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特集

大学院進学の決め手は? 院生3人に聞く院生活と学び

左から、亀井さん、陳さん、並木さん

「大学院って、実際どんなことをするんだろう?」。授業や研究、日々の過ごし方まで、大学院のことは意外と知られていないかもしれません。「興味はあるけれど、自分が進学するイメージまでは描けていない」、そんな学部生も多いのではないでしょうか。今回は、分野も背景も異なる3人の大学院生にインタビュー。大学院に進学しようと思った理由や、院生として過ごす日常、研究との向き合い方など、普段は見えにくい“院生活の中身”を聞きました。加えて、大学院についてよくある疑問をまとめたQ&Aも掲載。大学院進学を検討する際に、ぜひ役立ててください!

▼大学院創造理工学研究科:並木 海大(創造理工学部出身)
主体的な学びによる「成長」と「楽しさ」を両立

▼大学院法学研究科:亀井 雄太(法学部出身)
修士号と大学院生活で培ったスキルは、実社会での武器

▼大学院社会科学研究科:陳 雨児(社会科学部出身)
生活そのものが研究につながり、学びを日常で実践できる環境

◎大学院に関するよくある質問

主体的な学びによる「成長」と「楽しさ」を両立

大学院創造理工学研究科経営システム工学専攻 修士課程 2年 並木 海大(なみき・みはる)

早稲田キャンパス 3号館にて

――いつ頃から、大学院進学を意識するようになりましたか?

学部に入学した頃は、就職するか大学院に進学するか決めていませんでしたが、学部3年生の頃、蓮池隆教授の研究室に入ったことをきっかけに、一気に大学院進学への意識が高まりました。身近な先輩たちが国際学会で発表する姿や、それを後押しする研究室の環境を目の当たりにし、「自分も憧れの先輩方のように、世界の舞台で発表したい」と思うようになったんです。また、専門家による査読(※1)を通過し、学術的価値が認められた論文を発表したいという気持ちも芽生え、より多くの経験を積める大学院への進学を志しました。

※1 学術論文や研究成果の内容を、その分野の専門家が第三者として評価する仕組み

2025年12月、オーストラリアのメルボルンで開催された国際学会で発表した様子

――大学院入学試験に向けて、どのような対策をしましたか?

学部時代からコツコツと勉強を続け、面接試験が中心の学内推薦入試に出願しました。面接に向けては、「大学院で何をしたいのか」「何に興味があるのか」を明確に伝えられるよう意識し、研究室の先生に相談しながら自分の考えを整理しましたね。

そもそも大学院は、研究室ごとに雰囲気や研究方針が大きく異なるため、どこで誰から学ぶかが重要です。そのため学部3年生の時、実際に研究室を訪問し、自分に合った環境かどうかをしっかり見極めながら決めました。

――今、取り組んでいる研究テーマを教えてください。

研究で普段使用している参考書

トラックや船のコンテナに対して、最適な荷物配置を算出するアルゴリズムを研究しています。積載効率を高めることで、「CO2排出の削減」や「物流の2024年問題」(※2)といった社会課題の解決につなげることが目的です。

もともと幼少期から海が好きで、大型船で荷物を運ぶ光景にロマンを感じていたんです。そうした興味に加え、高校や学部で培ったプログラミングや数理最適化のスキルを生かせる分野として、このテーマにたどり着きました。

※2 トラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用されたことで、人手不足が深刻化し、輸送力の低下や配送遅延・物流コスト上昇が懸念されている問題

――学部生の頃と比べて、学び方はどう変わりましたか?

最も大きな変化は、自分の意思で能動的に学ぶようになったことです。学部時代は決められた授業をこなす受け身の学習が中心でしたが、大学院では興味のある授業を自ら選び、ゼミを主催・参加するなど、自ら主体的に時間割を組む生活へと変わりました。その結果、スケジュールを柔軟に調整でき、サークルやアルバイトも無理なく両立できています。また、学びの全てが自分の研究や関心につながるので、「もっと知りたい」と自然に思えるようになり、勉学・研究に対する負担感は大きく減りましたね。

静岡県伊東市の大室山にて。研究室の同期と伊豆川奈セミナーハウスに行き、研究だけではなく地元の鮮魚や自然を満喫したそう(右端が並木さん)

――修了後の将来の選択肢は、どのように考えていますか?

物流にも注力する総合デベロッパーに就職し、まちづくりの分野に進む予定です。所属する創造理工学研究科のモットーにもあるように、技術は社会実装してこそ真価を発揮します。これまで学んできた数理最適化や機械学習などの工学領域を、実際のまちや人々の暮らしに落とし込み、数十年、さらには100年先の社会において「この技術があったから生活が豊かになった」と実感してもらえるようなまちづくりに関わりたいと考えています。

 ――学部生にメッセージをお願いします。

「就職か、大学院進学か」で迷う気持ちはよく分かります。ただ、実際に進学してみて感じたのは、学部生の頃以上に日々充実しているということです。自分の裁量で時間を使えるからこそ、サークルや遊び、アルバイトも含めて、毎日を高い密度で過ごせますし、主体的に学ぶ2年間を通じて大きな成長も実感できます。楽しさと成長を両立できることこそが、大学院の大きな魅力だと感じています。

大学院創造理工学研究科
Webサイト:https://souzou.w.waseda.jp/

◆基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部の大学院進学について

基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部の約7割の学生が、大学院に進学しています。

◆大学院創造理工学研究科について

大学院創造理工学研究科は、建築学、総合機械工学、経営システム工学、経営デザイン、建設工学、地球・環境資源理工学の専攻に分かれています。専攻によって進路もそれぞれに特色があり、経営システム工学専攻・経営デザイン専攻修士課程修了者は、専門サービス業や電気機械器具製造業、情報サービス業などに進む学生が多いことが特徴です。詳しい学科・専攻別の進路は、こちらから確認してください。

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修士号と大学院生活で培ったスキルは、実社会での武器

大学院法学研究科 修士課程 2年 亀井 雄太(かめい・ゆうた)

早稲田キャンパス 2号館前にて

――いつ頃から大学院進学を意識しましたか? 

学部3年生になった頃です。ゼミの先生から「将来、世界で活躍したいなら修士号は大きな強みになる」と助言を受け、国際的なキャリアを意識して進学を考えるようになりました。ちょうど就職活動が始まる時期でもあり迷いはありましたが、社会に出るタイミングは2年遅れてもその分得られる価値は大きいと考え、進学を決意したんです。

――大学院入学試験に向けて、どのような対策をしましたか?

研究計画書の提出だけではなく、筆記試験や面接もある一般入試で出願したので、それぞれ対策を行いました。研究計画書の作成にあたっては、研究対象を国際法からロシア法へと変えたので、求められる知識の違いを意識しました。指導を希望する先生と面談し、「ロシア法の研究では何をするのか」などを聞きながら問題意識を整理し、その研究が「どう社会につながるか」という視点を意識して研究計画書に盛り込んでいます。

筆記試験では、特にロシア語の語学力が重要だと助言を受け、語学科目を最優先に1日6時間以上の学習時間を確保しました。ロシア語の文献読解や、ロシア連邦憲法の和訳を自作するなどして、語学力を鍛えたんです。また、面接に向けては、研究計画書の内容を基に、その問題意識に至った背景や、具体的な研究手法を自分の言葉で論理的に説明できるよう整理しました。

早稲田キャンパス 2号館にある院生専用の専修室での勉強風景。専修室では、違う研究をする院生と交流でき、例えば「ロシア法って何?」と聞かれるなど知的交流やちょっとした雑談もできるのが良いところだそう

――今、取り組んでいる研究テーマを教えてください。

渋谷先生からいただいた学術雑誌。クラシックという共通の趣味から、ロシア・ウクライナの作曲家やピアニストの話でよく盛り上がるそう

渋谷謙次郎教授の研究室に所属し、基礎法学の視点から、「ロシア法」を研究しています。学部生の頃は外交官を目指し国際法を学んでいましたが、学びを深める中で、「将来、自分が活躍する道はここではないかもしれない」と感じるようになりました。そこで、すでに学んでいたロシア語と、もともと興味のあったロシア文化、そして、法律に対する考え方が西洋諸国と大きく異なることにも面白さを感じ、ロシア法を専門に選んだんです。

――大学院の魅力はどんなところにあると感じますか?

異なる分野を極める人たちと語り合える場があることです。同じ法の領域の中でも、法哲学や法社会学、日本国憲法の専門家などと議論することで、自分一人では気付けなかった視点を得られます。例えば、日本の人権保障とロシアの制度を比較する問いを投げ掛けられ、研究を深めるヒントを得られたこともありました。

院生になり渋谷先生と初めて訪れた「森の風」(早稲田キャンパス 26号館15階)でランチをした際の一枚

――修了後の将来の選択肢は、どのように考えていますか?

研究能力や専門知識を生かせるシンクタンク業界を視野に入れています。大学院では文章を組み立てる時間が増え、大量の文献を読み込みながら、自分なりに解釈し論理的に再構築する力が求められます。こうして培った思考力や文章構成力、資料読解力を強みに、将来的には海外でも活躍できる人材を目指したいです。

――学部生にメッセージをお願いします。

自分で論理を組み立て、研究の道筋を描く大学院は、決して容易な環境ではありません。ただ、その分だけ大きく成長できる場でもあります。また、取得した修士号は、就職する際に一つの大きな武器になるはずです。というのも、2026年2月に約1か月間かけて留学生活を過ごしたアメリカで、修士号を取得した学生が、「専門的な知見や手法を学び、同時にそれらを現実の事象に当てはめ、理論立てて一つの資料にまとめるというスキルを得た」と話していました。そこで改めて大学院で学ぶことの意義を実感し、大学院で得た知見や手法に関するノウハウを実社会でも役立てるビジョンがより具体的に見えたんです。大変そうだというイメージにおじけづかずに、自己成長の機会として前向きに捉えて、興味があればぜひ一歩を踏み出してみてください。

大学院法学研究科
Webサイト:https://www.waseda.jp/folaw/glaw/

◆法学研究科修士課程修了後の進路

教育機関、官公庁、研究機関、民間企業など、多岐にわたる分野で活躍しています。また、修士課程修了後に博士後期課程へ進学し、研究をさらに深める学生も多いです。

主な就職先:総務省、文部科学省、地方公務員(茨城県職員、香川県職員など)、東京大学、(株)NTTドコモ、(株)朝日新聞社、三菱商事(株)、アクセンチュア(株)、裁判所事務官など

早稲田大学法学研究科パンフレットより。2018~2025年度の進路実績は、5月下旬ごろ公開予定。※クリックして拡大

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生活そのものが研究につながり、学びを日常で実践できる環境

大学院社会科学研究科 修士課程 2年 陳 雨児(チン・ユア)

早稲田キャンパス 14号館前にて

――いつ頃から大学院進学を意識しましたか? 

学部4年生の頃です。所属していたTAISI(社会科学部の英語学位プログラム)で多様な分野に触れる中、「社会問題には多角的な視点が必要だ」と実感しました。加えて、TAISIで実践的な学びは充実していた一方で、自分が関心を持つ環境問題について、より理論的かつ体系的に理解したいという思いが強まり、大学院進学を意識するようになったんです。

環境問題への関心は、幼少期の経験に根差しています。中国・北京の都市部で育ち、自然に触れる機会は多くありませんでしたが、園芸好きの祖父の影響で土に触れる中、「自然の寛容さ」を感じていました。成長するにつれて、大気汚染や気候変動を身近に実感し、「人間は自然の寛容さとどう向き合うべきか」を考えるようになり、環境政策や制度を深く学びたいと社会科学研究科への進学を決め、環境法を専門とする黒川哲志教授の指導を受けています。

――大学院に進むにあたって不安はありましたか?

言語の面での不安が一番大きかったです。学部の頃は全ての授業を英語で受けていたので、大学院では日本語で専門内容を理解・発信できるか不安を感じていました。でも実際に入学してみると、さまざまなバックグラウンドを持つ学生と助け合える環境で安心しました。授業ごとに使われる言語は違いますが、分からない言葉があっても、英語や日本語、中国語など、それぞれが得意な言語で教え合う環境があります。

ゼミで研究発表を行っている様子

――今、取り組んでいる研究テーマを教えてください。

食品ロスを減らしながら、社会の中で「食」を価値ある資源として循環させる仕組みを研究しています。特に、有機農業や都市におけるフードシステム、「ファーム・トゥ・テーブル(※3)」のような取り組みに注目し、それらが持続可能な食の在り方にどのように貢献できるのかを考えています。また、こうした実践が政策とどのように関わり合いながら、より循環型で持続可能な社会につながっていくのかという点にも関心を持っています。

※3 生産者と消費者が近い距離でつながり、環境に優しいサステナブルな食材を食卓に取り入れること

――大学院の魅力はどんなところにあると感じますか?

学びと日常が自然につながることです。学部時代は決められた時間割に沿って学ぶことが中心でしたが、大学院では自ら問いを立て、答えを探すことが求められます。そのため、授業外でも論文を読んだり考えを整理したりする時間が自然と増え、そうした日常の積み重ねがそのまま研究につながっていく感覚があります。

また、学んだことを生活の中で実践できることも魅力です。私の場合は、カリキュラム外でオーガニックファームに足を運び、土に触れながら食べ物が育つ過程を体感することで、研究テーマへの理解を深めていますね。

写真左:陳さんが通っている東京都板橋区にある都市農地「THE HASUNE FARM」で収穫した食材を使った料理
写真右:夏休み、北京に帰国した際に、有機農場で農作業ボランティアに参加したそう

――修了後の将来はどのように考えていますか?

人と人、人と自然との関係、そして社会全体の在り方が、よりやさしく心地良いものになることに関わりたいと考えています。子どもが安心して食事ができる環境や、自然の中でのびのびと過ごせる場など、日々の生活の中の当たり前を大切にできる社会づくりに貢献したいです。そのために現実の課題と向き合い、一人一人の暮らしに寄り添いながら改善していきたいと思っています。

――学部生にメッセージをお願いします。

進路の分岐点では、迷いや不安がつきものです。大学院進学を選んだ後も、「これで良かったのか?」と思うかもしれません。ただ、そうした心の揺れは自然なものですし、正解にこだわりすぎる必要はありません。今の自分の気持ちを信じて進路を選び、その先でまた考え直すこともできます。どの選択にもやり直しの余地があるので、過度に恐れず一歩踏み出してほしいと思います。

大学院社会科学研究科
Webサイト:https://www.waseda.jp/fsss/gsss/

◆大学院社会科学研究科の出身大学と進路先

大学院社会科学研究科の学びのキーワードは「学際」で、修士学生は50前後ある研究指導のいずれかに所属しています。学部を卒業したばかりの学生、実務経験の豊かな社会人、留学生など、多様なバックグラウンドを持つ学生が各国から集まり、社会的な課題に対しさまざまな視点から取り組んでいます。また、大学院社会科学研究科修士学生の出身大学は、約55%が外国の大学出身と国際色豊かな研究科です。修了後の進路は、小売業や出版業、情報サービス業などの民間企業から、国家・地方公務員など多様です。

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文:流石 香織
撮影:番正 しおり

大学院に関するよくある質問

Q. 大学院に進学した際の学費や奨学金が気になります。

A. 学費の情報は、入学センターWebサイトで一括して確認できます。

早稲田大学では、大学院生向けの多様な奨学金を用意しています。奨学課Webサイトでは、奨学金の一覧奨学金申込から採用までのスケジュールおよび奨学金制度の採用実績(受給状況など)についても掲載していますので、確認してみましょう。加えて、各研究科独自の奨学金制度も多く、入学前に申請できる奨学金制度を用意している場合もあります。さらに、全研究科の博士後期課程在学生を対象とした奨学金も充実しています。

Q. 修士課程を修了するのに2年かかるのが長く感じます。

A. 研究科によっては修士課程1年制を設けている場合があります。さらに、学部在籍中から先取り履修をすることで、2年分の学びを1年に凝縮して身に付ける「学部・修士5年一貫修了制度」を設けている研究科もあります。

Q. 就職状況が気になります。

A. 大学院生の就職活動では、学部生と比較して、さらに「課題解決力」を期待されるようになります。研究生活(自ら課題に対する研究計画を設定し、仮説を立て、検証・分析し、結果を論文にまとめたり、プレゼンしたりする)を通して「課題解決力」を身に付けることができれば、業種の選択の幅がぐっと広がります。

各研究科修了生の就職率・就職先はキャリアセンターWebサイト(2025年度の情報は5月下旬公開予定)や各研究科Webサイトで公開しています。

Q. 学部卒業後、一度就職してから大学院に入り直すことを検討しています。

A. 社会人経験を積んでから早稲田大学大学院で学び直す方も多く、中には社会人入試、AO入試などを実施している研究科もあります。また、働きながら学ぶ学生のために、夜間に授業を開講している研究科もあります。入学センターの専用Webサイトを活用し、自身のライフスタイルに合った研究科を探してみましょう。

大学院に関する詳細な情報は、各研究科のWebサイトなどで発信しています。また、入学センターWebサイトでは入試情報を始め、大学院の幅広い情報を提供しています。

▼他の研究科に在籍する大学院生について知りたい人は、下記関連記事のバックナンバーもチェックしてみましょう!

【次回Special Issue予告】5月18日(月)公開「タイムマネジメント術」

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