野菜本来の味ってどんな味?
「ほぼ野菜レストラン Shy」
「お口に合いますか?」と、優しい店主の声が届きます。「野菜本来の味がして最高です」と私は答えました。このお店を見つけたことが、今のところ今年一番の収穫です。
早稲田キャンパスの正門を出て早大通りの並木道を数分歩くと、「ほぼ野菜レストラン Shy」に着きます。店名の一部「Shy」は、早稲田大学にゆかりのある世界的舞踏家・室伏鴻さんが、生前、南青山で運営していた実験的キャバレーShyの名からきているそうです。長年室伏さんのマネージャーを務めていたオーナーが、2016年にこの場所に室伏さんの資料をアーカイブするためのカフェをオープンしました。
写真左:外観。早稲田キャンパスの正門から神楽坂方面へ、ケヤキ並木が続く早大通りを歩くと左手に見えてくる
写真右:15~16名入ることができる店内は、友人宅を訪れたような落ち着ける空間
食事も提供する「ほぼ野菜レストラン Shy」としてスタートしたのは今年の8月です。コンクリート打ちっ放しの壁と木目調のテーブル、2面の窓から光が差し込むモダンとレトロが調和するダイニングは、身を置くだけで時間の流れを穏やかにしてくれます。私の知る、せわしない早稲田の姿はそこにはありません。訪れたお客さんたちがお気に入りの単行本を片手に、ゆっくりランチを楽しんでいます。
メニューは「野菜プレート(玄米付き)&スープ(または味噌汁)」の1種類のみ。優柔不断な方でも迷うことはありません。野菜プレートは、山形から直送される20種類以上の「伝承野菜」を、さまざまな味付けで玄米と一緒に味わうことができるぜいたくな一品です。伝承野菜とは「固定種野菜」とも呼ばれ、長い年月をかけてその野菜のほぼ80%の性質を固定したもの。私たちが日々口にしている、種のできない一代交配種の野菜とは大きく性質が違うのだそうです。オーナーいわく、「50年前の日本人が食べていた野菜だと思ってもらえたらいいかも」とのこと。このように食欲と同時に興味をそそられる野菜でもありました。
野菜の種類は収穫時期によって替わります。この日は、UFOカボチャのココナッツオイル焼き、ナスのしぎ焼き、マッシュポテトのオリーブオイルあえ、プチトマトの塩麹(こうじ)あえなど。バラエティー豊かな面々に笑みが隠せません。みずみずしくて甘い、野菜本来の味に味覚が研ぎ澄まされる感覚は癖になりそうです。それぞれの味付けが役割をわきまえていて、主張しすぎることなく、主役である野菜を最大限に引き立てる見事な献身性を発揮していました。私も見習いたいくらいです。柔らかく炊かれた玄米と、ナスがたっぷり入ったお味噌汁も、体を芯から温めてくれます。
おいしくて体に優しい野菜と、都会の喧噪(けんそう)を軽くほっぽってしまえる落ち着いた空間…。ゆったりとした至福のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
(写真左)山形から2日に1回届く野菜を吟味するオーナーの渡辺さん。夏場は白瓜、ゴーヤー、冬瓜など、ウリ科の野菜が多いそう
(写真右)店内の一角にある室伏鴻さんのポートフォリオ。BGMはその日の気分で渡辺さんがセレクトする
店舗情報
【店名】ほぼ野菜レストラン Shy
【住所】東京都新宿区早稲田鶴巻町557 小笠原ビル1F
【TEL】080-5538-6407
【営業時間】11:30~19:00
【定休日】水曜(貸し切りの場合を除く)
【Facebook】hoboyasai
オーナーの渡辺さんより早大生へ一言
「お客さまから『伝承野菜を食べてから体調が良くなった』というお声をいただいています。近々お弁当も販売予定です。野菜プレートとほぼ同じ分量で800円と、少しお得です。ぜひ立ち寄ってみてください」