(※)この記事は、2023年6月26日に公開した記事を再掲載したものです。
中央図書館と4つのキャンパス図書館(高田早苗記念研究図書館、戸山図書館、理工学図書館、所沢図書館)、7つの学生読書室、その他各所に点在する教員図書室や資料室など、22施設からなる早稲田大学図書館。その総蔵書数は 600万冊、年間総貸出数 38万冊、総閲覧席数 4,700席、年間利用者数 110万人。規模においても内容の深さにおいても早稲田が誇る“知のワンダーランド”は、読書、自習、レポートの文献探し、さらには空きコマ活用にと、多様な使い方ができる懐の深さも魅力です。
今回は、早稲田大学図書館のゲイ・ローリー館長(法学学術院教授)をはじめ、 LA (ラーニング・アシスタント)や図書館職員に、本を読むだけにとどまらない、キャンパスライフが豊かになる“ちょっと穴場な”図書館活用方法を教えてもらいました。
INDEX
▼早稲田大学図書館ゲイ・ローリー館長が提案する、自由で多様な図書館の活用法
誰も知らない⁈ 図書館の穴場的スポットを歩いて「達人」になろう
▼その① 研究論文をサクサク探す達人になる LAを味方に資料を見つけよう
▼その② 空きコマ活用の達人になる レアもの漫画や映画を堪能しよう
▼その③ 穴場スポットの達人になる お気に入りの場所で自習・読書に没頭しよう
早稲田大学図書館ゲイ・ローリー館長が提案する、自由で多様な図書館の活用法
早稲田大学図書館長/ 法学学術院 教授 ゲイ・ローリー
――早稲田大学の図書館は学生にとってどんな存在であってほしいですか。
「話せる図書館」をテーマに2019年に中央図書館をリニューアルしましたが、残念なことにその直後にコロナ・パンデミックが起こりました。それから3年弱、図書館は全面的に会話を制限せざるをえなくなり、「静かな図書館」の時期が続きました。しかし、以前の生活が戻りつつある今、当初われわれが夢見ていたような、勉強するも良し、おしゃべりするも良し、空きコマの時間を過ごすも良し、といった、使い方次第では一日中さまざまなシーンで楽しむことができる、活気ある場所に徐々に変わっていってほしいと願っています。そして、そのように変化しつつあるとも感じています。
――どんなシーンで使うのがおすすめですか。
大学生らしい使い方といえば、レポートや研究の参考文献を探す際に、ぜひ図書館のサービスをもっと利用していただきたいです。図書館にはLAという院生の学生スタッフが働いており、レポートの書き方から文献・論文検索などの相談に乗ってくれます。さらに、自分と同じ専門分野のLAが勤務する日を狙えば、より深い相談もできます。また、レファレンスカウンターの職員も同じように研究のお手伝いをしてくれます。私も日頃、研究のために集めたい資料があるときは助けてもらっている、なくてはならない心強い存在。レポートや卒論作成に行き詰まったら、教員に相談するのはもちろんのことですが、LAを先輩代わりにぜひ相談してみてください。
一方で、ほとんどの書籍が開架式書架に並べられているため、直に手に取りながら、自分の足で本を探せるのも早稲田大学の図書館の素晴らしい点。「この本」と決めて検索するだけでは知ることができない、「足を運ばなければ見つからない本」との出合いがあります。蔵書は広く深く取りそろえているのが自慢で、小説や漫画、文庫なども豊富ですので、書架を迷路のように歩き回りながら、どんどん自分の興味を広げていってください。空きコマにも、この「散策」はおすすめですよ。
――館長はどのように図書館を利用していますか。
研究の資料探しや読書だけでなく、一息つきたいときには中央図書館3階の雑誌コーナー前の一人掛けソファに身をゆだね、広々した空間で最新の雑誌をめくります。リラックスするにも、図書館は最適な場所なんです。また、そこからさらに奥へ進んだ窓際の閲覧席は、常に朝から満席で座れることはほぼなく、憧れの場所(笑)。窓からの景色も素晴らしく、勉強する人、読書する人と、思い思いの使い方をしている点も、実に早稲田大学らしいですね。ぜひ、皆さんもお気に入りの場所を見つけて、心地よい居場所を一つ二つと増やしてみてください。
写真左:中央図書館3階の、会話可能なコモンズエリア・雑誌コーナー前にあるソファー席がローリー館長のお気に入りの場所
写真右:朝から満席の中央図書館3階奥の閲覧席。勉強、読書など一人で思い思いの使い方をしたい学生に人気
誰も知らない!? 図書館の穴場的スポットを歩いて「達人」になろう
ローリー館長のおすすめ活用法を体験すべく、早稲田ウィークリーレポーターがLAや職員のレクチャーを受けながらキャンパス内の図書館を巡ります。図書館の達人を目指して、ライブラリーツアーへいざ出発!
その① 研究論文をサクサク探す達人になる LAを味方に資料を見つけよう
早稲田ウィークリーレポーター 社会科学部 3年 堤 壮太郎(つつみ・そうたろう)
中央図書館 LA 大学院法学研究科 修士課程 2年 岩堀 佳菜(いわほり・かな)
※学生の所属、学年は2023年取材当時のものです。

中央図書館エントランスにて。堤さん(左)、岩堀さん(右)
堤
今回の取材で、図書館LAの存在を初めて知りました。どんなお仕事をしているんですか。
岩堀
主に学部生からの、レポートや卒論の進め方や文献の探し方などの相談に答えられるよう、現役大学院生が月曜から金曜までLAデスクにスタンバイしています。中央図書館、理工学図書館、所沢図書館にLAデスクを開設していて、各キャンパスのニーズに即した院生が相談に対応します。といっても、まだあまりわれわれの存在を知られていないようで、コピー機はどこですか? といった館内案内が多いのが現状です(苦笑)。

中央図書館のLAデスクには、LAの専門分野が記載されたシフト表が置かれている。各学部生の専門的な相談に答えられるよう、さまざまな研究科のLAが勤務している(写真は2023年6月のシフト表)。各図書館のLAの詳しいシフト表はこちら
堤
院生の先輩に気軽に相談できる便利なサービスがあまり知られていないのはもったいないですね。「これから、著作権法のレポートに取り掛かる予定ですが、それに関する判例を知りたいです」というようなざっくりした相談にも乗ってもらえるんですか。
岩堀
はい、研究テーマさえ自分で決めていたら、あとはどんな初歩的なことでも一緒にお調べしますよ。まず早稲田大学の資料検索システムWINEで文献を探し、より専門的な文献が欲しい場合には、その方の研究分野に適したデータベース探しをお手伝いしています。
※WINEの使い方はこちら
堤
授業で使う本が図書館にあるかどうかWINEで検索したことはありますが、恥ずかしながら専門のデータベースを使って検索したことはありませんでした。
岩堀
どういうデータベースがあって、自分の研究にどれが適しているか知らない学生は多く、知っていればより深い情報収集ができるのに…ともどかしく感じています。自宅からも検索できますし、学生の場合、早稲田大学が契約している電子資料であれば、図書館に出向かずとも、そのまま文献を読めることが多いです。
堤
家からでもレポートの文献や論文がサクサク集められるのは、非常に便利ですね。
岩堀
図書館の検索システムは使わないと本当に損なので、私たちLAをどんどん利用してください! 図書館では、自分でうまく検索できるようになりたい学生には、「レポート・卒論作成に役立つ資料の探し方」や「研究・論文作成に役立つ英語論文の探し方」といった検索ワークショップを開催しています。また同じ内容の動画をWaseda Moodleで視聴できますのでぜひお試しを。膨大な図書館の資料を自由自在に使えるようになれば、大学での学びがより深くなりますので、ぜひ有効活用してほしいですね。
◆【Zoom/対面】図書館情報検索ワークショップ (6月、7月)
◆レポート・卒論作成に役立つ資料の探し方Waseda Moodle コンテンツの参照はこちら
◆研究・論文作成に役立つ英語論文の探し方Waseda Moodle コンテンツの参照はこちら
その② 空きコマ活用の達人になる レアもの漫画や映画を堪能しよう
戸山図書館担当課長 長谷川 敦史(はせがわ・あつし)

戸山図書館エントランスにて。図書館職員長谷川さん(左)と
堤
空きコマに自習するする余力はない、でも昼寝するのももったいないし、少し有意義に過ごしたい。そんなわがままな気分のときにも図書館は利用できますか?
長谷川
戸山図書館は文化構想学部や文学部の研究分野の書籍を多く所蔵していて、中央図書館には及びませんが、40万冊以上の資料をそろえています。その一部には、研究資料として漫画の所蔵もあります。といっても、流行りのものを何でも取りそろえているというわけでなく、漫画研究、あるいは風俗や文化史研究の資料として教員からリクエストされた名作漫画が数多くラインナップされており、普段とは一味違った漫画に出合えます。空きコマにこういった漫画に触れてみるのもお勧めです。
堤
漫画なら空きコマに読み終えることができるのでいいですね。ぜひ案内してください!

日本の図書館で広く使われている図書分類法であるNDC区分表を採用している。漫画は726番の表示がある棚に並んでいる
長谷川
漫画は2階と1階文庫コーナー、地下研究書庫にあります。どちらも自由に書架から手に取ることができます。例えば、2階にある『おたからサザエさん』(朝日新聞出版)は長谷川町子美術館に秘蔵されていた40~70年前の未書籍化作品。また、『じゃりんこチエ』(双葉文庫)の全集は、大阪を舞台にした昭和の下町感が満載。踏み込んだ表現もありながら人情味にあふれた作品で、当時の風俗史としても貴重な資料です。
堤
町の本屋であまり見たことのない漫画ですが、それぞれにうんちくがあって興味を引かれますね。
長谷川
地下の書庫には、著名作家の幻のデビュー作などが多く所蔵されています。藤子・F・不二雄と藤子不二雄Ⓐが2人で共作した唯一の書き下ろし漫画『UTOPIA 最後の世界大戦』(小学館『藤子・F・不二雄大全集』所収)、また、貸本漫画家をしていた売れない頃の水木しげるの漫画『墓場鬼太郎』(講談社『水木しげる漫画大全集』所収)などもそろっています。ぜひ、自由に手に取って、伝説の名作を堪能してほしいですね。

地下2階研究書庫にて。『墓場鬼太郎』のグロテスクな描写に恐れおののく堤さん
堤
漫画好きな学生なら通い詰めたくなる、とっておきの場所が戸山キャンパスにあったなんて…目からウロコです。
長谷川
空きコマ活用といえば、中央図書館4階にあるAVルームもおすすめです。一時は待ち時間が出ることもありましたが、今は待ち時間なく利用できることが多いですよ。
堤
待つことなく確実に利用できるのは、たしかにポイントが高いです!(笑)
長谷川
映画では、例えば尾崎士郎原作『早稲田大学』や、2010年に映画化された村上春樹原作『ノルウェイの森』など、早稲田を舞台にした名作にもたくさん出合えます。

中央図書館のAVルームカウンター裏にあるDVDやVHSテープの棚は、さながら一昔前のレンタルビデオ店のよう
堤
この空間は非常に落ち着くし、雑音がないので映画に集中できそうですね。映画一本分の空き時間ができたら、ふらりと立ち寄りたいです。
長谷川
専用の設備で鑑賞するのは充実度が違いますよね。一人用の他、グループで利用できるブースもお勧めです。
写真左:個別の視聴ブース
写真右:グループで視聴できるブースも
堤
大学の図書館で漫画や映画が楽しめるなんて知りませんでした! いつも人気作や話題の最新作を選びがちな僕にとって、昔の名作や先生方のお眼鏡にかなった作品に出合えるのは、自分の興味や教養が広がるいいきっかけになりそうです。
その③ 穴場スポットの達人になる お気に入りの場所で自習・読書に没頭しよう
これまで漠然と空いている席を利用していた人も、自分好みの場所を見つけると図書館がより居心地のいい場所になるはず。図書館職員お勧めの穴場スポットを巡りましょう。
1.中央図書館 1階 コモンズ(早稲田キャンパス)
これぞ穴場なコモンズエリアは、まるでホテルのラウンジ!
図書館職員が一様に「すいているのでお勧めです」と口にする、中央図書館1階コモンズエリア。常に混んでいる2階のコモンズエリアと異なり、こちらは利用者カードの提示と荷物をロッカーへ預けるひと手間があるせいか、利用者が少ないそう。グループで利用できるテーブルの他、一人机も多数。シーンを選ばないので使い勝手抜群!

6月某日の昼下がり。上の階はにぎわっているが、このフロアは大変落ち着いた雰囲気
2.戸山図書館 4階 学習図書フロア(戸山キャンパス)
スカイツリーを望み、天窓から光が優しく注ぐ(よって睡魔もやってくる)カウンター席
図書館職員や、『早稲田ウィークリー』読者モニターからも数々の口コミがあった戸山図書館4階。最上階の特性を生かした、窓をふんだんに取り入れた設計は、まさに戸山の“天空の城”! 「お勧めは左手のカウンター。スカイツリーを独り占めにしながら、読書ができる特等席です。3階の閲覧席では多くの学生が勉強していますが、そのほとんどが4階にこういうスペースがあることに気が付かないようです」(図書館職員長谷川さん)。
(写真左)「景色はいいし、涼しいし、誰もいないし、最高ですね」と言いながら『墓場鬼太郎』の続きを読む堤さん
(写真右)4階は哲学、心理学、宗教関連の書籍が並ぶフロア
3.中央図書館 地下1階 研究書庫 キャレル(閲覧机)(早稲田キャンパス)
ぼっち好きにはたまらない、誰にも邪魔されない至高の一人机
次は、ホテルライクな中央図書館コモンズエリアや、戸山の“天空の城”から一転、緑と赤の照明が光る、独特な雰囲気を放つ中央図書館地下1階研究書庫。その各所に設置された約80席の閲覧席も知る人ぞ知る穴場スポットです。「学生読書室だと同じ学部の友人にばったり会う可能性が高く、ついおしゃべりしたり、そのまま遊びに行ってしまったりする誘惑があるという声を聞きますが(笑)、ここなら誰にも邪魔されず自習や読書に没頭できます」(ローリー館長)
(写真左)「誘惑どころか、窓もない。レポートの締切前やとことん考え事をしたいなど、自分を追い込みたい時に利用したい場所ですね」(堤さん)
(写真右)書籍の波にのまれ迷子になる学生もいるため、緑と赤の蛍光灯をたどれば必ず入口に戻れる親切設計になっているそう
4.所沢図書館 ラーニング・コモンズ内リラックスエリア(所沢キャンパス)
ここは所沢か、北欧か? 野外の木々を眺めながら読書や作業、おしゃべりもできる快適空間
利用目的に合わせて区分けされているラーニング・コモンズの中でも特にお勧めなのが、リラックスエリア。緑に囲まれた開放的な空間に、座面の低いソファーが並び、その名の通り心から安らげる空間です。「まるで北欧インテリアショップのよう! 他キャンパス所属の学生も一度は利用する価値がありますね」(堤さん)
5.中央図書館 地下2階 研究書庫閲覧個室(大学院生用)(早稲田キャンパス)
このまま住んでしまいたい! 院生特権の秘密の快適個室
読者モニターから寄せられた「院生が利用できる閲覧個室を見てみたい!」というリクエストに応え特別公開! 大きな机と椅子、照明器具があるだけ、蔵書を閲覧することに特化したドミトリーのような小さな部屋。机は大きな窓に面していますが、直射日光が入ることなく、間接照明のようなやわらかな光が差し込みます。「院生にこんな特権があったとは! でもここは危険ですね。僕の場合、居心地良すぎて住み着いてしまいそうです」(堤さん)
6.理工学図書館 閲覧室(西早稲田キャンパス)
席のすぐ近くで文献が探せる! 勉強に適した設計の個別ブース
書庫と個別ブースが空間的につながっているため、参考文献を探し、すぐそばの席でレポートやスライドを作ることができる効率的な動線の閲覧室。以前はロッカーに荷物を預ける必要がありましたが、現在はそうした手間もなくなり、よりスムーズに。あちこち動き回りたくない面倒くさがりの学生にもお勧め!

放射状の天井照明と、デスクの球状ライトのコントラストがなんとも印象的。その幾何学的な雰囲気に勉強もはかどるは!?
撮影:布川 航太