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本場インドへヨガ留学 環境問題にも力を注ぐ早大生ヨガインストラクター

「ヨガに出合ってから、自分と向き合い大切にすることができています」

国際教養学部 4年 林 詩琳(りん・しりん)

大隈庭園にてヨガの「マーメイド(人魚)のポーズ」をする林さん

ヨガに出合ったことで、精神的な面で大きな成長を得られたというマレーシア出身、国際教養学部4年の林さん。さらに深くヨガを学びたいと、2020年1月にはインドへ1カ月間のヨガ留学に行き、ヨガインストラクターの資格を取得。現在は自己研鑽(さん)に励みながら、ヨガスタジオやオンラインでヨガを教えています。一方、ふるさとマレーシアで大量の海洋ごみや白化したサンゴを目の当たりにしたことをきっかけに、環境・海洋保護団体「ProjekWaste」を立ち上げるなど、環境問題にも積極的に取り組んでいます。そんな林さんに、ヨガを通じて自身に生じた変化や環境問題に取り組む思い、今後の展望などについて聞きました。

――ヨガインストラクターになった経緯を教えてください。

マレーシアでヨガを教えている様子

3、4年前、腰痛を解消するために、いくつかヨガスタジオに通い始めたのですが、そこで出会った先生方に、単にヨガのポーズを教わるだけでなく、精神的な教えもいただいて心身ともに元気になった経験から、ヨガをさらに深く学びたいと考えました。そして2020年の1月、せっかく学ぶのであれば本場で学ぼうと、ヨガ発祥の地であるインドのリシケシュへ1カ月間のヨガ留学に行きました。現地でヨガインストラクターの資格であるインターナショナルヨガアライアンス(RYT200)を取得し、今はヨガスタジオやオンラインで毎週ヨガを教えています。

――ヨガに出合って、どんな変化があったのでしょうか。

人に教えるだけでなく、セルフプラクティスも欠かさない

今この瞬間に意識を向け、大切にする「マインドフルネス」が実践できるようになりました。ヨガを始める前は、精神的に落ち込んでいるときに対処をしなかったり、食事にも気を遣わなかったりというように、自分と向き合うことができていませんでした。また、SNSなどで外からどう見られるかを気にしたり、日本で留学生活を送る中で、日本人に合わせることばかり優先して、なかなか自分の個性を出せていなかったりしたと思います。ヨガに出合ってからは自分と向き合い、感情や言動を整理して捉えられるようになり、今は自分を大切にすることができています。そして、周囲に影響されることなく、自分のルーツを大事に、素直に個性を発揮できるようになりました。ヨガを始める前と比べると、まるで別人のようになったと感じています。

――インドでのヨガ留学では、どのようなことを学んだのでしょうか。また実際に人にヨガを教えてみて、どのように感じていますか。

インドでは、世界各国から来た10人ほどの生徒と、寝食を共にしながらヨガを学びました。東南アジア出身の生徒が私しかおらず、最初は孤独感もありましたが、次第に心を開き、良き友人となることができました。レッスンはほぼ毎日、朝6時から夜7時まで、実技と、哲学、解剖学や瞑想(めいそう)などの座学があり、1カ月間で200時間を受講。最後に、筆記試験と自分でヨガのクラスを開くための実技試験に合格し、資格獲得となりました。

写真左:2020年1月、インドのヨガスクール卒業時の写真
写真右:レッスンが休みの日には観光も。他の生徒とのつながりは今でも続いている

ヨガ留学では、先生や他の生徒のレベルの高さを実感し、自分はまだまだだと感じました。また実際にレッスンを開く中で、人に教える難しさも痛感しています。ヨガ留学の直後は、両親を相手に教える練習をしていたこともありました。今は他の先生のクラスに参加して研究するなど、自己研鑽に励んでいます。インストラクターとしてまだ新米ですが、私が教える内容に興味を持って繰り返し習いに来てくれる方もいて、うれしく思っています。

――環境・海洋保護団体「ProjekWaste」を立ち上げるなど、林さんは環境問題にも取り組まれていますね。

実はインドへのヨガ留学後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、1年半ほどマレーシアに帰国していました。そのうち半年ほどは、地元の近くの離島、ペルヘンティアン島に滞在し、リゾートホテルでヨガを教えていたのですが、ビーチを歩いたり、スキューバダイビングをしたりする中で、大量の海洋ごみや白化したサンゴを目の当たりにし、何かしなければと思ったんです。そこで、ダイビングのインストラクターだった今のパートナーと共同で、環境・海洋保護団体「ProjekWaste」を立ち上げました。10名ほどのメンバーで、ビーチクリーンをメインに、島のリゾート施設やダイビングセンターとパートナーシップを組んだ環境保護活動や、SNSでの情報発信に取り組んでいます。

マレーシアにおけるProjekWasteの活動の様子。活動の一環として、ビーチクリーンは江の島など日本でも実施している

ダイビングは今も続けていて、世界最大のダイビング教育機関PADIの環境保護のセクターでインターンもしています。ダイビングにはレクリエーションの面だけでなく、水中のごみを回収したり、サンゴの植え付けをしたりというように環境保護に貢献できる面もあるんです。ダイビングを通じて環境問題を解決できればと思っています。

ダイビングの様子。左はProjekWasteを共同で立ち上げたパートナーとの1枚

マレーシアに一時帰国していたときには、サステナブルブランド「Nami」も立ち上げました。体に優しい発酵ドリンクのコンブチャや、古着を草木染めしたアップサイクル(※)品を扱い、主に日本で展開しています。

(※)不要になったものに付加価値を付けて、新しいものに生まれ変わらせること

写真左:「namitea」として展開しているコンブチャ。日本の昆布茶とは異なる紅茶発酵ドリンク。見た目が悪く捨てられてしまうフルーツや自家製のハーブを使用している
写真右:古着を草木染めしたアップサイクル品の「namiwear」

他にも、経済と環境の好循環を生むイノベーターを養成するGreen Innovator Academyに1期生として参加したり、ヨガを通じてサステナブルな暮らしや健康を共に目指す参加型コミュニティーWellness Laboratoryに参加してヨガや環境問題について教えたりしています。

環境問題に取り組む中で、自分1人では力の弱さを感じることもありますが、そんなときは、世界中の同じ思いを持つ人と共に、コミュニティーとして強くなることを意識しています。1つ1つのアクションは小さいですが、それらが積み重なれば大きな力になると信じています。環境問題は、結局は自分につながる問題です。皆さんにもぜひ深く考えてみてほしいと思います。

――ところで、なぜ日本に留学し、早稲田で学ぶことを決めたのでしょうか。

2018年9月、国際教養学部入学式にて。左から4人目が林さん。早稲田は自由な校風であるが、その分自分を律する必要があると感じているそう

社会奉仕団体ライオンズクラブのプログラムで、中学生の時、交換留学で1カ月間日本に滞在したり、逆にマレーシアで日本の学生をホストファミリーとして受け入れたりというように、小さい頃から日本人と接する機会があり、日本に興味を持っていました。また、新しい言語にチャレンジしたいという思いもあり、日本に留学することを決めました。高校卒業後日本に来て、2年間日本語学校に通った後、早稲田の国際教養学部に入学しました。学びたいことが明確ではなかったのですが、国際教養学部なら幅広いことが学べると思ったからです。今は国際環境政治学や国際関係学を扱う太田宏先生(国際学術院教授)のゼミに所属し、「世界中の若者たちの環境活動や環境政治への参入と、現実の構造的システムのギャップ」をテーマに、卒業論文を執筆しています。国際教養学部にはいろいろなバックグラウンドを持った人がいて面白いです。

2014年12月、日本へ交換留学をした際の歓迎会にて。前列左から3人目が林さん

――最後に、今後の展望を教えてください。

卒業後はインターン先のダイビングの教育機関で働くつもりですが、ヨガのある生活は今後も続け、再びインドに行って、上級資格であるRYT500を取得したいと考えています。そして、いずれはマレーシアに帰り、環境保護の団体を運営しながら、ヨガ・サステナブル・自然に触れ合えるコミュニティスペースを作り出したいです。また、政治から環境問題に取り組むことも視野に入れています。今マレーシアには、環境問題に力を入れ、若い世代から絶大な人気を集めている若い政治家がいます。もしその人が大統領になることがあれば、サポートする立場で政界に入るかもしれませんし、自分がリーダーの立場になるかもしれません。何らかの形で、マレーシアで環境問題に取り組めればと思っています。

第812回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
政治経済学部 4年 山本 皓大

【プロフィール】

マレーシア・クランタン出身。あだ名の「ぜん」で呼ばれることが多い。2021年6月には、ICC(異文化交流センター)のオンラインヨガイベントにインストラクターとして登壇。同年8月には、TEDxWasedaUにて「Curating a Sustainable Lifestyle」と題したスピーチを行った。コーヒーが好きで、カフェで5年間アルバイトをしている。知り合いのバリスタのお店に足を運ぶことも。好きな日本食はすし。豆腐のようにプラントベースな食品も多く、体にも環境にもやさしい日本食からは、学ぶことも多いという。夏はサーフィンやダイビング、冬にはスノーボードと、季節ごとにスポーツを楽しむ。
Instagram: @zenzenw

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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