早稲田大学にはさまざまなボランティア活動を統括している、平山郁夫記念ボランティアセンター(以下、WAVOC)があります。WAVOCでは、専任教員が専門性を生かして活動を行う「早稲田ボランティアプロジェクト(以下、ワボプロ)」や、ボランティアを学問として捉える授業を用意。さらに、仲間と共にボランティアを行う50団体ほどのサークルも支援しています。
WAVOCが募集しているボランティアは多種多様。中には、WAVOCの学生リーダーが企画しているものもあるんです。今回は学生リーダーの2人に、活動の内容ややりがいなどを聞きました。また、ワボプロの参加者に活動の様子を教えてもらいました。
INDEX
▼ボランティアとは何か? 活動を通して感じたこと
▼ワボプロで学ぶボランティア
ボランティアとは何か? 活動を通して感じたこと
活動の中で気付いて新しいつながり方ができるボランティア
WAVOC学生リーダー
文学部 4年 池田 葵(いけだ・あおい)
政治経済学部 3年 菊池 侑大(きくち・ゆうだい)

早稲田キャンパス 99号館WAVOC入口にて。スタッフジャンパーを着た池田さん(左)と菊池さん(右)
――WAVOCで学生リーダーをしようと思ったきっかけは何ですか?
池田:3年生の夏、スウェーデンに留学しました。そこで、海外ではボランティアへのハードルがかなり低いのに、日本ではボランティアをやっているだけで、「すごいね、意識高いんだね」とすごいことをしている人間かのようにひとくくりにされてしまうと感じて。私自身はこれまで学外で高校生向けのサマースクールの実行委員にボランティアで参加してはいたものの、熱心にボランティアをしてきたタイプではなかったんです。でも逆に、私のような人が学生リーダーをすることで、ボランティアに参加するハードルを下げられるんじゃないかと思いました。

1年生の夏、「何かしてみたいな」という軽い気持ちで参加したWAVOC主催の震災地の復興イベントで、被災地の人々の命を守る活動の話しを聞き感銘を受けたことが、ボランティアに興味を持ったきっかけだそう
菊池:僕はWAVOCのWebサイトで学生スタッフを募集しているのを見つけて応募しました。実は、それまではボランティアに参加したことがなかったんです。でも、ボランティアをしたことのない人がスタッフにいたら、たくさんの人に参加してもらえるようなPR方法を見つけたり、手伝えたりすることがあるんじゃないかなって。ボランティアする人をバックアップするボランティアも良いなと思って興味を持ちました。
――学生リーダーとして、どのようなボランティアを企画したのですか?
池田:戸山キャンパス近くの介護施設で地域の子どもたちを集めて英語を教える子ども英会話教室(2022年11月開催)と、新宿御苑でごみの分別を行う新宿御苑クリーン大作戦(2023年2月開催)という活動を企画しました。
写真左:子ども英会話教室で、動物の名前を当てるジェスチャーゲームを行っているところ
写真右:新宿御苑のバックヤードでごみを分別。どの企画でも企画書を作成し、実施前には企画で使う資料を、また実施後はレポートを作成している
菊池:僕が企画したのは「本のWA!」 (2022年10月開催)という活動で、読まなくなった子ども向けの絵本や本を募集して、集まった本を戸山幼稚園に譲渡しました。
写真左:幼稚園へ譲渡した本
写真右:2022年に20周年を迎えたWAVOCの記念ポスターは菊池さんが作成したそう
――活動を通して、どんなことを感じましたか?
池田:今まで見えていなかったことが見えるようになったのは大きかったと思います。新宿御苑での活動では、園内に設置されているごみ箱のごみの中身をさらに細かく分別しました。本来ならきちんと分別して捨てられているはずですが、分別が間違っていたり、分別されずに一つの袋にまとめて捨てられているごみがあったりして。よかれと思って袋にまとめていても、きちんと分別するためには、結局その袋を解いて分別し直さなきゃいけないなど、改めて気付かされることがありました。一方で、どのボランティアも1日だけのイベントになってしまうことが多く、長期的に見てちゃんと力になれているのかが分からないという難しさもありますね。
菊池:学外の方との交渉は緊張しました。「本のWA!」では、幼稚園の先生方と電話やメールでやり取りしたのですが、ふさわしい言葉遣いがちゃんとできているのかは心配でした。幼稚園に行ったときにも、子どもたちを前にして緊張しちゃって(笑)。でも、すぐに5冊くらい本を抱えて持っていく子がいて、すごく必要とされていたんだと感じられたので、達成感がありました。

初めて参加したボランティアは、学生リーダーを始めてから参加したWAVOC主催の「高尾の森づくり」。周囲への音の配慮のためチェーンソーではなくおので木を切るなど、普段はできない貴重な経験ができ、新たな気付きがあったと話す
――池田さんの言葉にもありましたが、ボランティアが本当に役立っているのかという点で心掛けていることはありますか?
菊池:それでいうと、僕は集めた本を郵送するのではなく、直接持っていくことにこだわりました。本を実際に見てもらって、本当に必要なものだけをお渡ししたかったので。50冊くらい持って行き、そのうちの34冊を譲渡させていただきました。全部送り付けていたら、こちらの思いだけを押し付ける事態が起きかねなかったなと思うんです。当たり前ですが、やっぱり相手のことを考えるということが大事なんだと思います。
池田:ボランティアを企画するときに、こういう内容だと面白そうとか、学生が参加しやすいということが先行してしまいがちなんですけど、私は実際にそこでボランティアが必要なのか、助けを求めている人がいるのかを、もう一度自分の中で考えるようにしています。それと、活動に参加する前は対象となる人の顔が見えづらいと思うので、英会話教室のときは、お子さんの情報をできる限り事前に学生たちに伝えて参加してもらうようにしていました。相手の顔を思い浮かべて、どういうことに困っているのかを事前に確認した上で活動することがとても大事だと思います。

今後、池田さんはパラスポーツについてのイベントを企画し、ボランティアへの入口になるようなことができたらという。菊池さんは地方の芸術祭などで屋外に展示されるアートの清掃や点検を手伝うボランティアができないかと考えているそう。自分が好きなことからボランティアをすると、偽善や押し付けではない活動ができるのでは、と話す
――最後に、2人にとってボランティアとは?
池田:一言でいうなら、“気付き”でしょうか。ボランティア活動を通して、それまで全然見えていなかった社会のことに気付けるし、自分に対しても、活動の中で知らなかった自分の1面や自分のできることが分かるのかなと思うので。
菊池:そこに付け足すなら、気付いた後に“つながる・関わる”みたいなところがあると思っています。何かに気付くと、物事や他者に対して今までと違う見方や働きかけ方ができるようになるなって。池田さんの話を聞いて、その二つのステップがあるのかもしれないなって思ったので、僕は“気付きと新しいつながり方”みたいなことがボランティアなのかなと感じています。
【現在募集中!】
今すぐにでも参加できる、募集中のプロジェクト。絵本の寄付や、コンタクトケースの回収を行っています。詳細は下記のリンクから。
【募集】「本のWA!」自宅で眠っている本、有効活用しませんか?
WAVOCでは、本の寄付を募っています。皆さまに寄付して頂いた本は、早稲田大学近隣の幼稚園などにお届けします。
春学期も実施します! アイシティecoプロジェクト~コンタクトケース回収@早稲田大学
WAVOCでは、使い捨てコンタクトレンズの空ケースの回収を実施します。アイシティecoプロジェクトに参加し、学内各所に回収ボックスを設置しています。
ワボプロで学ぶボランティア
陸前高田プロジェクトに参加して
教育学部 4年 貴志 ありさ(きし・ありさ)
私が小学3年生のとき、東日本大震災がありました。私自身はずっと東京に住んでいて、東北に親戚がいたわけでもなかったのですが、被災地の状況についてずっと関心があったので、陸前高田プロジェクトに参加しました。
2023年2月に初めて現地を訪問して、「陸前高田イタルトコロ大学」主催の「気仙辺辺(あたりほどり)の春を探して」 (※)というイベントを通じて、岩手県陸前高田市の地元住民や移住者の方々にお話を伺いました。
(※)岩手大学・立教大学が共同運営する交流活動。今回は、立教大学と早稲田大学から全4チームが参加した。
“部外者”である私たちは陸前高田という場所に特別な意味を感じてしまいがちですが、震災後に移住してきた人たちは、ただ自分のライフスタイルにマッチするからそこに住んでいるということを知って、自分の中で新鮮な気付きがありました。それに、陸前高田の方たちは1日1日の過ごし方や人との向き合い方をすごく大切にされている印象を受けて、とても温かい場所だと感じました。
写真左:陸前高田市の震災遺構である米沢商会ビルを見学した写真。所有者に当時の様子について伺いました
写真右:陸前高田市の移住者の方にインタビューをしているところ
ワボプロでは、筒井久美子先生(WAVOC講師)に指導していただいています。筒井先生は震災に関するプロジェクトにずっと携わってきた方なので、現地の情報などを詳しく教えていただけますし、私たちと同じ目線に立って一緒に議論してくださるので、安心して活動できました。

イベント最終日、制作したポスターについて発表しました
これまでボランティアというと、現地での活動がメインでハードルが高い印象があったのですが、今はボランティアとして現地に何かを還元する前段階として、「知る」ことが初めの一歩になるんだなと感じています。今後、どんな活動をしていくのかはまだ決まっていませんが、現地での学びを東京にいる他の学生に伝えていく活動はしていきたいと思っています。そういった東京での活動と、現地でのボランティア活動の二つの軸で進めていけたらいいですね。
取材・文:末光 京子(1998年理工学部卒)
撮影:小野 奈那子
平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)
【場所】早稲田キャンパス 99号館 2、3階
【事務所窓口開室時間】平日10:00~16:00 ※土日祝日は閉室
【E-mail】[email protected]
【WAVOC支援サークル一覧】https://www.waseda.jp/inst/wavoc/project/circle/
【次回フォーカス予告】5月8日(月)公開「学内カフェ特集」