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食と世界を巡りながら 100年後も読まれる作品を目指して・織田博子【2020年度卒業記念号】

価値観も文化も一つじゃないし、正解も一つじゃない

食を旅するイラストレーター/マンガ家 織田 博子(おだ・ひろこ)

「世界家庭料理の旅」をテーマに、ユーラシア大陸を一人で一周半。その体験記でもあるコミックエッセイ『女一匹シベリア鉄道の旅』などで人気の“食を旅するイラストレーター”織田博子さんは、早稲田大学第二文学部出身だ。ただ、卒業後すぐにイラストの道に進んだわけではなく、民間企業に就職してイラストとは無縁の生活を送っていたという。そこから一念発起した経緯と原動力とは?

「今はこっちだ!」 “直感”を信じて人生の決断

小さな頃から絵を描くことが好きで、美術系大学への進学も検討していた織田さんが早稲田を選んだ理由。それは“直感”だった。

「なんか早稲田だな、と(笑)。ここならいろんな体験と出会いがありそうだと感じたんです。特に第二文学部は夜間学部だったので社会人も多く、年齢やキャリアを問わず、多様な価値観にあふれていました。直感を信じて正解でしたね。人との出会い以外にも、授業の選択肢が多彩。『絵画論』を選択したつもりがうっかり『映画論』だったこともありましたが、おかげで外国の古典映画を知ることができて視野が広がりました。また、単位互換制度で武蔵野美術大学の授業を履修できたのもありがたかったです。結果的に、単位関係なくお世話になった武蔵美の教授もいて、表現とは何かを考えるきっかけになりました」

学生時代に訪れたインドにて

授業以外でも二つの絵画系サークルに所属し、イラストや絵と向き合う4年間を過ごした織田さん。当然、絵の仕事に就くという夢を抱いたが、就職活動で選んだのはシステムエンジニアとして働くことだった。

「クリエイティブ職に応募しまくったものの、全て落ちました。なので、採用してくれた会社に尽くそうと思いました。仕事はすごく充実していましたし、私生活では『世界家庭料理の会』と題して、友人や知人と世界各地のさまざまな料理を食べる会合を毎月開催。その国の情報を蓄積して旅行気分を味わおう! と、とても楽しく過ごしていました」

そんな織田さんの転機は社会人3年目、25歳のとき。またも“直感”を信じたという。

「結婚願望があったのですが、結婚して子どもを持つと、自分が好きにできる時間は案外なさそうだぞと。今が自分のやりたいことをやる最後のチャンスだと当時は思ったんです。10年に一度くらい、こっちに進んだ方が後悔しないはず、と感じることがあって、早稲田を選んだときと同様、『今はこっちだ!』という感覚に逆らいたくないと思いました」

こうして会社を辞めた織田さんの次のアクション。それが、ユーラシア大陸一人旅だった。

世界の旅と食事で学んだ「価値観は一つじゃない」

旅行先のスペインで壁面に絵を描く織田さん

「いつか絵で身を立てたいという夢は卒業後も変わらずありました。ただ、人より秀でた技術はない。ならば、自分をコンテンツ化したときに『この分野なら織田さんだ』と言ってもらえる個性が必要だと考えました。そこで、社会人になって続けていた『世界の家庭料理』を旅のテーマにしました」

7カ月に及ぶユーラシア大陸一人旅から帰国後、織田さんは旅の体験をまとめたフリーペーパーを自主制作。知己のカフェなどに置かせてもらったところ、たまたま編集者の目に留まり、そこから2年の月日をかけ、30歳のときにコミックエッセイの出版に至った。マンガで世界各国の家庭料理を紹介するとともに、各地の人々との温かみのある触れ合いを描いた内容が人気を博している。

2015年に1作目となる『女一匹シベリア鉄道の旅』(イースト・プレス)を出版

「海外一人旅で感じたのは、価値観も文化も一つじゃないし、正解も一つじゃない、ということ。今、何かを表現する上でテーマとしているのも、『他の人の普通は、自分にとっては普通じゃない。逆もまたしかり』。そのギャップが面白いし、自分がマンガやイラストを描く理由のような気がします」

2015年に一人旅で訪れたロシア連邦内のウドムルト共和国にて

写真左:2020年12月に駒込のカフェで開催した個展「世界のおじちゃんと音楽」
写真右:世界の家庭料理を作る料理教室も人気(現在はオンラインで開催)

こうして学生時代の夢をかなえた織田さんは、次の目標に向けてまい進中。

「人生の大きな目標は、100年後にも読まれるような名作を描くこと。技術を培うためにまずは数をこなさなければと、デビューから40歳までの10年間で1年に1冊、10冊は本を出したいと計画しました。次に出るのが9冊目。今36歳なので、まずまずのペースでしょうか」

そんな未来志向の織田さんから、未来へと歩み出す卒業生へのエールをもらった。

「この時代、行動した人が強い、というのはすごく感じます。どんなことでも“やらない理由”はたくさんあるし、その選択が賢いように見えたりする。でも、自分の考えに基づいて行動し、成功や失敗をする人に私は魅力を感じます。頭で考えると悩むことばかりの世の中ですけど、やるべきかどうかで迷ったら、たまには自分の直感を信じてみてもいいんじゃないでしょうか」

取材・文=オグマナオト(2002年、第二文学部卒)
撮影=小野奈那子

【プロフィール】
埼玉県出身。早稲田大学第二文学部卒業。主な著書に『女一匹シベリア鉄道の旅』『北欧! 自由気ままに子連れ旅』(イースト・プレス)など。コミュニティペーパー『こまごめ通信』を主宰するなど地域活動にも携わる。早稲田ウィークリーでは、4コマ漫画「早稲田あるある」や、2020年度卒業記念号(紙版)の表紙イラストなどを担当。
Twitter:@OdaHirokoIllust
Webサイト:http://www.odahiroko.skr.jp/

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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