誰もが文字で勝負できるのが、ネット大喜利の醍醐味(だいごみ)
泉水
僕たちは普段、学生芸人として漫才でネタをやっています。ただ、実は大喜利経験が全くなく…。プロの芸人さんは、どのような思考で面白い回答を生み出しているのでしょうか?
岩崎
大喜利のコツにもいろいろあると思いますが、やはりまず大事なのは“伝わること”。面白い・面白くない以前に、作り手の意図が伝わらないと、ウケるのは難しいです。その作品において、何を面白いと感じているか、自分の中に答えがあると良いと思います。

岩崎う大さん。大学時代は、小島よしおさんも所属していたお笑いサークル「WAGE」で活動し、在学中にプロデビューした

確かに、意図が伝わらないと、どこを笑えばいいかも分かりませんね。

昔は僕もよく失敗していました。とある大喜利ライブで、「宇多田ヒカルさんの次のアルバムのタイトルを教えてください」というお題が出題されたんです。僕が出した回答は「宇多田'sベスト」。自分の中では「ショボくて、単純過ぎるのが面白い」という意図だったのですが…MCの藤本敏史さん(FUJIWARA)に「普通やんけ」と返されて終わってしまったんです(笑)。頭で描いたニュアンスを、そのまま相手に伝えるのは案外難しい。この場合はおそらく、もっと極端に平凡なタイトルを言うべきだったのでしょうね。そうすれば、見ている人にも「さすがにひねりがなさすぎるだろ」という笑いとして伝わる。「自分がどこを面白がっているのか」を示す工夫が大切だと思います。

お笑いにもいろいろな形式がある中で、⼤喜利が得意な人はどのようなタイプだと思いますか?

大喜利も、面白い発想を生み出すという点ではコントや漫才と共通しています。普段からネタを書いている「作家タイプ」の芸人さんは、大喜利にも強い印象がありますね。ただし僕のように、ネタを書いても大喜利が主戦場ではない芸人もいるので、一概には言えません。作家タイプはいろいろと詰め込みすぎる結果、瞬発的なパンチに欠ける側面もある。逆に、書いたネタの評価では埋もれがちな人が、大喜利では勘が鋭かったりするのも面白いです。


大喜利はネタと違って、体を使わずとも発想一つで勝負できますよね。

そうですね。身ぶりや表情も重要になるネタの場合、演者のキャラクターも大いに評価されます。一方、キャラクターに頼れない大喜利は、誰が言ってもウケる答えが求められる。

特にネット大喜利は、文字だけの勝負ですね。

誰が言ってもウケるというのは、文字にしても面白いということ。例えばネタの台本は、読んでもさほど面白くはない。一方、優れた大喜利の回答は、字面だけでも楽しめる。大喜利は文字メディアでこそ、作り手の真価が発揮されるのではないでしょうか。

ネットの場合、MCのツッコミや合いの手も入らないですよね。

ライブやテレビだと、時間制限や会場の雰囲気、前の回答者からの流れがあり、余計な緊張が加わります。「自分のターンでスベって、その場の空気を壊したら嫌だな」みたいな…。ネットの場合は会場の雰囲気に左右されないので、自分だけの世界観を貫くこともできる。大喜利の醍醐味は、誰も考えたことがないような発想で勝負できること。せっかく参加するなら、自由気ままに、納得がいくまで考えてほしいですね。

「既視感」をそぎ落とした先に、オリジナリティーが残る

誰も考えたことがないようなオリジナリティーのある発想は、どこから湧いてくるのでしょうか?

ひたすら自分だけの世界を追求するのは、難しいこと。むしろ、「この回答は、どこかで見たことがあるな」と感じるような既視感のある要素を、一つずつ除外していくのが良いかもしれません。

そういったセンスを磨くにはどうすれば良いですか?

クイズや脳トレと一緒で、名回答にたくさん触れたり、数をこなしたりすると、ある程度レベルを高められます。大喜利にも型(かた)のようなものがあり、王道が分かっていると、逆転の発想で攻めることもできる。発想の飛ばし方を学んでいくと、少しずつ上達できるはずです。

う大さんは、これまでたくさんの大喜利を見てきた中で、「忘れられない回答」はありますか?

NHKで『着信御礼! ケータイ大喜利』という視聴者参加型の大喜利番組があったんです。その中で、「『このサーカス団、地味だなぁ』その地味さ加減とは?」というお題に、「カニも出る」という回答があって…(笑)。僕は全然答えが浮かばなかったのですが、めちゃくちゃ笑ったのを覚えています。

素人なのに、ぶっ飛んでますね(笑)。

むしろ先入観がない素人だからこそ、発想できることがあるのかも。「だいぶ経営が苦しいのかな」とかサーカスの背景事情を頭に浮かべてしまうような奥深さのある回答に、当時駆け出しだった僕は「芸人としてやっていけるのだろうか…」と不安を感じたほどでした(笑)。
実践で学べ。岩崎さんとファルシーが大喜利に挑戦
今回は特別に、岩崎さんとファルシーの2人に、大喜利に挑戦してもらいました。
伝説の教授について、
知っていることを教えてください。

じゃあ、まずは僕から。


「昔は赤ちゃんだった」。

ははは!(笑)

予想外の角度でした(笑)。どこから発想したんですか?

なんだろう…。ベールに包まれているイメージかな。伝説って言われているけど、あらゆるうわさが錯綜し、もはや何が真実だか分からない。でも、「昔は赤ちゃんだった」ということだけは確かだよね? 「伝説」というワードの捉え方がポイントかもしれません。

僕も考えてみました。


「教えるのがうますぎて、“伝説”の語源になった」。

…語源に?(笑)

「伝説」という漢字が、「伝える」と「説く」から構成されることから発想したのですが…。どうでしょうか?

なるほど! だったら、「伝説の語源になった」までフリップに書いた方が良いかもね。その上で、「伝説」にはカギ括弧を付けると、もっと伝わりそう。

なるほど…。「より伝わりやすく」ということですね。こういうことですか?


語源“になった”まで書こうよ! カギ括弧もなんかマイナーなやつだし(笑)。

確かに! すみません(笑)。
卒業要件に追加された、
新ルールとは?

一般的には「単位」とか「卒論」とかだよね。そこをどうひねるかってことかな。

僕、行ってみます!


「ハサミを買う」。

…どういうこと?(笑)

美容専門学校の卒業要件を想定しました。

「卒業ではなく、それは初歩の初歩やんけ!」ということね。説明を聞くと理解できるけど、美容という要素を頭に浮かべなければ分からない。集中が散ってしまうのが難点かな。そもそも、僕たちが今、なぜここにいるかを考えようよ(笑)。早稲田大学の企画なんだから、専門学校は違うでしょ…! じゃあ、次は僕。


「友だちと呼べる人間を1人以上連れてくる」。

人間性を試してくるんですね(笑)。

リアリティーを出すために、一応「1人」に設定しました。これが10人とかになるとまた話が変わってきますけどね(笑)。
多くの早大生に、大喜利にチャレンジしてほしい

ネット大喜利は、老若男女問わず、誰もがフェアに勝負できるのが魅力。早稲田の現役学生だけが参加者というのもユニークです。もし僕がプロの芸人にならなくても、腕試しに参加していたでしょう。ぜひ気負わず、全力で楽しんでください。











恐れずに変な回答もバンバン送ってほしいです。せっかくなので、自分にしか思い付かないようなものを意識してみるのはどうでしょう! 面白い回答もうれしいですが、ヘンテコなものが生まれる場にもなってほしいです。
2002年政治経済学部卒業。在学中の2001年にプロデビューし、2007年に槙尾ユウスケ(2003年第一文学部卒業)とお笑いコンビ「劇団イワサキマキヲ」を結成。2010年にコンビ名を「かもめんたる」に改名。芸人、劇作家、脚本家、演出家、漫画家など、多岐にわたり活動中。サンミュージックプロダクション所属。
たった一言の答えに個性を出せるのが大喜利の魅力だと思います。クイズとは違って正解はないので、お題で思いっ切り遊んでみてください! 好きなワードを入れたり、実体験をヒントにしたりするもよし、です。たくさんの回答をお待ちしています!
2003年第二文学部卒業。2003年に近藤春菜とお笑いコンビ「ハリセンボン」を結成し、2004年にデビュー。現在はテレビやラジオ、CM、舞台などで幅広く活躍中。GATE所属。
初めまして! 友田オレです。大喜利ってホント自由ですよね。答えを熟考してもいいし、案外直感で答えた方がうまくいくこともあるし。なんだかプロポーズに似てますね。弔辞にも似ている。楽しい大喜利待ってます!
2024年文化構想学部卒業。在学中、「早稲田大学お笑い工房LUDO」(公認サークル)に所属しながら2022年にプロデビュー。2023年に「第44回 ABCお笑いグランプリ」決勝、「M-1グランプリ2023」準々決勝進出。2025年「R-1グランプリ2025」では史上最年少優勝を果たす。GATE所属。