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アイデアをカタチに 「全自動手書きレポートマシン」を開発した早大生

「ものづくりのコンセプトは『日常生活のちょっとした不便を解決できるモノ』」

基幹理工学部 3年 田村 洸希(たむら・こうき)

自宅にてはんだ付け作業をする田村さん

「全自動手書きレポートマシン」と聞いてどのようなものを想像しますか? その製作者である田村洸希さんが2019年9月にマシンの動画をSNSに投稿したところ、Twitterでは4万件近い「いいね」が付き、情報番組『シューイチ』(日本テレビ系)などの国内メディアをはじめ、タイや台湾といった海外メディアでも取り上げられるほど注目を浴びました。また、情報処理学会の「第186回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会」では学生奨励賞を受賞しており、これからの活躍を期待せずにはいられません。そんな田村さんに、ものづくりや研究について話を聞きました。

※インタビューはメール、オンラインで行いました。

――「全自動手書きレポートマシン」を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

基幹理工学部には実験科目があるのですが、ある学科では手書きで実験レポートを書かなければならないという指定があります。時には50枚ほどにもなるレポートを、全て手書きするのは大変だと思い、自分の手書き文字を書いてくれる機械を作ることにしました。ただ、自分が実際に使うためというよりは、手書きレポートの必要性に疑問を呈するような意味合いが強かったですね。

――製作費用や期間はどのくらいですか? また、苦労した点や工夫した点はどこでしょうか。

インターネットに掲載されている自作3Dプリンターの記事などを参考に、文字登録ソフトと機械の製作、動画編集も含め1カ月ほどで完成しました。費用は全部で約7,000円で、材料のうち半分ほどはホームセンターで調達できるものを使っています。

一番苦労したのは、自分の筆跡を2,400文字ほど登録する作業です。3Dプリンターを用いた機械設計やソフトウエアの開発は楽しんでできたので苦ではなかったのですが、自分の筆跡を登録する作業はただただ苦痛でした(笑)。過去のノートから自分の筆跡を抽出して、その文字の中心線を取得する方法も考えたのですが、技術的に難しいと分かり、1から文字を登録しました。日本語は常用漢字が2,136文字もあるのがつらいですね。

こだわりは、「自分の筆跡でありながら自分よりも奇麗な字を書いてくれる」機能を搭載した点です。文字登録ソフトの機能として、同じ文字につき自分の筆跡を3回ほど登録すると、それらの文字形状の平均が計算され、自分が理想とする奇麗な文字が登録されるようになっています。この「同じ文字の平均をとると奇麗な文字になる」という特徴は、2014年に明治大学の中村聡史教授が発表した「平均文字は美しい」という論文から引用して実装させていただきました。

全自動手書きレポートマシン

――マシンに対する周囲の反応はいかがでしたか?

SNSで動画を公開したので、最初に反応してくれたのは同級生やサークル(公認サークル「経営情報学会」)の友達でした。投稿が話題になると、友達からは「めっちゃバズってるね!」とよく言われましたし、家にテレビ取材が来たりもしたので家族も驚いていました。サークルにはプログラミングなどを趣味とする人が多く、どのように作ったかなど技術的な面に興味を持ってくれた人もいたのがうれしかったですね。大学の教授にも動画を見ていただき、ある先生からは3Dプリンターを使ったプロジェクトをやってみないかと有り難い提案もいただきました。

マシンが動く様子

――ものづくりはいつから始めましたか?

実は、物理的なものづくりを始めたのは大学に入ってからで、初作品が「全自動手書きレポートマシン」なんです。高校生の頃からプログラミングをしてゲームやアプリを作るのが趣味だったのですが、ゲームに必要な3DCG(※1)を作っている時に、この3DCGを現実世界で再現できたら面白そうだなと思い、3Dプリンターを購入したんです。それから3DCAD(※2)などを勉強して3Dプリンターで必要な部品を造形し、ArduinoやRaspberry Piなどのマイコン(マイクロコンピュータ)で制御したモーターなどと組み合わせることで、いろいろなものづくりができるようになりました。

(※1)3次元コンピュータグラフィックス。3次元の仮想的な立体物を平面上に投影する技術のこと
(※2)3次元コンピュータ支援設計。3次元上に設計・製図するツール

(左)3DCADを使用してマシンの設計を行った
(右)マシンが字を書く様子

――2020年1月に行われた、第186回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(一般社団法人情報処理学会)では「ひとを騙(だま)す手書き自動生成手法の提案と実装」を発表し、学生奨励賞を受賞しました。

全自動手書きレポートマシンの動画をSNSに公開してすぐに、文字登録ソフトを作る際に参考にした中村教授に動画を見ていただいたところ、動画内では実現できていなかった「もっと“ひとらしい”ゆらぎのある文字を自動生成する」という主旨の研究をしてみないかと提案していただきました。私も非常に興味があったので共同研究という形で研究を進め、最終的には研究会で発表させていただきました。

私が作ったこのマシンには、「同一の文字が全く同じ形状で書かれてしまう」という問題点がありました。ひとが書く文章には形状にゆらぎが生じるはずなので、このままでは機械が書いたとバレてしまいます。そこで2、3個の少ない手書き文字を負の値から1を超える値の範囲内で加重平均化することで、新しい手書き文字を自動生成する手法を提案しました。実際にひとが書いたものと見比べてもらうと、平均して59.1%の割合でひとの手書きを判定できたという結果が得られたので、ひとを騙すには十分なほどに「ひとらしい」手書き文字を自動生成できることが実証できました。ただ、「はね」や「はらい」、筆圧など、まだ改良点はあると思っています。

マシンの問題点

加重平均化のイメージ

――早稲田大学への進学理由を教えてください。春学期はオンライン授業となりましたが、どのように過ごしていますか。

オンライン取材の一コマ。後ろに写る柱は「プロジェクト研究A」で使用するために自作中

早稲田に進学したのは、もともとコンピュータの仕組みや通信技術などに興味があり、それらを学べる情報理工学科や情報通信学科に進みたいと考えたからです。オンライン授業については、オンデマンド授業は一度に3講義分を聞いたり、リアルタイムの授業では友達と音声通話をつないで、分からないところを話し合ったりしながら受講しています。特に支障はなく、むしろ通学時間が有効に使えて快適に授業を受けています。図書館へ気軽に行けないのが少し不便なくらいですね。

4年生での研究室配属に先立ち、その雰囲気が体験できる「プロジェクト研究A」では、3Dプリンターを使ったプロジェクトに参加させていただいており、とても楽しいです。友達とはキャンパスで会えない分、ボイスチャットアプリやSlackなどのコミュニケーションツールを使って情報交換などをしています。オンライン授業は課題が多く、提出し忘れる恐れがあるので、「この課題いつまでだっけ?」と、よく確認し合っています。

――今後の目標などを教えてください。

サークルでのプレゼンの様子(2020年1月)

ものづくりは「日常生活のちょっとした不便を解決できるモノ」をコンセプトにしています。現在製作中のものについて詳しくは話せませんが、ソフトとハードの両面をうまく連携させることでより面白いものができるのではと考えながら取り組んでいるところです。

将来はIT業界に進みたいと漠然と考えています。いろいろなアイデアを考え、発表したりするのが好きなので、新しい製品を構想・開発できるような仕事に就けたら楽しそうだなと思っています。

第758回

【プロフィール】
埼玉県出身。市立浦和高等学校卒業。趣味はゲーム・アプリ製作、Webアプリ製作、電子工作。リフレッシュ方法は近所のホームセンターへ行くこと。「隅から隅まで商品を眺めると、知らない商品がたくさんあって楽しい」と語る。
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