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SILSから医学部へ 生命の進化に対する興味と祖母の看病が岐路に

早稲田で学んだ多文化理解を医師になっても生かしたい

日本医科大学 3年 佐藤 真結(さとう・まゆ)

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、その最前線で奮闘する医療従事者への注目度が高まっている昨今。そんな医療の道を目指すべく、早稲田大学卒業後に日本医科大学へ進学したのが、国際教養学部出身の佐藤真結さんです。進路選択のいきさつや祖母の闘病を通して受けた影響、早稲田大学時代と今の学びが交錯する点について話を聞きました。

※インタビューはオンラインで行いました。

祖母の病気を発端に、医師の道を目指したSILS時代

父親が医師だったことも影響したのか、幼少期から生命の進化や生物学に興味を抱いていた佐藤さん。ただ、大学進学にあたっては「医師」という職業を目指そうとは思わず、英語で理系分野の学問を学びたいと選んだのが国際教養学部(SILS)だった。

「早稲田では幅広いテーマをとことん学べることがとても楽しかったですね。生物学や環境学にはもともと興味がありましたが、入学後は言語学や多文化にも興味を持ち、学部専攻ではない授業も履修していました」

独自の進化を遂げたオーストラリアの動物を見てみたいと渡豪。オーストラリア博物館の、ヒクイドリなどの骨格標本の前で(2015年)

そんな彼女にとって、授業中はもちろん、授業以外でも闊達(かったつ)な議論ができる早稲田大学の環境は、新鮮で得るものが多かったという。

「小規模な高校に通っていたので、入学当初は早稲田の規模の大きさにカルチャーショックを覚えました。でも気が付けば、バックグラウンドの異なる多種多様な人がいることが早稲田の良さなんだと思うになりました。また、学部の授業では、その日初めて会った留学生とチームを組んで、即興でプレゼンテーションをする機会もありました。出身国によってさまざまな考え方があることを知り、議論できたことは得難い経験です」

転機が訪れたのは、大学3年の夏。周囲が就職活動に動き出し、佐藤さんも卒業後の進路を考え始めていたころ、家族との関わりが人生の選択に大きな影響を及ぼすことになった。

SILS4年次に祖母と旅行へ行ったときの一コマ。佐藤さんにとって、幼少期から母のような存在だったそう

「生命の進化に対する興味が尽きず、生物の体の仕組みを根本から学びたいと思い、研究者として医学部を目指すのもいいかもしれない…そう考えていた矢先に、祖母が末期癌(がん)と診断されたんです。そのことをきっかけに、研究者を目指すと同時に臨床医として誰かの役に立ちたいと考え始めました。また、大学在学中に医師である父と飛行機に搭乗した際、機内でけが人が出て、父が手当てをするのを間近で見る機会がありました。今にして思えば、あの経験も自分に影響を及ぼしたかもしれませんね」

こうして医学部進学を決意すると、早稲田大学在学中は、学部の勉強や試験に追われながらも受験勉強に励み、さらには祖母の看病も加わるという“三足のわらじ”状態に。それでも乗り越えられたのは、祖母の存在が大きかったと当時を振り返った。

「祖母は、自身の癌が私にとっての臨床医を目指すきっかけになったことをうれしく思い、自分の闘病生活に生きる希望を持ってくれていたようです。私の受験勉強を応援してくれていました。人によってはそれがプレッシャーに感じてしまうかもしれませんが、私にとっては大きなモチベーションになっていましたね。2年前に他界し、医師になる姿を見せることはかないませんでしたが、医学部合格を報告できたのは、何よりの孝行だったのかなと思います」

幅広い視点を持って全身状態を診られる医師に

日本医科大学の入学式当日

早稲田大学を卒業後、1年間の浪人生活を経て日本医科大学に合格した佐藤さん。今は新型コロナウイルスの影響でオンライン授業を受ける日々だが、日常が戻れば週5日、実習や実験に追われる忙しい毎日が待っている。

「現在は医学部3年生で、ちょうど臨床医学と基礎医学の橋渡しのような勉強をしている段階です。2年生までに学んだ解剖学や生理学、病理学などの知識を生かしながら疾患についても少しずつ学んでいるほか、公衆衛生学、薬理学、法医学などを学ぶとともに、秋からは臨床授業も始まる予定です」

現在使用している医学部のテキスト

そんな医療の道でこの先目指す将来像は? と投げ掛けると、「幅広い視点を持って全身状態を診られるような医師になりたい」と答えてくれた。

「祖母は糖尿病の持病がある状態で癌を患ったため、血糖や血圧をコントロールしながらの癌治療がとても難しいことを、医師の話を聞いたり、看病したりする中で学びました。そんな経験も通して、医療面だけでなく患者さん自身の生活全体も含めた幅広い視点で包括して診ることができ、何か一つ症状が出たときにどういった治療をするべきか見極められる医師になりたいと考えています。また、現時点では、将来的には研究者の道も両立したいと思っています 」

その「幅広い視点」を持つ上では、早稲田時代の経験が大いに生きるはず、と語る。

「以前、外国出身の知人から、『日本には英語が話せる医師が少ない』という話を耳にしました。将来は得意な英語を生かしつつ、日本にいる外国出身の患者さんのお役にも立ちたい。そのためには、多文化理解が不可欠であると思い、早稲田時代に学んだ言語学や文化面の差異については今も興味を持ち続けています」

小学生の頃から習っていたバイオリンは、医学部の勉強が多忙で教室に通える時間がなくなった今も、気分転換として自宅で演奏することもあるという

コロナ禍において、世間の注目度も増す医療従事者。その予備軍である佐藤さんの意識もまた、日々高まりを見せている。

「私自身はまだ医療者ではないので何もできることがない。そこに歯がゆさを感じています。ニュースを見たり授業を受けたりする中でも、感染拡大を防ぐために一人一人の努力が本当に不可欠であることをあらためて感じました。また、海外では医療者への理解や認識が高いですが、日本では医療者や患者さんへの差別があるという話を聞き、心を痛めています。日本でも海外のような視点が当たり前になるよう、まずは自分自身の意識をより高めていきたいと思います」

新たな夢を持ち、学びの日々を過ごす佐藤さん。他大学に通っているからこそ気付いた早稲田大学の魅力や、現役の早大生に伝えたいことは何だろうか?

「早稲田の魅力と言えば、やはり自由に議論ができて、お互いに理解を深めていけること。規模が大きく、いろいろなバックグラウンドの学生や各分野一流の先生と出会うチャンスにも恵まれていると思います。今振り返ってみても、早稲田での4年間は本当にあっという間でした。どう過ごすかは人それぞれですが、早稲田は新しい考え方や学びに接する機会の多いとても素晴らしい場所。人生にはきっと、無駄な経験は一つもないと思います。 ぜひ、自分ならではのチャレンジをしてみてください」

取材・文=オグマナオト(2002年、第二文学部卒)

【プロフィール】
東京都出身。2017年、国際教養学部卒業。2018年、日本医科大学医学部入学。父は整形外科医。帰国生ではないが、幼少期から英語と日本語、両方の言語が身近にある環境で育つ。趣味は楽器演奏(バイオリン、ドラム、三線)、映画鑑賞。一度何かに興味を持つと、そこから派生してさらに新しいことを学んでいくのが好きだという。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』に興味を持ったときは、英語や音楽への興味に加えて 、世界史や船の仕組み、海上の安全にまで広げて学びを深めたというエピソードも。

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