2022年に設立20周年を迎えた早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)では、ボランティア機会の提供や関連イベントの開催、社会貢献に関する科目の提供などの他に、ボランティア活動に従事するプロジェクト・サークルの支援にも取り組んでいます。WAVOCが支援するサークルは30以上もあり、ボランティア活動といっても形も内容も多岐にわたります。では実際にはどのような活動をしているのでしょうか? 「災害ボランティア研究会」と「BAM部」に教えてもらいました。
早稲田キャンパス周辺の子どもたちへ多角的な防災教育を
「災害ボランティア研究会」
文化構想学部 1年 谷尾 花音(たにお・かの)
――団体の概要や活動内容を教えてください。
私たちの団体は、「早稲田ボランティアプロジェクト」(通称:ワボプロ)の一つとして2021年に設立されました。活動の内容は、防災教育や災害ボランティアの研究と実践です。WAVOC講師である佐々木俊介先生の指導・サポートの下、研究活動としては防災教育学会での口頭発表、実践活動としては防災すごろくや絵本の読み聞かせなどを、早稲田キャンパス周辺の保育園や小学校などで行っています。
――ご自身が活動に参加したきっかけや動機は何だったのでしょうか。
大学進学を機に、これまでの災害の発生頻度が比較的少ない奈良から首都直下型地震の発生が危惧されている東京に引っ越してきて、自分の防災知識に不安を覚えたことです。入学直前にも関東や東北地方で地震が発生し、災害への不安が高まっていたところに、災害ボランティア研究会による防災勉強会が開催されていて、その勉強会が縁で参加に至りました。
――印象に残っている活動はありますか?
「ぼうさい探検隊」です。「ぼうさい探検隊」とは、一般社団法人日本損害保険協会が提供する、地域の災害リスクや避難施設を知るための防災街歩きの活動です。
私たち災害ボランティア研究会が計画・実施している「ぼうさい探検隊」は、「早大生向け」と「近隣の小学生向け」の2種類があります。「早大生向け」は、自分たち自身がキャンパス周辺の災害リスクや避難施設を知るために、もう一つの「近隣の小学生向け」は、早大生が小学生を引率することで、早大生と小学生が共に楽しく深く地域の防災について知るために行います。私自身、「ぼうさい探検隊」に参加したことで、普段通っているキャンパス周辺に防災を学ぶためのヒントがこんなにも多く存在しているのだと知ることができました。
――活動を通して考えたことを教えてください。
「ぼうさい探検隊」を通じて、身近な防災について知ることや伝えることの大切さについて強く認識しました。早稲田キャンパス周辺には、消火栓や防災倉庫などのような、防災に関する設備や施設が多数ある一方で、ブロック塀や神田川など災害時にはリスクとして注意すべき場所も存在しています。キャンパス周辺という身近で「自分事化」しやすい環境を活用して、防災について学ぶとともに、早大生や近隣に居住する子どもたちにも防災の重要性を伝えていきたいと、あらためて思いました。

「ぼうさい探検隊」で早稲田キャンパス正門近くの消火栓の確認をしている様子
――今後の活動の展望を聞かせてください。
コロナ後を見据えて、防災教育に関する多角的な活動を行っていきたいと考えています。まだ計画段階のものもありますが、とりわけ、次の三つの活動に取り組んでいく予定です。
- 早稲田キャンパス周辺の防災マップの製作
- 「ぼうさい探検隊」の実施
- 防災絵本を用いた読み聞かせ教室の運営
「3. 防災絵本を用いた読み聞かせ教室の運営」は現在計画中の活動ですが、「災害ボランティア研究会に所属している防災士による防災教室」、「市販および自ら製作した防災絵本を用いた読み聞かせ方法の解説」、「保育園での防災絵本を用いた読み聞かせ」から構成する予定です。早稲田キャンパスの近隣に居住するシルバー世代の方々を対象に、防災絵本を用いた絵本の読み聞かせ方法に関する講習会を行いたいと考えています。これは防災に加え、世代間交流や高齢者の生きがい創出も視野に入れた活動です。
これらの活動に主体的に関わりながら、地域のさまざまな方々からのご協力を得て、キャンパス周辺の災害対応力の強化を目指して活動を行っていきたいです。

WAVOC20周年記念の一環で6月11日に開催したセミナーでは、気象予報士の方にハザードマップの重要性や気象災害についてご講演をいただきました

6月11日に開催したセミナーのグラフィックレコード(※)。作成は多くのグラレコを手掛ける木村汐里さん(関西学院大学 4年)です
(※)セミナーや会議、議論などの内容をイラストやキーワードで可視化し、整理していく手法のこと。グラレコとも言う。
災害ボランティア研究会
◆設立年:2021年
◆活動日時:毎週月曜(ミーティング)、その他
◆構成人数:12名
◆主な活動場所:WAVOC、近隣の保育園・小学校、オンラインなど
◆Webサイト:https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2021/03/09/5954/(WAVOC Webサイト内)
◆Twitter:@wavocsaigai
◆Instagram:@wavocsaigai
埼玉県本庄市を拠点に持続可能なサイクルで「放置竹林問題」解決へ
「BAM部」
代表 法学部 2年 後藤 歩実(ごとう・あゆみ)
――団体の概要や活動内容を教えてください。

5月に開かれた「WAVOC20周年記念ボランティアプレゼンコンテスト2022」で1位になりました
BAM部は2020年に設立されました。主に「放置竹林問題」の解決を目指していて、BAM部という名前も竹の英語名「Bamboo」に由来しています。活動拠点は埼玉県本庄市で、「学生が、実際の活動を通して、持続可能なサイクルで地域の社会課題を解決する」という理念の下、伐採した竹の利活用方法を提案しています。
また今年度から、WAVOCと早稲田大学の附属校である本庄高等学院との連携プロジェクトが始まりました。高校生と共に、BAM部が日頃取り組んでいる放置竹林問題の解決につながる、新たな商品の開発を進めています。
――ご自身が活動に参加したきっかけや動機は何だったのでしょうか。
私は元々農業や地方での暮らしに興味があり、BAM部が畑と古民家を借り、地域で本格的かつ継続的な活動にこだわっている点に魅力を感じました。また「持続可能なサイクル」を重視し、自分たちで活動資金を得て次の活動や問題解決につなげようとしている点に大きな可能性を感じて参加しました。

本庄市での竹林伐採の様子
――印象に残っている活動はありますか?

黒色のパンが、食用の竹炭パウダーを生地に練り込んで作ったもの。竹炭入りのパウンドケーキやクッキーも販売しました
今年4月に行った直売所出店です。BAM部は月に1回ほど、拠点である本庄地域のJA直売所に出店していて、商品の企画提案から開発、販売までの全てを自分たちで行っています。4月の出店では竹炭を使ったパンを販売したいというメンバーの提案をもとに、試行錯誤を重ねて竹炭パンを開発しました。当日、直売所を訪れた地域の方々は、「早稲田の学生が地元で活動している」ことに興味を持ってくださり、それをきっかけにたくさんの人たちと交流できました。おかげで初めて挑戦した竹炭パンは見事に完売したのですが、全体の売り上げは目標に届かず…。出店後に参加メンバーで反省会をし、BAM部が目指す「持続可能なサイクル」とは何かを見直すきっかけになった活動だと感じています。
――日頃の活動を通して感じること、考えていることを教えてください。
放置竹林問題は深刻であるものの、認知度が低い社会課題の一つです。直売所やイベントへの出店を続ける中で、最近ではBAM部をラジオ番組などのメディアに取り上げていただくことも増え、認知度が着実に上がっていると感じています。また地域に拠点を置いているため、その中で生まれたつながりも深まっています。私たちの活動は、近隣の農家の方たちや、本庄市、JAなど、さまざまな外部団体の方々のご協力がなければ成立しません。直売所やイベントへの出店といった活動を通して地域の活気を生み出し、地域活性化につなげることで恩返ししていきたいと考えています。
同時に、BAM部自体の規模も拡大しています。BAM部の理念に共感する学生が増えているのが実感できてうれしいです。活動を通して地域での暮らしの魅力を体感し、地域に興味や愛着を持つ若者の輪がさらに広がると、地方創生に貢献できるのかなと思います。
写真左:2021年12月に本庄市で開催された「木工アート+~森への恩返し~」にて。小学生以上を対象に竹工作のワークショップを行いました
写真右:JA直売所などで販売するオリジナル商品。かぼちゃのパウンドケーキには、BAM部の畑で育てたかぼちゃを使用しています!
――今後の活動の展望を聞かせてください。
農業や販売など個々の活動をもっと深めていきたいです。その一環で本庄高等学院との連携プロジェクトを成功させることは、今年度の大きな目標です。活動ではメンバーの自由な意見を最も大切にできるよう、仕組みを整えていきたいです。BAM部は活動内容も規模も拡大していますが、まだまだ発展途上です。今の勢いを止めないよう、代表として全力で貢献したいです。

BAM部が本庄市に所有する畑での農作業の様子。伐採した竹から作った竹チップや竹炭を、土壌改良のために散布することも
BAM部
◆設立年:2020年
◆活動日時:月に1~2回、土日中心
◆構成人数:45名
◆主な活動場所:埼玉県本庄市
◆Webサイト:https://bamboo-waseda.com/
◆Twitter:@bamboo_waseda
◆Instagram:@bamboo_waseda
早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)のボランティア活動支援

早稲田キャンパス 99号館(STEP21)、WAVOC事務所前
WAVOCでは、WAVOCの各教員の専門性を生かした指導の下で活動する「早稲田ボランティアプロジェクト(通称:ワボプロ)」(WAVOC主催)をはじめ、ボランティア活動を行う公認サークルなどの活動支援をしています。「WAVOC支援サークル(※)」になることで、ボラカフェ(新入生との交流イベント)やボランティアコンテストへの出場資格が得られます。またコンテストに出場することで活動支援金、広報支援・施設利用・備品貸与の支援が受けられます。詳細はこちら。
(※)公認サークル以外がWAVOC支援サークルに登録する場合は、学生生活課へ「登録(未公認)サークル」の届け出が必要です。