舞台裏から学んだ文化的価値観
政治経済学部 4年 白石 みなと(しらいし・みなと)
2019年9月から2020年6月までの予定で、モーツァルト生誕の地として有名な、オーストリアのザルツブルクにあるザルツブルク大学に留学しました。芸術、特に音楽と舞台芸術を学びたい! という思いが強く、その希望をかなえながら、所属学部で学んでいる政治や経済の勉強が両立できる場所を探して見つけたのがオーストリアでした。
授業は主に大学院生と合同の少数ゼミのようなスタイルだったので、とにかく多く発言することが求められました。専門用語が多く、初めは話すことをためらっていましたが、周りが理解しようと温かい環境をつくってくれたので徐々に意見を言えるようになりました。演劇の授業では、日本とオーストリアの舞台制作のスタイルは180度違うと言っても過言ではないくらい異なることを学びました。例えば、日本はできるようになるまでリハーサルを続けるのですが、オーストリアでは決めた時間を超える練習はしないというスタイルだったので、本番までに形になるかひやひやしました。これもまた、新たな文化的価値観を学ぶ貴重な体験となりました。
好きな授業は「Sound Studies(音響学)」でした。それぞれの劇場や、各国の伝統的な楽器の使い方などで音の響き方が異なることを学びました。大学院の授業だったので、高度な知識ばかりで付いていくのに必死でしたが、期末論文で「歌舞伎座とオペラ歌劇場の音響について」を調べ、歌舞伎文化をクラスメートに知ってもらえたことがうれしかったです。
一番の思い出は、大学の英語演劇で舞台監督助手を務め、公演を成功させたことです。監督である教授の意向をくみながら、舞台セットを考え、小道具を用意し、当日は舞台転換の指示を出すなど、裏方全般に携わりました。本番中、舞台袖から見える観客の笑顔や、やりきった表情で戻ってくる役者の仲間たちを見て、言葉や文化の違いはあっても一つの舞台をつくることがこんなにも楽しいことなのだとあらためて気付かされ、他では経験し難い良い思い出となりました。
写真左:「舞台監督助手として頑張った」と、カーテンコールで舞台へ呼んでもらいました
写真右:公演を見に来てくれた友人たちと(左から4人目が筆者)
オーストリアで生活する中で、現地の方々はとても親切でフレンドリーだと感じました。拙いドイツ語しか話せず困っていると、周りの方がすぐに助け舟を出してくれます。また、スーパーでドリンク1本片手に大行列のレジに並んでいると、「それしか買わないなら先に会計しなさい」と順番をかわってくれたこともありました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2020年3月に緊急帰国した後、6月に寮を引き払うために再度入国したとき、街中に私1人しか外国人がいない…というような状況でも、差別するのではなく、レストランなどに入ると気さくに話しかけてくれるなど、優しい方が多い国だと感じました。
写真左:有名なホテルザッハーで食べたオーストリア名物、ウィンナーシュニッツェル
写真右:現地の人は風邪をひくとハーブティーを飲むそうで、スーパーにはいつも100種類くらい並んでいます。価格も手頃で1箱1ユーロ(当時1ユーロ約120円)くらいから販売されていました
~オーストリアで驚いたこと~
どのような分野においても学生割引が多かったのが印象的でした。舞台のチケットは、日本では1万円以上するような席でも、学割で10ユーロ程度でした。またウィーン国立歌劇場にはバックステージツアーがあるのですが、こちらも4ユーロなので、月に1回はウィーンを訪れ、さまざまな作品の裏側を見るようにしていました。さらに、ウィーン―ザルツブルク間の列車運賃も、距離としては東京から静岡くらいあるのですが、学割で片道25ユーロ程度と安くてとても助かっていました。
オーストリア・ザルツブルクはこんなところ
オーストリア・ザルツブルクは、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台としても知られる、中世が息づく街。世界で最も美しい街の一つに数えられ、ザルツブルク市街の歴史地区は世界文化遺産にも登録されています。公用語はドイツ語。東京からの直行便は無く、ウィーン経由で約13時間。時差は日本より-8時間(夏時間は-7時間)。