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2作品目でグランプリ受賞 下北沢本多劇場公演も控える「劇団あはひ」

「お客さんあっての演劇。いろいろな人に見てもらえるようになるのが1番の目標」

文学部 3年 大塚 健太郎(おおつか・けんたろう)

日本全国の舞台芸術団体の優れた作品を、より多くの観客と分かち合うことを目指すフェスティバル「CoRich舞台芸術まつり! 2019春」において、早稲田大学の学生が中心となって活動する演劇プロデュース集団「劇団あはひ(読み方:あわい)」の『流れる――能“隅田川”より』が、86作品の中から見事グランプリを受賞しました。最終選考に残った10団体の中で最も上演歴が浅く、2017年の結成後わずか2作品目での受賞には、今後の活躍を期待せずにはいられません。そこで、この作品の脚本・演出を務めた大塚健太郎さん(文学部3年)に、劇団あはひの結成経緯やこれまでの活動、そして今後の目標などについて話を聞きました。

――「劇団あはひ」の結成経緯や名前の由来を教えてください。

大学に入って最初に受けた授業が第2外国語のドイツ語で、そこで隣の席になったのが、共同主宰である松尾敢太郎(文学部3年)でした。松尾は役者をしていて、自分は脚本を書くことに興味があったので意気投合し、新歓で演劇サークルの公演を一緒に見に行きました。でも、あまりピンとこなかったので、それなら自分たちで立ち上げようと松尾が誘ってくれたんです。もう名前も決めてあるから! と言われたのが、それぞれの名前から一字取った「かんけん隊」(笑)。それはないなと、他の案を考える中で「かん」「けん」と両方読める漢字「間」にたどり着きました。そして人間、空間、時間、せりふの間など、演劇で重要そうな事柄がたくさん詰まったこの漢字の古語「あはひ」にすることに。同じくドイツ語の授業で一緒だった小名洋脩(文学部3年)にも声を掛けて、その年の9月頃に「劇団あはひ」を結成しました。

――劇団内での役割や、劇団の特徴を教えてください。

(左から)松尾さん、大塚さん、小名さん

僕は脚本と演出、松尾は役者、小名は制作・ドラマトゥルクを担当しています。その他に、結成翌年、初舞台のために開いたオーディションで集まったメンバーが、今も中心となって活動しています。作品のベースとなっているのは落語や能などの古典です。そのため、執筆作業は題材とする古典に関する資料収集から始め、150~200冊くらいは読み込みます。その後、話の骨格が決まったら稽古を進めつつ形にしていくのですが、いつも脚本を書くのが遅くて稽古がずれ込んでしまい、メンバーには相当苦労を掛けています。

――2作品目の『流れる――能“隅田川”より』が「CoRich 舞台芸術まつり! 2019春」でグランプリを受賞しました。まず、作品について教えてください。

能楽師・安田登さんの著書『あわいの力「心の時代」の次を生きる』(ミシマ社)を読んだ際に受けた印象を発展させました。作品のベースは能「隅田川」(※)ですが、『おくのほそ道』が能のワキ(主役の相手役)としての慰霊の旅だという安田さんの説から、松尾芭蕉と弟子の曾良を登場させました。また、当時、記号表現に興味があり、能の記号的な身体と、手塚治虫の唱えていた「マンガ記号論」に一種の親和性を覚えたので、子方の代わりに鉄腕アトムと天馬博士も登場させました。「泣く」様子を能でただうつむく姿で表現するのと、漫画で過剰に号泣させて次のコマでは泣きやませているのとは、記号表現であるという点で共通しています。そこにあるのは過大か過少かというベクトルの違いだけです。これらを融合させつつ、演劇でモンタージュが実現できないかと考えたんです。また、この作品では、初めてプロの役者の方々にも参加していただきました。作品を成立させるためにも、自分たちの成長のためにも必要なことだと考えましたし、実際その通りだったと思っています。

(※)母親が子の行方を尋ねて京都から武蔵国の隅田川までやってきた。船頭から、京で誘拐された子がこの地で亡くなったと聞かされ、それがわが子だと知った母親は嘆き悲しむ。その晩、船頭に案内された墓で大念仏に加わると、子が幻となって現れる、という話。

『流れる――能“隅田川”より』のワンシーン

――グランプリを受賞する自信はありましたか?

まだ2作品目だったので自信は全くなく、最終審査に残ったことも驚きでした。審査員の方々には、「古典(テキスト)を読解する」という、意外と珍しいらしいアイデアやそのアレンジ、オリジナル性などを評価していただきました。そしてもちろん、プロの存在は大きかったですね。芭蕉を演じてくださった上村聡さん(遊園地再生事業団)は同コンクールで演技賞を受賞されました。

グランプリ受賞作は、2年以内に再演をすることになっています。演出や内容の面で新しく試したいことが自分の中にあるので、反省点を踏まえてよりよいものにしたいです。

古典をベースにしつつ、物語は現代にアレンジ

――今夏に北千住(東京都足立区)と美濃加茂市(岐阜県)で行った『ソネット』公演について教えてください。

早稲田小劇場どらま館ではない、学外施設で上演する初めての経験でした。北千住は元銭湯、美濃加茂は古民家が会場で、その造りを生かすためにそれぞれ異なる演出にしました。特に美濃加茂では「縁側」という内でもあり外でもある、極めて“あわい(間)的”な場を意識し、客席と舞台が、縁側を緩やかな境界線として明確には分かれないように空間を設計しました。

美濃加茂公演は早稲田大学と美濃加茂市との文化交流事業の一環だったのですが、1週間の滞在はまるで合宿のようでとても楽しかったです。

(左)北千住公演(BUoYにて)
(右)美濃加茂公演(みのかも文化の森「まゆの家」にて)

――文学部では文学科の映像・演劇コースに在籍しているそうですが、映像と演劇では違いますか? また、ご自身の作風をどう捉えていますか?

入学前まで演劇経験は無く、中学校の文化祭でクラス劇の脚本を担当した程度でした。でも、ちょうどその頃に宮藤官九郎脚本の『あまちゃん』(NHK)にはまったことをきっかけに脚本を書くことそれ自体に興味を持ち、早稲田に入学しました。もともとは演劇よりドラマや映画が好きで、演劇・映像コースの映像コースに在籍し、演習では映画を研究しています。

演劇と映像は「その場限りかどうか」という点に大きな違いを感じます。映像は確かに作品として残りますが、演技そのものはカメラのフレーム内で動いてOKが出ればそれで終わりです。でも演劇の場合は、本番を繰り返しながら演出を変えたり、会場による変化もあるんですよね。以前は映像ばかり見る人間でしたが、今はそんな演劇を楽しいと感じつつあります。

自分の作風については、時間軸の使い方やオマージュといった表現を「タランティーノっぽい」と指摘されたことが何度かありますが、どちらかと言うと好きな音楽であるヒップホップの思考や創作方法が根幹にある気がします。ヒップホップは過去の楽曲をサンプリングし組み替えて新たな音楽を創り出すんです。映画や音楽がトリガーとなってアイデアが生まれることが多いです。

――これからの課題や今後の目標、活動について教えてください。

稽古期間において作家と役者で努力する時期が分かれてしまっているのが課題です。3作品目ではみんなで資料読みをしたり、勉強会を開いたりしましたが、まだ改善の余地があると思います。

公演に向けてメンバーで勉強会を開催

作品としては、ベースとなる作品についての知識に関係なく、どんな方にも楽しんでもらえるものを目指しています。ただ今後は、必ずしも古典に限らない方向性も模索していきたいと考えています。そして、お客さんあっての演劇だと思うので、いろいろな人に見てもらえるようになるのが1番の目標です。

来年2月には下北沢の本多劇場で『どさくさ』を再演します。2020年からプログラムの公募制を導入すると聞いて応募したものの、まだ学生で経験年数も浅いので採択されるとは思っていませんでした。演劇のメッカとも称される憧れの場所での公演は、喜びよりも、どらま館の6倍近くもある客席が埋まるのかという不安が大きいです(苦笑)。『どさくさ』は自分たちの処女作で、1番心残りのある作品でもあるので、当時よりいくらかは成長した姿をお見せしたいです。

旗揚げ公演『どさくさ』はどらま館で上演

第738回

【プロフィール】
神奈川県出身。公文国際学園卒業。中学・高校では陸上部に所属(種目は走り高跳び)。村上春樹や重松清といった好きな作家の出身校である早稲田大学に入学。2017年9月に松尾敢太郎、小名洋脩と共に「劇団あはひ」を結成。2018年6月『どさくさ』(作・演出 大塚健太郎)にて旗揚げ。「最初に誘ってくれた松尾をはじめ、劇団員たち全員に感謝している」と語る。趣味は映画・音楽・ラジオなど。

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