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「伝統×革新」で鎌倉に新たな価値を ウィンドサーフィン部の挑戦

「鎌倉に恩返しをしながら、応援してくれる人を増やしたい」

公認サークル「ウィンドサーフィン部」
政治経済学部 2年 岩田 翔真(いわた・しょうま)
国際教養学部 2年 高橋 ゆりあ(たかはし・ゆりあ)

(左から)岩田さん、高橋さん。戸山キャンパス 戸山の丘にて

ヨットとサーフィンを融合・発展させたスポーツといわれるウィンドサーフィン。ウィンドサーフィン部(公認サークル)は、全国大会優勝を目指し、日々鎌倉で練習を重ねています。一方で2021年には、ウィンドサーフィンという競技を生かしながら、鎌倉の古き良き伝統と大学生が持つ革新的な考えを掛け合わせたイベントや作品を企画、制作する「伝統×革新プロジェクト」を発足させました。そのプロジェクトに携わった岩田さんと高橋さんに、プロジェクト発足の経緯や実施して見えた課題、そしてウィンドサーフィン部の魅力について聞きました。

――まず、ウィンドサーフィン部の活動概要を教えてください。

ボードに乗っている高橋さん

高橋 ウィンドサーフィンとは、ボードに乗り、風の力を使って海面を滑走するマリンスポーツで、決められたコースを回って着順を競います。風向やブローと呼ばれる短時間の突風、他の艇(てい)との位置関係などを踏まえながら航路を決めるというように、判断力が求められる奥が深い競技です。

岩田 同じマリンスポーツのヨットと比較すると、ウィンドサーフィンは、セールを操作してスピードを上げる点が特徴と言えます。

高橋 サークルには30名ほどが所属しており、土曜、日曜は朝から夕方まで正規練習を、平日は空きコマに自主練習を、いずれも鎌倉で行っています。月一回ほどの頻度で、さまざまな規模の大会が実施されますが、大きな大会は年間二つで、一つが11月の全日本学生ボードセーリング選手権個人戦(インカレ個人戦)、もう一つが2月の全日本学生ボードセーリング選手権大学対抗戦(インカレ団体戦)。インカレ個人戦のレディースクラスでは、昨年度入賞(6位以内)は逃すも、7位になったメンバーもいます。

岩田 メンズクラスはレディースクラスに比べ競技人口が多く、全国で入賞を競えるレベルにはまだ達していないのが現状です。一方、男女混合の団体戦では昨年度7位と、一昨年の9位に比べて少し順位を上げることができました。団体戦で優勝した2015年のように、上位に返り咲くことが私たちの目標です。

――現在、競技のほか「伝統×革新プロジェクト」にも取り組んでいると聞きました。どのような経緯で発足したプロジェクトなのでしょうか。

岩田 プロジェクト発足の理由は二つあります。一つ目が、サークル活動をする上での金銭的な負担の大きさです。メンバーは遠征費や道具代など、1年間に30~60万円ほどを活動に費やしており、アルバイトに追われ、活動費の確保と競技・学業の両立に苦しんでいるメンバーも多くいます。そこで、サークルの存在感を高め、大学や卒業生のみならず、地元住民や企業の方々から応援されるような団体になり、スポンサーを獲得することが必要だと考えました。

二つ目は、「スポーツの結果にこだわるだけでなく、地域に貢献しながら成長する団体でありたい」という私たちの理念です。ウィンドサーフィン部の活動は、鎌倉の方々の理解や支えがあってこそ継続できています。創設以来40年間、鎌倉に場所をお借りして道具を置かせてもらっていますし、現地のサーファーの方との交流もあります。また、浜辺にごみが散乱していて危険な台風の後などには、私たちが練習を始める前に、地域住民の方々が早朝から浜辺を清掃してくださることもあります。そんな中で、鎌倉の方々に恩返しがしたいと思ったんです。

このような背景から、鎌倉の古き良き伝統と大学生が持つ革新的な考えを掛け合わせ、競技の特徴を生かしたイベントや作品を企業・公共団体と協力して企画、制作する「伝統×革新プロジェクト」を発足させました。企画や成果物を通じ、ウィンドサーフィン部の存在や鎌倉の良さを対外的に発信します。

「伝統×革新プロジェクト」企画書の表紙。2022年3月に卒業したメンバーのアイデアを基にプロジェクトが発足した

――「伝統×革新プロジェクト」の第一弾として実施したのが、「障子プロジェクト」ですね。

元々あった障子と入れ替えて展示したオリジナルの障子。美術展には鎌倉市長も訪れた

高橋 ウィンドサーフィンでは、半年に1枚ほどのペースで、セール(帆)を消費します。これまでは、使えなくなったセールはそのまま廃棄していたのですが、これを使って何か作れないかと考えたんです。鎌倉の和の雰囲気と合うものはなんだろうと考え、セールを障子にするアイデアが生まれました。ウィンドサーフィンで使う道具の再利用は、海が身近な鎌倉の方々に親しみを持ってもらえるのではという狙いもありました。

そこで、障子を作っている鎌倉の企業の方に連絡を取り、ご指導いただきながら制作に取り組むことに。同時に、障子の展示方法を検討すべく鎌倉市役所に相談したところ、JR鎌倉駅から鶴岡八幡宮まで続く小町通りを外れたところにある旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)で、ちょうど「サテライト蔵と現代美術展―鎌倉―」という美術展が開かれることを教えていただきました。そちらに出展する形で、2022年3月24日から27日まで、制作した障子を展示しました。私は会場案内係として展示会場にいましたが、立ち止まって見てくれる方もいて、うれしかったです。

――第一弾を実施して見えた課題や、第二弾以降の展望をお聞かせください。

障子制作中の高橋さん。高橋さんは障子のデザインも担当。オリジナリティのある障子になるよう意識した

高橋 プロジェクトに携わるメンバーの練習時間が削られてしまうことが課題だと感じました。渉外や障子の制作、展示会での案内などに人手や時間を要し、練習と両立できていなかった時期もあります。

岩田 実はこのプロジェクトに際し、クラウドファンディングを実施していたのですが、100万円の目標金額のうち、いただけた支援総額は14万3,000円と、目標に遠く及ばず、たくさんの方に周知することの難しさを感じました。第二弾以降は、年一回の頻度で企画を実施する予定です。今回と同様、セールなど頻繁に消費する道具を活用することを検討しています。

高橋 今回、障子を作る企業や市役所など、鎌倉の方々の協力を得て活動することで、少なからずウィンドサーフィン部の存在感を高めることができたと感じています。今後はSNSの活用など、私たち自身が工夫して広報しつつ、プロジェクトの目標達成に直結するような企画に挑戦できればいいなとも思います。

――ところで、お二人がウィンドサーフィンを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

岩田さん。海上での一枚

岩田 高校まではサッカーをやっていましたが、大学では自分に合う体育各部やサークルが見つけられず、何か本気で取り組めるスポーツを探していました。そんな中でウィンドサーフィン部の試乗会に行ってみたところ、海でスポーツをすることに新鮮さがあり、楽しいと感じたことがきっかけです。

高橋 私の場合は、父が大学生のときにウィンドサーフィンをやっていて、その思い出話を聞いていたことから、私も大学に入ったらウィンドサーフィンを始めようと思っていました。

岩田 私たちのように大学から競技を始める人が多いですが、1年生の後半になると、みんな乗りこなせるようになります。新入生にはぜひ試乗会に来てみてほしいですね(※)。

 

(※)2022年度の新歓は終了。来年度の新歓情報はSNSを要確認。

――ウィンドサーフィン部の魅力はどんなところだと感じていますか。

高橋 チームワークを大事にしながら、切磋琢磨(せっさたくま)できる場所だと感じています。個人競技ではありますが、練習後のミーティングでは、風や海面の状況を共有してみんなで話し合うなど、全員が同じ目標を持ち、チームで成長していくのが面白いところです。

岩田 ウィンドサーフィンをする拠点は、関東では鎌倉(由比ヶ浜)、逗子、三浦の3カ所に限られていて、そこで他大の学生と仲良くなり、一緒に練習することもあります。そんな人と人とのつながりも、ウィンドサーフィンならではの魅力だと思います。

写真左:2022年5月、逗子で開催された大会での集合写真
写真右:鎌倉における練習の様子

――最後に、「伝統×革新プロジェクト」について、そして競技について、今後の目標を教えてください。

岩田 「伝統×革新プロジェクト」については、鎌倉に恩返しをしながら、ウィンドサーフィン部を応援してくれる人を増やし、金銭的な問題を解決することが最終的な目標です。競技の面では、インカレ団体戦で再び優勝するという部の目標を、自分の在籍中に達成したいです。

高橋 私は、9月から1年間留学に行く予定なのでブランクが生じてしまうのですが、4年生のインカレレディース個人戦で入賞することが目標です。楽しむことを忘れずに、競技に取り組んでいければと思っています。

 

練習中の動画。セールを操作してスピードを上げている様子が分かる

第818回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
政治経済学部 4年 山本 皓大

【プロフィール】
岩田 翔真:東京都出身。早稲田大学高等学院卒業。趣味はサッカー観戦。応援しているチームはマンチェスター・ユナイテッド。月一回ほど友人と集まってサッカーをすることも。ウィンドサーフィンの魅力は、最も速くて時速50kmほどになるスピード。海の上を走っている感覚で、気持ち良いという。

高橋 ゆりあ:神奈川県出身。横浜共立学園高等学校卒業。絵を描くこと、音楽を聴くことが趣味だが、ボーイスカウトで活動していた経験もあるなど、幼い頃から体を動かすのは好き。9月からは米国・ウィスコンシン州に留学予定。風の状態の判断や道具のセッティングなど、ウィンドサーフィンにはやってみないと分からない奥の深さがあるという。

(左から)岩田さん、高橋さん

公認サークル ウィンドサーフィン部
Webサイト: https://waseda.grupo.jp/
Twitter: @wasedawind53
Instagram: @wasedawindsurfing53

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