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教育はどう変わるのか? 田中愛治新総長、学生たちへ告ぐ

新たに第17代早稲田大学総長に就任した田中愛治総長は、1975年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、アメリカ・オハイオ州立大学大学院で政治学の学位(Ph.D.)を取得し、政治経済学術院教授として、長きにわたって学生たちを指導・教育してきました。その田中総長の下、早稲田大学の教育はどのように変わっていくのか。一問一答形式で聞きました。

Q. 現在の早大生を、どのように評価されていますか。

3、40年前よりも今の方が優秀な学生は多いと思っています。単に偏差値が高いという意味ではなく、世の中に貢献しようという覚悟をしっかりと持った学生が多く在籍しているように思います。一昔前に言われたような、“レジャーランド”として大学4年間を楽しく過ごそうというのではなく、しっかりと学んだ何かを身に付けて卒業しようという学生の数が増えています。教員もまた、学生の頑張りに応えようという気持ちが強くなっていると思います。学生気質や教員気質、職員気質の中に、社会に貢献することを奨励するような文化が、早稲田には昔からあるのではないでしょうか。これは早稲田大学の大きな強みですね。この強みを生かして、学問や社会貢献活動などを通じ、何らかの形で世の中に貢献するという決意を持てる、人間的力量を育む教育を、早稲田大学は行っていくべきだと思います。

Q. 一方で、今の学生に感じている物足りない部分はどのようなことでしょうか。

今の学生は中学生・高校生のころから塾や予備校で、非常に効率的な勉強の仕方を学んでいます。すると大学の授業ではどんなことが起きているのか。講義後、昔の学生であればお薦めの本を聞かれたとき「マックス・ウエーバーの本を読んでみなさい」と教えると終わった話が、今の学生は「何という本の何ページから何ページを読めばいいのでしょうか」と聞いて来るんです。関係ないことは避けて、最小限の努力で最大限の効果を上げようとしているのです。

しかし、この聞き方では結局、答えのあることを追いかけているだけです。今日の社会で求められていることは、答えのない問題に直面したとき、そして何が問題か分からない状況で、その解決策を考えていくことです。そのような問題に対しては、受験勉強の方法では太刀打ちできないわけです。私は大学院生に対しては「私を超えろ」と言い続けていますが、答えのある問題を効率よく解くような勉強では、学生は指導教員を超えることはできません。大学に入ってから必要なことは、そのような勉強法から脱皮することです。答えのない問題について考え、エビデンスに基づいて、その解決方法としての仮説を根拠を示して検証するという力を身に付けなかった学生は、卒業後に行き詰まる可能性があると思います。

Q. 田中総長が考えるカリキュラムの体系化とはどのようなことなのでしょうか。

例えば内容が重複しているのに、3人の教員が3科目を担当しているような場合があります。このようなケースでは3人の教員が連携して一つのシラバス・科目を作り、交代で教えることができるようにします。教員が教壇に立つ一人当たりの回数は減るので、空いた時間でさらに研究を進めることができますし、より質の高い授業を準備することができるはずです。科目の内容・配置を体系的にし、最も教育効果が高まる順番で学生が勉強していけば、より優れた学生が育っていきます。

Q. Twitterを駆使し、学生たちと交流する様子が話題となりました。ソーシャルメディアについてはどのようにお考えですか。

ソーシャルメディアは重要なトレンドだと思います。学生にとってソーシャルメディアは日常に欠かせない存在になっていますので、これを無視して教育を語ることはできません。もちろんネガティブな面もありますので、ソーシャルメディアに振り回されて本来集中するべき時間が奪われるようなことがあってはなりません。負の側面の一つは、大量の情報が短時間に受動的に入ってくるので、熟慮せずに情報発信してしまうことです。瞬発的な反応をする思考パターンだけが身に付いてしまうことは問題ですので、大学教育ではじっくりと論理的に考える力を養うことが大事です。

Q. 早稲田大学総長とは、学生にとってどのような存在であるべきだとお考えでしょうか。

アメリカのハーバード大学では「世界で最も優れた教員を獲得すること」と「世界で最も優れた学生を入学させること」についてエネルギーと時間を惜しまないという価値観を、全教職員が共有しているそうです。早稲田大学でも、より良い教員が、より良い研究・教育をし、そしてより良い学生が入ってきて、より良い卒業生を送り出すという価値観を、全教職員・学生が共有すれば、必ず早稲田大学は世界で輝くだろうと思います。教職員と学生が共に「世界で輝くWASEDA」という覚悟を決める。その旗振り役となるのが総長だと思っています。そのためにも普段から、教職員や学生の生の意見を聞くことが必要だと思っています。

Q. 学生からはどのように意見を聞かれますか。

これまでは教員としてゼミで学生の意見を直接聞くことができましたが、今年度から総長は「教授」ではなくなりますので、だんだん難しくなっていくと思います。しかし、既に鎌田薫前総長の下では学生たちがチームを組んで早稲田大学をより良くしていくための提案をするコンペ「Waseda Vision 150 Student Competition」が行われてきました。総長が学生たちのプレゼンテーションを間近で見て審査するコンペで、2013年から始まって既に七つの提案が実際に早稲田大学の政策として取り入れられています。このコンペを続けたほうがよいと思っています。直近の2017年度は36チームの出場でしたので、もっと参加学生を増やしていく必要があると思っています。

提案するためには具体的な方策を考えなければならず、しっかりと機能させるためにエビデンスも求められます。このコンペはプロジェクトベースドラーニング(PBL)と言えますので、エビデンスに基づいて検証していく勉強のトレーニングにもなります。今は大学主催のコンペですが、早稲田祭で学生主催版コンペが生まれて競い合うことになっても面白いかもしれないですね。

Q. 最後に学生へのメッセージをお願いします。

早稲田大学空手部に所属していた学生時代の田中総長。腕前は五段。2018年9月まで同部部長を務めた

早稲田大学にいる間に「自分はこれをやりきった」と思えることを、一つはつかんでもらいたいですね。勉強でもスポーツでもサークル活動でもボランティア活動でもいいのです。もちろん勉強と両立してもらいたいのですが、何かに打ち込むことができるのが学生時代です。その打ち込める環境を整えている早稲田大学で、「これをやりました」と実感できる学生生活を送ってほしいです。そして、答えのない問題に挑戦していく「たくましい知性」を磨き、異なる文化、異なる宗教、異なる価値観、異なる言語に敬意を持って交わり、性別、国籍、宗教や信条、障がいに基づく差別を行わない、多様性を認め合う「しなやかな感性」を育んでもらいたいですね。そのためにも、学生全員が一度は海外に出て中長期にわたって学ぶことが必要だと思います。

早稲田大学第17代総長 田中愛治 世界でかがやくWASEDAを目指して

 

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