


学業、サークル、アルバイト、就活、趣味、遊び、SNS─。
学生の日々は、やりたいこととやるべきことであふれています。
「時間がいくらあっても足りないのに、ショート動画で時間を浪費してしまった」
「やりたいことがありすぎて、どう優先順位をつけたらいいのか分からない」。
そんな“時間の使い方”に関する悩みを抱える人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、フリーアナウンサー、メガベンチャー企業代表、学生起業家と、
異なる立場から「時間」と向き合う3人の校友・在学生が登場。
三者三様のタイムマネジメント術を伺いながら、学生の今だからこそ考えたい、
時間との向き合い方のヒントを探っていきます。
馬場 典子
(ばば・のりこ)
フリーアナウンサー。1997年早稲田大学商学部卒業。日本テレビにアナウンサーとして入社し、情報番組やスポーツ番組など多様なジャンルで活躍。2014年に退社しフリーに転身。テレビ・インターネット番組・執筆・イベント司会・ナレーション・大阪芸術大学芸術学部教授など、幅広く活動している。
岩槻 知秀
(いわつき・ともひで)
レバレジーズ株式会社代表取締役。2005年早稲田大学社会科学部卒業。大学在学中からIT企業でエンジニアとして経験を積み、卒業と同時にレバレジーズ株式会社を設立。現在はIT・医療・ヘルスケア・M&A・SaaSなどの領域で60以上の事業を展開し、グループ会社の取締役も兼務している。
小林 葵
(こばやし・あおい)
早稲田大学政治経済学部4年生。早稲田大学AI研究会の創設メンバーの一人で、3年生でAI関連事業を手掛けるトリクル株式会社を設立。学業と経営を両立している。また、✕(旧Twitter) では2万人以上のフォロワーに向けてAIの最新動向を発言している。

先輩たちは
どんな学生時代を
送っていた?
今「時間」で意識して
いることは?

Z世代の
タイムマネジメントは
AIが相棒

ゴールを明確にして
「やる、やらない」を
決める

迷う時間も、
動いた時間も、
全部自分だけの
財産になる
活躍する先輩たちは どんな学生時代を送っていた? 今「時間」で意識していることは?
──まず、先輩お二人は、学生時代はどのようなことに時間を使っていましたか?

岩槻
私は在学中に独学でプログラミングを学び始めました。時間の捻出については特別な工夫はしていませんが、自分が何に時間を使いたいかは、当時から意識していましたね。大学生の頃は、遊ぶことを諦めて、起きている時間のほとんどを勉強にあてていたんです。学費や生活費を稼ぐために日雇いアルバイトをしていた時期もあったのですが、勉強のためにコピーした資料を服の袖に隠して、隙を見つけては見ていました(笑)。
当時は仕事か勉強しかない生活を送っていたので、少しでも手が空いたら勉強する、というのが習慣になっていたと思います。
──岩槻さんは60以上の事業を束ねるメガベンチャーの代表として、学生時代以上に忙しい日々を送っているかと思います。現在はどのように時間を作っているのでしょうか?

岩槻
自分の時間がほしいときは、先に「ブロッキング」しています。事業のアイデアを思いつくためには、日々のインプットが欠かせません。そこで、毎朝9時半から11時はインプット専用の時間としてスケジュールを押さえ、その間は会議も連絡も一切入らないようにしているんです。
このように、自分のタイムマネジメントの基本はブロッキング、つまり「まとまった時間」をいかに確保するか、を意識しています。他にも、社員が自由に予定を入れられるのは、月曜日から木曜日までにしています。そうすると、金曜日にまとまった時間ができるので、集中して考え事をしたり、手を動かしたりしやすくなるんですよ。
60以上の事業を率いる岩槻さんの下には、社員から「確認してください」「判断してください」というメッセージが毎日大量に届きます。岩槻さんはこれらをSlack(ビジネスチャットツール)の「後で」機能に一旦全て集め、まとまった時間に一気に処理しているんだそう。届くたびに対応するのではなく、1カ所にためてからまとめてさばく。「ブロッキング」の考え方は、こうした細かなタスク処理にも応用できるようです。
コラム①
タスクは1カ所に
集めて、
まとめてさばく
──馬場さんは現在、フリーランスとして働かれていますが、会社員とは異なる時間管理の難しさがありそうです。

馬場
フリーランスは、仕事時間も勤務場所も決まりはありません。毎日のようにスケジュールが違います。そこで難しいのが、いつでもどこでもできる仕事を、いつどこでやるか。私の場合は、資料のチェックや原稿の執筆がそれに当たります。
いつでもどこでもできるのだから、早めにやるのが良いのは頭では分かっているのですが…それがなかなか難しい。特に私は、追い詰められないとスイッチが入らないタイプで、筆の乗りは締め切り直前がとても良いんです(笑)。
一方で、早めに取り掛かると、疑問を事前に解決できたり、関係者と意見交換する時間が取れたり確実に精度が上がります。このバランスをいかに取るかが、私の時間管理のテーマです。
「無駄な経験なんてないと思っています」という馬場さん。ショート動画やSNSを見る時間も、「視点を変えるとインプットの時間では?」と話します。その上で、「また何時間もSNSを見てしまった」と後悔しがちな人には、映画館や美術館などがお薦めだそう。強制的にデジタルデトックスできる場所で五感を使う時間は、オフタイムの充実感につながります。
コラム②
強制デジタル
デトックスで、
オフタイムの
充実感アップ
Gemini、Notion AI、ChatGPT Z世代のタイムマネジメントはAIが相棒
Gemini、Notion AI、ChatGPT Z世代のタイムマネジメントは AIが相棒
──現役学生の小林さんは、学業と会社経営を並行していますよね。「やりたいことはたくさんあるけど、暇があるとダラダラとスマホを見がち…」という学生も多い中、どうやってタイムマネジメントしているのでしょうか?

小林
私も、ショート動画を見続けて時間を溶かしてしまうことがあるので、その気持ちはよく分かります。それを防ぐために、オンオフ関係なく、今月やりたいこととやるべきことを月の初めに全部紙に書き出す作業を必ずやっています。「ネットショップで服を見たい」とか、ちょっとしたタスクも全部です。
一通り書き出したら、次はタスクごとに完了までどのくらいの時間が必要か、いつまでに終わらせたいかを書き添える。最後にその紙をスマホで撮影して、Googleが提供する生成AI「Gemini」に読み込ませるんです。そうするとGoogleカレンダーに予定が自動反映されて、事前に時間をブロックできるんですよ。
──Gemini以外にも、普段使っているAIツールはありますか?

小林
今一番使っているのは「Notion AI」です。文字起こしの精度が、他のAIと比べてとても高くて! いろんなことに使えるのですが、例えば、録音の許可をいただけた授業をNotion AIで文字起こしして記録するんです。
期末テスト前には、全授業の文字起こしを一つにまとめて「参考書」を作り、その中から重要なポイントをピックアップして、クイズを作ります。そうすると、効率的に試験対策ができるんですよ。もちろん、一連の作業にはNotion AIを活用しています。

馬場
私が学生の頃は、パソコンがやっと普及し始めた頃でした。携帯電話を持っている同級生も少なかったから、何をするにも紙が頼り。今の学生さんは、工夫次第で時間の使い方をいくらでも変えられるツールがそろっていて、うらやましいです(笑)。ちなみに、プライベートでもAIは使うんですか?

小林
はい。例えば、友達との旅行の計画って、みんなで集まって調べて、プランを決めて…と結構な時間がかかりますよね。
そこで最近は、友達とチャットを共有できるChatGPTで旅行用のチャットを一つ作って、それぞれが空いた時間に「この場所ってどう行くの?」「お薦めの観光スポットは?」と質問を投げていくようにしています。そうすると、AIが情報収集して整理までしてくれるので、わざわざ全員の予定を合わせて話し合わなくても、気付いたら計画の土台ができているんです。 隙間時間の積み重ねで旅行の準備が進んでいくのは、かなり時間の節約になっています。

馬場
すごい、今どきの旅行計画ですね!
「私、すっごくかっこいい革の手帳を持っているんです」と、鞄から取り出して見せてくれた小林さん。月初めのルーティンは、この手帳がお供なんだそう。そして、タスクが完了するとチェックを付けていき、月末に全てチェックされているのを見るのが好きなのだとか。
「かっこいいから、すぐ人前で開きたくなっちゃう(笑)。だから、自然とタスクを目にする機会も多くなるんです」
デジタルだけでなくアナログも活用し、難しく考えずに、まずは形から入ってみる。それも、タイムマネジメントを成功させる秘訣なのかもしれません。
コラム③
小林流
「形から入る」
タイムマネジメント術
自分はどうなりたい? ゴールを明確にして「やる、やらない」を決める
自分はどうなりたい? ゴールを明確にして 「やる、やらない」を決める
──学生のタイムマネジメントに関する悩みや相談について、皆さんにお答えいただきます。まずは、小林さんからお二人に相談があるそうです。

小林
学びたいことがたくさんあるのですが、限られた時間の中で優先順位を決めるのが難しくて…。お二人がどうしているのか聞きたいです。

岩槻
人によりますが、自分だったら学べるだけ学びたいので、目的に沿わない時間を削りますね。学生のうちは時間があるので、目的に合いそうなもので、興味を持ったことは何でもやっておいた方がいい。全然ジャンルの違うことでも、いろんな知識が混ざり合うと、これまでにない発想につながることもあります。社会人になるとどうしても「目の前の仕事に必要な勉強」の優先順位が高まるので、選別するのはそれからでもいいんじゃないか、と。

馬場
私も、岩槻さんと同じ考えですね。いろんなことに手を出すと、最初はどれも中途半端でひっちゃかめっちゃかに感じるかもしれません。でも、自分が「これ面白そう」と思って選んだことなら、バラバラでいいから全部やってみてほしいです。
私自身、アナウンサーになったばかりの頃は料理番組、情報番組、スポーツのコーナーとジャンルの異なる番組を並行して持っていて、「知識も経験も、どれも中途半端」と悩んだ時期がありました。それでもしばらくやっていると、ある時バラバラだった点が一つにまとまって、アナウンサーとしてもう1ランク上にスキルアップできたんですよね。特に学生のうちは、学んだことの結果をすぐに求めなくていいと思います。

小林
あれこれ優先順位を考えすぎるより、まずやってみるのが一番ということですね!
──次に、『早稲田ウィークリー』読者から寄せられた、三つの相談にお答えいただきます。
「やる気が出ないときに
動く方法を教えてください!」

岩槻
遺伝学の研究で「やる気の57%は遺伝で決まる」ってデータが出ています。
ただ、43%は家庭ではなく非共有環境によるものです。周りにやる気のある人が多ければ多いほど、その影響を受けやすくなる。つまり、やる気を出したかったら、やる気に満ちあふれた友達をつくったらいいと思います。

馬場
あとは、一歩だけでいいから動いてみることも大事ですよね。部屋の片付けで例えると、一気に全部片付けるのは腰が重いけど、「この引き出しだけ」「5分だけ」なら頑張れそうじゃないですか。そして、不思議なことにいざ動き始めてみると、やる気スイッチが入って気付いたら部屋中が片付いていたりするんですよね。
「勉強、アルバイト、趣味、デートなど、
やりたいことがたくさんあります!
でも、全部やろうとすると睡眠や食事を
おろそかにしてしまいがち。
健康を維持しながらやりたいことを
叶えるにはどうしたらいいですか?」

小林
私はやりたいことが重なっているときは、ちょっと無理をしちゃうかも…。でもそれも、大学生の今だからできているのかな、と思います。

馬場
体が健康じゃないと、やる気も出なくなる。結果、やりたいことのうち何かを諦めざるを得なくなるので、大前提として健康であることはとても大事ですね。
私も若い頃はぎゅうぎゅうに予定を詰め込んで、その影響か1年に1回は高熱を出していました(笑)。ただ、そんな経験があるから、自分の心身の限界値を見極められるようになったのかな、とも思っています。自分の限界を知っていれば、休みが必要なタイミングも分かるようになりますよ。

岩槻
重要なのは、何を優先したいかを明確にすることです。そうすることで、注力すべきことはもちろん、「やらないこと」も決断しやすくなります。
「悔いのない学生生活を送りたいです。
大学生のうちに時間をかけるべきだと
思うことを教えてください」

馬場
アルバイトもして、テニスもやって、飲み会にも行って。今振り返っても、大学時代は忙しくも毎日楽しい日々を送っていたと思いますが、どれもいつでもできることだったな、とも感じていて。学生時代こそ長期旅行とか、まとまった時間を使わないとできないことに挑戦してほしいです。

岩槻
たしかに、長期旅行や留学などのまとまった時間は、社会人になると取りにくくなりますよね。それで言うと、語学留学はお勧めしたいです。事業においても、英語圏と日本語圏ではマーケットの規模や評価が全く違うんですよ。
英語を習得するだけで、日本という限られた市場を超え、世界中のマーケットへ挑戦できるようになります。ある説によると、大学卒業後8,000時間ほど英語学習を積めば、ビジネスレベルに到達するそうです。それだけの時間を確保できるのは、学生の特権です。
迷う時間も、動いた時間も、 全部自分だけの財産になる
──小林さんは、先輩お二人のお話を聞いてみてどんなことを感じましたか?

小林
お二人とも立場は全く違うのに、「とにかく行動に移す」というところは共通していましたよね。まず動いてみることで、自分に合った時間の使い方も見えてくるんだ、と感じました。だから私も、もっと行動したいなと。
今日のお話から、まずは海外で起業する方法を調べて、実際に現地にも行ってみようと思いました。こうやって人と話すことで新しい視点をもらえて、それが次の行動につながっていく。その実感を持てたのが、一番の収穫です。
──先輩お二人からは、タイムマネジメントに悩む学生の皆さんへメッセージをお願いします。

岩槻
社会人は既存の業務を抱えた上で新しいことを学ばなければならないけど、学生にはまっさらな状態でほぼ全ての時間を使って飛び込めるアドバンテージがあります。例えば今自分が学生だったら、AIを使って起業していたかもしれないですね。昔と比べて小資本でいろいろ挑戦できる時代ですから、その身軽さを存分に生かしてほしいです。

馬場
今はAIがきれいな言葉も画像もまとめてくれる時代。もっともらしい言葉は、誰でも言えるようになりました。
ただ、私はアナウンサーの面接をすることもあるんですが、「この人と一緒に働きたい」と思わせるのは、言葉のうまさじゃなくて、“その人自身の体験からにじみ出る説得力”なんですよね。だからこそ、限られた時間で何をすべきか迷っているなら、五感を通じて感情を揺さぶられるような体験に使ってほしいです。
取材・文
仲 奈々(2010年教育学部卒業)
デザイン・コーディング
株式会社ジェイツ・コンプレックス
撮影
丹下 仁






馬場
私は、指定校推薦で大学に入学しました。単位を落とすと母校の後輩に迷惑をかけてしまうと思ったので、授業は真面目に受けていましたね。あとは、テニスサークルに入り、カフェの接客や家庭教師のアルバイトをして、今より時代がのんびりしていました。
私、どうも欲張りであれこれやりたくなるタイプで、どれも諦めたくない(笑)。当時は今のようなデジタルツールはありませんから、紙の手帳にすき間を見つけると、パズルのように何かしら組み込んでビッチリ埋めていました。