
戸山キャンパス 学生会館B202演劇練習室にて。左から、高橋さん、平松さん、大島さん
皆さんは早稲田で演劇を見たことがありますか? 演劇は伝統的な早稲田文化の一つで、これまでに多くの劇作家や脚本家、俳優を世に輩出してきました。現在は、個性豊かな演劇サークルが公認サークルだけでも20団体以上もあり、年間約80もの公演が学内で行われています。
今回は早稲田演劇の魅力を伝えるために、演劇活動に精力的に取り組む早大生にフォーカス。役者として、裏方として、劇場スタッフとして、早稲田演劇を盛り上げるべくどのような活動をしているのか聞きました。また公演以外で、早大生なら誰でも楽しめる演劇関連の企画やイベントも紹介してもらいます。演劇が盛んな早稲田にいるのに、観劇しないのはもったいない! ぜひ一度は公演に訪れてみましょう。
個性ある数々の演劇に触れられる環境は、早大生の特権
文学部 3年 平松 凜夏(ひらまつ・りんか) どらま館制作部 学生スタッフ、劇団くるめるシアター所属
政治経済学部 4年 高橋 佑(たかはし・ゆう) 演劇研究会、演劇倶楽部所属
教育学部 4年 大島 立暉(おおしま・たつき) 舞台美術研究会所属
劇場があることで得られる、早稲田演劇ならではの没入感
まずは、どのような活動をしているのか簡単に教えてください。
平松:私は劇団くるめるシアター(公認サークル。以下、くるめる)で役者(芸名:川崎夏〔かわさき・なつ〕)や裏方スタッフをする他、どらま館制作部学生スタッフとしても働いています。どらま館での主な業務は、多くの人に早稲田演劇へ興味を持ってもらうための企画制作から実施、広報など幅広いです。
写真左:2025年2月上演の『宵街ナイトパレード』(くるめる)に出演した平松さん(撮影:倉田そらさん〔ACTpath〕)
写真右:どらま館で働く平松さん。どらま館Webサイトに掲載する早稲田演劇の公演情報を更新しているところ
高橋:演劇研究会(公認サークル。以下、劇研)と演劇倶楽部(公認サークル。以下、エンクラ)の2つの演劇サークルに所属して、役者(芸名:さえぐさ佑〔ゆう〕)をしています。最近は、幅広く統括的に演劇を作ることができる脚本家・演出家としても活動中です。
大島:自分は舞台美術研究会(公認サークル。以下、ぶたび)で照明を担当しています。ぶたびはいろんな演劇の舞台セットと照明を請け負う裏方専門の集団なので、演劇サークルの中で一番他団体との交流が多いのが特徴ですね。
写真左:2025年6月上演の『贋作・罪と罰』(エンクラ)出演者とスタッフの集合写真。高橋さん(後列右端)は主宰補佐や演出補佐、音響など幅広く担当(撮影:土井実さん)
写真右:2024年10月上演の『わたしの魔法使い』(桃源郷行きたい×劇団森〔公認サークル〕)で、大島さんが照明を担当した舞台の写真。机と椅子が置かれたシンプルな舞台を照明と音響でさまざまな場面に変化させたそう(撮影:にしむらさん〔劇団森〕)
皆さんは、早稲田演劇のどんなところに魅力を感じていますか?

「学生演劇のクオリティーを超えているのが早稲田演劇!」と話す高橋さん
高橋:早稲田小劇場どらま館をはじめとした劇場があることが大きいんじゃないでしょうか。他大学だと、教室の一角や野外テントなどで上演することが多いかもしれませんが、早稲田の場合、どらま館の他にも、学生会館地下2階にある演劇練習室や隈裏(※)とか、普段足を運ばない場所へ公演を見に行くことが、演劇の世界に入り込むための補助線になっていると思います。このような学内の公演スポットには、大きな劇場にも負けないくらいの特別感と没入感があると感じています。
※大隈記念講堂の裏にあるアトリエ。ぶたび・劇研・劇団木霊(公認サークル)が演劇の稽古や舞台制作、上演に使っている。

2024年秋に学生会館B203で上演された『桃太郎』(ぶたび)の舞台美術。同年にぶたびを引退した大島さんの先輩たちが制作した(撮影:児玉トウカさん〔劇団森〕)
大島:そういう劇場での演劇が、見ようと思えば、ふらっと見られる環境はすごく恵まれているなって。演劇って観客の視点が自由で、役者や舞台美術など上演中にどこを注目してもいいし、自分の今までの経験と重ねて見ることもできるから、観劇した後の感想も本当に人それぞれ。だから、授業の後に友達と観劇して、帰りにご飯を食べながら感想を話し合うっていうのはとても豊かな時間だと思うんです。

「広く開かれている早稲田演劇をより多くの学生に届ける活動をどらま館でしたい」と話す平松さん
平松:それに今、早稲田演劇の団体数がすごく増えていて、大学のどこかで何かがいつも上演されていると言っても過言ではないくらいで。早稲田演劇にとって良い生態系というか、それぞれが影響を与え合って活動できているんじゃないでしょうか。
高橋:僕もそう思います。以前はそれぞれの団体が交わることはなかったようですが、コロナ・パンデミック以降、劇研の役者が他サークルの公演に出たり、いろいろな演劇サークルの人が集まって演劇ユニットを作ったり、そういう活動が活発になっています。

「観劇のアクセスが良いという早稲田の環境を重宝してもらえたら」と話す大島さん
大島:そうですね。今は他サークルの人に役者やスタッフのオファーをすることは当たり前になりました。だから、作・演出を担当するとき、作りたい舞台のために誰にオファーすればいいのか、自分のサークル内だけでなく早稲田演劇全体で考える人が増えているような印象です。また、他サークルを手伝うことで、早稲田演劇のスタッフワークが向上しているなって。公演回数が増えるので、経験値を上げることができるんですよね。このように早稲田演劇のレベルが高まっている今が、観劇の絶好のタイミングなんじゃないかと思います。
気軽な演劇イベントも。一度参加してみては?
演劇に馴染みのない学生にとって、観劇はなかなか行きにくいかもしれません。公演以外でも演劇に触れる機会はありますか?
平松:どらま館では、毎年4月に新歓イベントを開催しています。「早稲田演劇ツアー」と銘打って、学生会館地下や隈裏など演劇にまつわる場所を案内したり、過去の早稲田演劇作品の上映会をしたり、演劇に興味のある人が一歩踏み出すための後押しをするような企画内容です。
新歓以外にも、演劇サークルの校友(卒業生)や演劇で活躍する方々を講師に招いたワークショップも行っています。照明の技術講習会や、戸山公園での野外劇の舞台制作を体験できるものなど、内容はいろいろです。また、どらま館の部室(学生会館E329)では「どらま館相談室」を開いており、演劇のセリフを読んでみるなど気軽に参加できるイベントをやっているので、演劇サークル以外の人も来てもらえるとうれしいですね。
写真左:どらま館照明技術講習会の様子。基礎編、応用編の二つがあり、舞台照明に関心があれば誰でも参加できる
写真右:2024年9月の「戸山公園野外演劇祭」合同見学会。劇団俳優の方をゲストに招き、戸山公園での上演について一緒に模索した
大島:ぶたびは、2024年の夏期ワークショップでお化け屋敷の舞台セットを作り、公開しました。テーマパークのお化け屋敷みたいに作り込み、実際に来場したお客さんを驚かすというイベントで、多くの方々に好評いただきました。個人としては、先ほどのどらま館主催の照明技術講習会で、初めて照明機材を触る人向けに講師をやりましたね。
高橋:エンクラは、毎年6月中旬くらいまでの新歓期間で、公演以外にもワークショップをやっています。僕も先日、初心者向けの脚本を1本書き上げるという内容のワークショップを担当したのですが、参加者はほぼ定員いっぱいになって。結構楽しんでもらえたんじゃないでしょうか。
写真左:学生会館B203演劇練習室で公開した、ぶたびのお化け屋敷のセット。美術と照明の担当者が協力して制作した
写真右:エンクラ主催の初心者向け脚本ワークショップで講師を担当した高橋さん(撮影:山口亜希子さん〔エンクラ〕)
平松:2024年の夏には、どらま館で「えんげきのえ」という大きな劇場企画を実施しました。参加者が3つのグループに分かれ、同じ脚本で4日間稽古して自分たちなりの演劇を作り上げ、最終日には観客を入れて上演発表会をする企画です。「同じ脚本でも参加者によってこんなに違った演劇になるんだ」という発見があって、観客にも演劇の魅力が伝わったかなと思います。
早稲田演劇は、早大生みんなが楽しめるエンタメ!
最後に、まだ演劇に触れたことのない学生にメッセージをお願いします。
高橋:演劇って地味なイメージがあるかもしれませんが、早稲田演劇は皆さんが思っているより熱くて派手で、生命力を感じられるんです。早大生であれば、そんな早稲田らしいパワーがある舞台に没入できると思います。ぜひ、早稲田らしさを感じに見に来てほしいです。
平松:学生会館内には演劇サークルのさまざまなデザインのチラシがたくさん貼ってあります。チラシのビジュアルを見て少しでも興味を持ったら、きっと芝居の内容にも惹かれるところがあると思うので、見に来て損はないはずです。なので、少しでもチラシに目を向けてもらえると、すごくうれしいですね。
写真左:2025年6月上演の『無事、是を名馬と曰ふ。』(システマ・アンジェリカ×くるめる)のチラシ(※クリックして拡大)
写真右:2025年6月上演の『贋作・罪と罰』(エンクラ)のチラシ(※クリックして拡大)
大島:早稲田演劇を早大生みんなが楽しめる大衆的なエンタメにしたいです。皆さんも、ものは試しにどこかのサークルの公演に足を運んでみたら、きっと何か感情が揺さぶられるような経験ができると思うんです。料金は自分で選択できるフリーカンパ制で、映画よりもコスパが良いので、ぜひ一度来てみてください!
取材・文:末光 京子(1998年理工学部卒)
撮影:橋本 千尋
学内の公演スポット
各サークルの公演は、主に3カ所で開催しています。公演情報については、各サークルのWebサイトやSNS、どらま館Webサイトで確認してください。
【早稲田小劇場どらま館】
住所:〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1-101-3
東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩5分
都電荒川線早稲田駅から徒歩8分
Webサイト:https://www.waseda.jp/culture/dramakan/
【学生会館B202/B203】
住所:〒162-8644 東京都新宿区戸山1-24-1(戸山キャンパス)
東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩8分
東京メトロ副都心線西早稲田駅から徒歩12分
【大隈講堂裏アトリエ(隈裏)】
住所:〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町538-12
東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩7分
都電荒川線早稲田駅から徒歩約6分
演劇系サークルについて
早稲田大学にはさまざまな演劇系の公認サークルがあります。今回取材した平松さん、高橋さん、大島さんの所属サークルは以下のとおり。
【劇団くるめるシアター】
Webサイト:https://kurumeru05.wixsite.com/kurumerutheater
X:@kurumeru_11
【演劇研究会】
Webサイト:https://sodaigekiken.com/
X:@sodaigekiken
Instagram:@sodaigekiken
【演劇俱楽部】
Webサイト:https://enkurasite2020.wixsite.com/enkura
X:@waseda_enkura
【舞台美術研究会】
Webサイト:https://butabi.daa.jp/
X:@butabi_w
Instagram:@waseda_bbk
その他の演劇系サークルはこちら(早稲田大学公認サークルガイド)から。
【次回フォーカス予告】7月14日(月)公開「早稲田で働く人々特集」