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早大生猟師「スーパーに並ぶ解体された肉のありがたみ」が分かりますか?

「狩猟を通して、生態系の変化への問題意識が強くなりました」

大学院環境・エネルギー研究科 修士課程 2年 片桐 裕基(かたぎり・ゆうき)

初めての銃猟は地元の『中日新聞』(2018年11月20日)でも取り上げられた

イノシシやサルを始めとする野生鳥獣による人間や農作物への被害、いわゆる「獣害」がニュースで流れる一方、野生の鳥獣肉を使ったジビエ料理が話題になったり、女性狩猟者が「狩りガール」として注目されるなど、若い世代にも狩猟への関心が高まりつつあります。全国の猟友会が高齢化・後継者不足に直面している中、大学院環境・エネルギー研究科に通う片桐裕基さんは、大きな期待を背負ってイノシシの日本三大産地の一つといわれる地元、岐阜県郡上市で猟師として活動しています。そんな片桐さんに狩猟の活動内容や研究、将来のことなど話を聞きました。

――まず、狩猟に興味を持ったきっかけは何ですか?

もともと動物好きでしたが、大学3年の冬に狩猟に関するテレビ番組を見たのがきっかけです。すぐに父が知り合いの猟師に連絡を取り、その週末に猟へ連れて行ってくれたことが大きかったです。シカやイノシシをどう捕まえるかということへの関心が強くて、獲物を追い込む役割の「勢子(せこ)」が猟犬を使って捕まえる方法を面白く感じました。あとは山に登って自然の中を歩き回るのが純粋に楽しかったです。

――狩猟には資格が必要ですか?

狩猟免許が必要で、網猟、わな猟、第一種銃猟(装薬銃、空気銃)、第二種銃猟(空気銃)の4種類があります。僕は大学4年でわな猟、大学院1年で第一種銃猟免許を取得しました。わな猟は地元の釣り仲間と一緒に取りました。箱や輪などのわなを仕掛ける狩猟スタイルですが、地元の人たちは銃猟がメインなので、教えてくれる人がいないんです。だから自分たちで考えながら挑戦したものの何も捕れず…。そんな経験から銃猟の必要性を感じ、翌年に第一種銃猟免許を取得しました。

免許試験は適性(視力、聴力、運動能力)、知識(筆記)、技能(鳥獣判別、猟具取扱、目測)の3種類がありますが、内容や難易度は各都道府県によって異なります。また、猟銃については警察から銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)に基づく所持許可が必須で、身辺調査もあります。許可を受けた後も、猟銃操作や射撃技能の維持向上の努力義務が課されるので練習が必要です。狩猟には銃などの道具費用に加え、申請手続きなどもあり、初期費用は僕の場合20万円ほどかかりました。毎年の狩猟税や射撃練習にと費用がかさみます。

――銃猟免許取得後、初めての銃猟は昨年11月とのことですが、いかがでしたか? 銃の扱いは緊張しそうですね…。

銃を持っていなかったときはよく動物に遭遇したので、銃猟に出たらたくさん捕れるねと言われていたのに、全く遭遇しなくなりました。「銃を持つと『殺気』が出る」と猟師の間ではよく言うのですが、動物は本能でそれを感じ取るのかもしれません。

猟銃は3kg程あり、それを持って山中を歩くのは体力も気力も使います。銃を扱う際は、弾が入っていないことの確認、弾装てん時の銃口の向きなど、注意することがたくさんあります。今年1月、郡上市の隣の下呂市で猟銃暴発による猟師の死亡事故が起きたこともあり、銃猟に出るときはもちろん、常日頃から緊張感を持つよう先輩たちから言われていて、銃器を扱う責任の重さを感じます。

猟犬を連れて山道を歩く

――狩猟の流れを教えてください。

イノシシなどの大物猟の期間は11月中旬から翌年3月中旬までと決まっています。地元では、雪が多いと山中の餌が雪に埋もれるので食料を求めて動物が麓に出て来るとか、足跡が残って見つけやすいと考えられています。昨シーズンは暖冬で雪が少なく出だしは遅かったですが、9回猟に出ました。

僕が参加している猟隊は、日曜日に2~4カ所を5~10人で狩猟します。20~30人で活動している隊もあるので小規模のようです。当日の朝にイノシシや鹿がどの山にいるかを足跡などから予測します。そして犬をどこから使ってイノシシたちを追い込むかなど作戦を立て、ルートを決定します。勢子が犬をうまく使って、実際に仕留める役割の「マチ」が狙う方向に追い込めればいいのですが、動物が相手なので作戦通りにいかないことも多いです。

シカを捕獲

――そもそも、狩猟の目的は何ですか? また狩猟活動を通して考え方に変化はありましたか?

捕獲したシカの毛皮を持った片桐さん

有害鳥獣対策、趣味、食べることなど、人それぞれです。犬と一緒に活動することに面白さを感じると言う人もいます。僕の場合は動物を捕まえたい気持ちが強く、それは趣味の魚釣りと共通する部分ではあります。人類はかつて狩猟採集社会であったと考えられていることからも、狩猟は古代から受け継がれてきた人間の本能だと思います。とは言うものの、動物をあやめる行為は現代社会において万人に受け入れられることではないことも承知しています。一方で、狩猟をしていると地主から「捕まえてくれよ」と、お声掛けいただくことも多く、有害鳥獣対策という面で地域社会に貢献していると実感する機会もあります。また、狩猟を通した幅広い世代の方たちとの交流やチームプレーにも、面白みを感じるようになりました。

獲物はしっかり最後まで食べることが、動物に対する礼儀だと思っています。そのため、捕獲後は腐らないように腹出し(内蔵処理)や血抜きをした上で解体処理を行います。狩猟の一連の流れを通じて、動物が食肉として処理・加工される過程を想像できるようになったこともあり、スーパーに並ぶ肉の本当の価値に気付くことができたように思います。店頭に商品として並ぶまでに関わった人たちや動物に対してありがたみを感じるようになりましたし、本来、肉を食べるのはこれだけ大変なことなんだと狩猟のたびに実感します。

(左)イノシシを狙って発砲する直前の様子
(右)捕獲直後に行う腹出し作業。これまでに60kgサイズのイノシシを捕獲したこともある

――ところで、早稲田の大学院に進学しようと思った理由を教えてください。

西早稲田キャンパスにある研究室にて

学部生時代は同志社大学で電気工学を専攻していましたが、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーに関心があったのと、自然の中にダムを建設した結果、魚がいなくなったという話や、釣りや狩猟を通して、生態系の変化への問題意識が強くなりました。そこで大学院では再生可能エネルギーの研究をすることにし、せっかくなら環境を大きく変えようと早稲田に進学しました。

昨年の秋から3月頃までは研究が特に忙しく、狩猟シーズンとも重なって大変でしたが、必要単位は取得したので、今年は修士論文に集中しています。研究は楽ではありませんが、意義を感じながら取り組めています。

――研究が忙しそうですが、猟師としての活動を地元ですることに理由はありますか? また、将来の夢について教えてください。

狩猟は教科書や正解があるものではなく、人の経験値によるところが大きいと感じています。だから初めての猟からお世話になっている地元のベテラン猟師の方々と一緒に活動することで学び、受け継ぎたいと思っています。

修士課程修了後は商社への就職を考えています。研究と直結するような電力会社やプラント業界なども検討しましたが、商社ならそういった業界とつながりを持って幅広く働けると思ったんです。人間だからこそできる営業やクリエーティブな業務に就き、研究室での取り組みをビジネスにつなげて社会実装させたいです。

狩猟は今後も続けたいですが、地元の猟友会は60歳以上の猟銃所持者が多く、僕が最年少なので、同世代が増えたらいいなとは思います。釣り仲間にも銃猟免許を取得してもらっていつか一緒にできればいいですね。

捕獲した動物をしっかりといただくため、仲間とバーベキュー

第736回

【プロフィール】
岐阜県郡上市出身。県立郡上高等学校卒業。同志社大学理工学部電気工学科卒業後、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科修士課程へ入学し、中西要祐特任教授の研究室に所属。釣りが好きで全国各地を巡るほど。また、大学生時代にはスケートボードにはまっていたそう。好きなジビエ料理はボタン(イノシシ)鍋。

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