルについて教えてください。

中学、高校時代は、部活には所属していましたが、顧問からの技術的な指導は少なく、他の部員はスイミングクラブで練習する中、私は地域のプールで完全自主練習を行っていました。このスタイルに行きついた理由は、自分自身と向き合う時間を長くしたかったからです。

私の専門は50m自由形で、練習量よりも技術や身体づくりが大切な種目です。そのため、弱点克服に特化した練習メニューを自分自身で作成した方が効率よく練習できると感じていました。目標達成に向け、逆算し計画を立てることが好きな性格だったこともあり、このスタイルが合っていたと思います。幸運なことに、競技引退まで記録が伸び悩むことはなく、着実に成長することができました。日本中で、競泳において自主練習でインターハイに出場した選手は、自分だけだと思います(笑)。この経験を通じて、自己分析力や実行力を鍛えることができ、今の生活にも生きていると感じています。

高校1年生の国体では、東京都代表として400mリレーで優勝した(右から2人目が板場さん)

――板場さんの学生生活のもう一つの軸であるグリークラブの活動について、そしてさまざまなフィールドで挑戦を続けられるモチベーションの源泉を教えてください。

卒業式では、グリークラブの一員として壇上で校歌を披露した(WasedaLiveより)

大学生活でいろいろなことに挑戦しているのは、「何事も熱意を持って取り組んだ分だけ、自信となって返ってくる」という確信があるからです。これは、今までの競技生活、学校生活を通じて得た学びです。

合唱の世界に飛び込んだきっかけは、中学時代に合唱コンクールが大好きで、生徒会長として合唱コンクール全体を盛り上げた経験が大きく影響しています。また、合唱に対して本気で向き合い頑張っているグリークラブの団員の姿が格好良く、このサークルであれば4年間充実した生活が送れると感じ、入団を決めました。

入団後は、ライフセービングの活動で時間に制約があり、かつ音楽未経験で楽譜が読めない状態からスタートしました。また、コロナ禍前は、演奏会に向け朝から晩まで学生会館で練習することもあり、本当に苦労しました。しかし、1年生のとき、初めて参加した定期演奏会で約2,000人の観客の前で歌い切った瞬間に、合唱の魅力を実感し、4年間グリークラブで頑張ろうという決意を固めました。好奇心が旺盛で、未知の領域であっても面白さを見出せることも、挑戦を続けるモチベーションになっています。

――最後に、今後の展望について教えてください。

大学卒業後は外航海運の企業に就職し、自社養成コースにて海技士になる予定です。海技士は、6カ月間世界中を航海しながら船のエンジンなどのメンテナンスを行い、その後3カ月休暇をとるサイクルが続くハードな仕事です。海技士として世界の海を舞台に、「物流を止めない」という使命を全うしたいです。グリークラブでの経験を生かし、海外の音楽を学び、外国人クルーと一緒に合唱できたら最高ですね(笑)。

また、社会人になっても、休日はライフセーバーとして活動に携わりたいです。そして、ライフセービングスポーツをさらに盛り上げていきたいという思いが強いので、今後はスタッフやコーチといった形で競技に関わることができたら、うれしいです。

グリークラブの同期であり、今回取材・執筆を担当した筆者と大隈記念講堂前で記念の2ショット

第825回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
教育学部 4年 長谷川 拓海

【プロフィール】
東京都出身。早稲田実業学校高等部卒業。3歳から水泳を始める。高校1年生で、国民体育大会に東京都代表として出場し、少年男子B400mリレーで優勝。高校3年生のインターハイでは50m自由形で8位入賞。ライフセービングは小学5年生から始め、大学から本格的に海の監視活動に従事する。その他、男声合唱団の早稲田大学グリークラブに所属し精力的に活動中。社会科学部では、鄭有希教授(社会科学総合学術院)のゼミに所属し、英語学位プログラムの留学生とともに、英語でのディスカッションを中心に人的資源管理、組織行動論について学んでいる。

Twitter:@Itarbacks
Instagram:@itarbacks

 

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