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通信講義録と津田左右吉-創立記念コラム

津田左右吉

今年、新型コロナウイルス感染症により、春学期の授業はすべてオンラインになった。学生生活をはじめ失ったものは多い。だが、オンデマンドの可能性は、早稲田の進むべき道標となろう。キャンパスを超えて授業を発信していく。それは早稲田の伝統でもある。

開校から4年後の明治19(1886)年、早稲田大学の前身である東京専門学校は、通信講義録により、上京や進学ができない人々に、勉強を続ける手段を提供した。発案者は、後に第三代総長を務める高田早苗。その趣意書は、「教ゆるにも亦(ま)た術(すべ)多かり」という教育方法の多様性を説く言葉から始まる。通信講義録の購読者は「校外生」と呼ばれ、試験に受かれば正規課程に編入できた。そうして早稲田の門を叩いた者が、津田左右吉である。

『東京専門学校政学部講義録』(1889)(早稲田大学大学史資料センター)

明治21(1888)年、通信講義録の購入により、校外生となった津田左右吉は、明治23(1890)年、東京専門学校邦語政治科2年に編入した。歴史学を修めた津田は、卒業後『古事記』・『日本書紀』の史料批判を行い天皇を神話から解放し、また「大東亜共栄圏」など、東洋が同文同種であるとの虚像を打ち破った。やがて津田は、早稲田の東洋哲学研究の基礎を築く。

居ながらにして最新の学問に触れ得る講義録は、早稲田が教育をキャンパスの外に普及させる格好の媒体であり、講義録だけを頼りに独学に励む校外生たちは、「在野の精神」の体現者でもあった。もちろん、独学は難しい。通信講義録の修了者は、十人に一人と言われる厳しさであった。

オンライン授業は、厳しい。それでも、学生が自らの学問に没入し、教員がその講義を高めていくとき、早稲田の新たな伝統が、そこから生まれよう。

早稲田大学理事 渡邉 義浩

【プロフィール】わたなべ・よしひろ。早稲田大学理事・文学学術院教授。三国志学会事務局長。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了、文学博士。専門は古典中国学。
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