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タモリも注目! 早大建築学科生のアイデアがさく裂した設計演習A万国博覧会

創造理工学部建築学科2年の有志が、1年次に履修した「設計演習A」で制作した作品を集め、8月3日から5日の3日間、早稲田キャンパス27号館地下1階のワセダギャラリーで「設計演習A万国博覧会」を開催しました。設計演習Aは、ユニークな課題に対し、学生が柔軟な思考とアイデアを駆使して作品として表現する早稲田大学建築学科の名物授業。課題の一つ「役に立たない機械」は7月に『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系列)でも取り上げられ、話題となりました。博覧会の代表を務めたのは創造理工学部2年の永尾美沙さん。開催の経緯や授業への思い、将来の夢など話を聞きました。

「福祉と建築をつなぐ仕事がしたい」

創造理工学部 2年 永尾 美沙(ながお・みさ)

――まず、「設計演習A」の授業について教えてください。

タモリ倶楽部で「最優秀賞」を受賞した湊明人さん(創造理工学部2年)の作品『耳時計』。長針・短針を取り外して秒針だけにすることで、時が刻まれる音を聞くことができるようにした(提供:設計演習A万国博覧会)

設計演習はAからGまであり、1年生の秋学期に履修するのがAです。必修科目ではありませんが、課題の一つ「役に立たない機械」の作品が『タモリ倶楽部』で何回か取り上げられていることもあり、とても人気の授業です。昨年度も約160名いる学科生のうち、120名ほどが履修しました。

担当の先生は、中谷礼仁先生(理工学術院教授)、矢口哲也先生(理工学術院任期付教授)、美術家の小阪淳さん、建築家の山崎健太郎さんの4人で、それぞれ専門分野やバックグラウンドが異なり、物事の捉え方はさまざまです。学生は4つのグループに分かれ、3週ごとのローテーションでそれぞれのスタジオを順番に回り、デッサンやテーマに沿った立体作品を仕上げていきます。

早稲田の建築学科は来年で創設110年を迎えますが、当初から製図、意匠論、都市計画など、現代につながる多様な分野を網羅しており、基本的なカリキュラムがずっと変わっていないところが特徴です。設計演習Aも伝統的な授業ですが、建築そのものを学ぶのではなく、建築を考える以前のプロセス能力を鍛える授業で、物事をさまざまな視点から捉える力を身に付けていきます。この授業は自由な早稲田だからこそ設置されたのだと感じています。実際に、同じ課題を出されても作品は各人で全く違います。私はこの授業を経て、「個の多様性」を学ぶことができたと強く思っています。

――「設計演習A万国博覧会」で永尾さんは代表を務められたのですよね。

デザインが得意なメンバーが手掛けた「設計演習A万国博覧会」のポスター。展覧会の時期や場所、タイトルは毎回は有志が決める

博覧会の開催は必須ではありませんが、ここ10年位続けて開いています。私が早稲田大学の建築学科を目指したきっかけも、実は設計演習Aの展示を見たことでした。私は幼少のころ、自宅の建て替えをきっかけに建築やインテリアになんとなく興味を持つようになり、高校生のときにこの会のことを知って見に行き、「私もやりたい」「早稲田に入りたい」と思ったんです。そんな経緯もあり「設計演習A」の履修生全員が参加しているLINEグループで「私たちもやろう」と提案したところ、89人が賛同してくれたんです。その内17人が運営メンバーとして手を挙げてくれて開催に至りました。

――「早稲田の英知を無駄使い! 役に立たない機械2019」として『タモリ倶楽部』でも紹介されました。課題や永尾さんの作品についても教えてください。

『タモリ倶楽部』で紹介された「役に立たない機械」は、中谷スタジオで長年出されている課題の一つです。タモリさんが面白がってくれていて、番組で取り上げられるのは2年ぶり5回目と聞いています。私も「役に立たない機械」をテーマに作品を作りたかったのですが…学生はローテーションでスタジオを回るので、希望の課題に当たるわけではありません。運もありますね(笑)。

私は、山崎スタジオの「持ち運べる建築」という課題で「Yes, Fall in Love」という作品を制作しました。建築は車と同じで、強度と機能性と美しさで成り立っています。車との違いは、建築物が地面に固定されていることです。でも課題は持ち運べる建築。試行錯誤した結果、カップルが「いい雰囲気になれる空間」を傘とタイトルで表現しました。

永尾さんが制作した作品「Yes, Fall in Love.」(提供:設計演習A万国博覧会)

発想の原点は姉でした。私の姉は精神・身体に障がいがあります。それで個人的に障がいや福祉のことも勉強しているのですが、自閉症などの障がいを持つ人は聴覚や視覚が過敏で、全てをシャットアウトして、一人で静かに過ごしたいと思う特性があります。最初はそんな方を外的要因から守ってあげられる空間があればと、傘で表現することを考えていました。ただ、歴史をひもとくと、建築物は類人猿が子孫を作り、家族を守る空間を作ったことが始まりでもあるので、「建築とLove(愛)は密接な関係なんじゃないか!?」「建築は男女が仲良くなる空間だ!」と考えるようになり、最終的にこの作品にたどり着きました。スタジオ内の講評会では「現代の少子化」を切り口に発表しました。

――話題の博覧会ということもあり、大変だったこともあったのでは? 準備はどのように進めたのでしょうか?

代表として当初はいろいろと心配でしたが、運営メンバーがみんな優秀で、デザインにたけている人がチラシを作り、プログラミングが得意な人が専用Webサイトを制作するなど、それぞれが得意分野を受け持って進めてくれました。会のタイトルをどうするか夜遅くまで議論したり、約150点の作品を当日まで管理したり、教授に展示構成の承認をいただくために平面図を制作したりと、大変なこともありましたが、私にとっては終始楽しい時間でした。

デザイナーの小阪先生(前列左から3人目)と有志運営メンバー(前列左から4人目が永尾さん)

今年は受験生に見てもらうことを目的に、オープンキャンパスの時期に合わせてワセダギャラリーで開催したのですが、3日間で約850名の方に来場いただき、高校1年生からは「文系だけど、こんな楽しいことができるなら理系も考えてみようかな」と直接感想を言ってもらえました。一番うれしかったのは、アンケートで20代のデザイナーの方から、「何にでも新鮮に取り組める若いパッションを忘れないように…自分も頑張ろうと思いました」とコメントをいただいたことです。課題も博覧会の準備も頑張って良かったと思えた瞬間でした。

博覧会の様子

――今後の目標や将来の夢などを教えてください。

将来は福祉施設の建築など、福祉と建築をつなぐ仕事をしたいと考えています。高校2年生だった2016年7月に、相模原障害者施設殺傷事件がありました。もし姉が入所していたら被害者になっていた可能性もあり、他人事ではないと、すぐにお花を手向けに行きました。あの事件では、犯人の人格や施設の雇用問題などがマスコミなどで取り上げられましたが、現場を見たとき、私は建築的な問題があるのではないかと直感しました。というのも、人が暮らす場所なのにすごく閉鎖的な場所に見えたからです。施設がもっと地域に開かれた建築物だったら、もしかしたらあのような悲惨な事件も起こらなかったのではないかと思い、そのときに自分がやりたいことはこういうことだと気付きました。

これまで各地の施設を見に行っていますが、今は奈良県にある施設が理想の形だと考えています。そこには重度の障がい者が作った作品や絵を展示・販売するスペースがあり、カフェが併設され、地元のご老人がコーヒーを飲みに来るなど、「普通の日常」が存在しています。壁もほとんどない開放的な空間で、障がい者施設でありながら、工房であり、ショップであり、カフェでもあるんです。そんな建築物を自分で作っていけたらと考えています。

第741回

【プロフィール】

埼玉県出身。広尾学園高等学校卒業。中学・高校では吹奏楽部に所属し、打楽器(ティンパニとマリンバ)を担当。高校生のときに「東京都吹奏楽コンクール地区予選」で銀賞を受賞した。課題に追われる中、授業期間中は自宅がある所沢でアルバイトをし、長期休みには福祉の勉強のため、保育施設で医療的ケアが必要な乳児をサポートするアルバイトをしている。「建築学科はみんなで授業を受けることが多いので、学生同士仲が良く、助け合って楽しく勉強ができている」と語る。趣味はクラシックやジャズを聴くこと。課題が一段落するたびに友人と食事会を開いてリフレッシュ。今はドラマ『stranger things』(Netflix)にはまっているそう。

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